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ジャガー初の電気自動車は驚くほど実用的!──新型Iペイスに試乗

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ジャガー初の電気自動車は驚くほど実用的!──新型Iペイスに試乗

「今後EVは100kWh時代に突入する」

ジャガー初のEV、Iペイスに試乗してそんな思いを強くした。

センチュリーに乗る、センチュリーを語る──大谷達也編

100kWhとはバッテリー容量のこと。ちなみに2010年に発売された初代日産リーフのバッテリー容量は24kWhだったので、そのおよそ4倍にあたるバッテリーを積むことになる(最新のリーフは40kwh)。

このくらいバッテリー容量があるとカタログ上の航続距離は400kmを軽々と越え、普通のガソリン車と近い感覚で使えるようになる。私が100kWh時代の到来を予感した最大の理由は、まさにこの点にある。

Iペイスが搭載するバッテリーの容量は90kWh。WLTPといって、これまでヨーロッパで一般的だったNEDCより一段と厳しい計測規格に従っても航続距離は470kmとなる。燃費10km/ℓで燃料タンク48ℓのクルマに匹敵する航続距離だ。

私はポルトガルで開かれたIペイスの国際試乗会に参加して、その実力を存分に味わってきたので、ここで紹介しよう。

試乗を前にして、私はあることを心に決めていた。それは「EVだからといってエコドライブはしない。いつものように、飛ばせる条件が揃ったら思いっきり飛ばす。それでIペイスがどこまで走れるか、見極めてみよう」というものだ。

実際、私は遠慮することなくIペイスのアクセルペダルを踏み込んだ。高速道路では制限速度付近で巡航し、ときには追い越しも仕掛けたほか、ワインディングロードではタイヤのグリップ限界付近で走行してそのステアリング特性を見極めようとした。

途中、写真撮影やオフロード走行、さらにはサーキット走行(さすがにこのときは別個体に乗り換えた)なども行ない、まる1日で193kmを走破したが、このときメーターパネル内のバッテリー残量は34%を示していた。

つまり、Iペイスは思い切り飛ばしてもトータルで306kmを走れる実力を備えているのだ。おそらく、一般的なドライバーが普通に走れば一充電で400kmを優に越える距離をカバーできるだろう。

しかもIペイスの走りは、いわゆるエコカーの常識を越えて実に逞しく、そして上質なものだった。

まず、EVだから当たり前といえば当たり前だけれど、車内はとても静か。おかげで、普通だったらほとんど聞こえないはずのロードノイズ(タイヤが発する騒音)がむしろ耳についてしまったくらい。といっても、そのレベルはごく低く、高速走行でもキャビンは静かに保たれていた。

乗り心地は、低速域で柔らかく、速度を増すにつれてボディのフラットな姿勢を守ってくれる理想に近いもの。これにはオプションで設定されるエアサスペンションの効果が大きかったはずだ。

ハンドリングは、切り始めに過敏なところがない穏やかな味付けながら、その後も高いリニアリティを保つ質の高い設定。前述のとおり、今回はアルガルヴェというチャレンジングなサーキットもルートに織り込まれていたが、決してサーキット走行向きとはいえない柔らかめなサスペンション設定にもかかわらず、限界付近のコーナリングでもロールはよく抑えられていて安心感が強かった。

これは、重さ640kgものバッテリーをフロア下の低い位置に敷き詰めることで重心高を低く抑えた恩恵だろう。また、前後の重量配分が50:50に仕上げられていることも良好なハンドリングを実現するうえで貢献していると思われる。

Iペイスは前後車軸に各1基のモーターを備えることで4WDを実現している。しかも、ジャガーといえばランドローバーと一心同体のブランド。当然のようにそのオフロード性能が気になるところだ。

今回は、ウィンドスクリーンがすべて空で覆われるほど急な上り勾配や水深50cmほどの渡河セクションが用意されたオフロードコースも走行したが、見ためはサマータイヤとほとんど変わらないグッドイヤー・イーグルF1 SUVというタイヤを装着したまま、すべてのコースを難なく走りきってしまった。

正直いって、これほど難易度の高いコースに自分のクルマで足を踏み入れようとする人はまずいないはず。その意味からもIペイスは実用上、十分なオフロード性能を備えているといえる。

前述のとおり、Iペイスは前後に2基のモーターを搭載し、合計で400ps、696Nmを発揮する。同じジャガーのFタイプ V6 3リッター・スーパーチャージドが380psと460Nmだから、それをしのぐ最高出力と最大トルクを生み出す。

そのおかげもあって、0-100km/h加速は4.8秒とまさにスポーツカー並みの速さ。アルガルヴェでのサーキット走行では私自身のドライブで200km/hオーバーに到達した(メーター読み。カタログ上の最高速度は200km/h)。

EVの宿命で超高速域では車速の伸びも鈍るが、それ以下の速度域であればちょっとしたハイパフォーマンスセダンに匹敵する速さを披露してくれるのは間違いない。

EVの多くには回生ブレーキの効き具合を調整できる機能を搭載しているが、Iペイスも例外ではなく、アクセルペダルを離したときに一般的なエンジンブレーキ並みの減速を行なうロー・モードと、それよりも強い減速度を生み出すハイ・モードを用意している。

このうちハイ・モードは、ほとんどの運転モードでブレーキペダルを踏む必要がなくなるくらい大きな減速度が得られるので、慣れてくるととても便利だが、操作の荒いドライバーだとペダルの踏み込み量を一定に保っているつもりでも常に加減速を繰り返す結果となり、一緒に乗っているとやや煩わしいと感じるかもしれない。

加速から減速(もしくはその逆)に転じるところで軽いヒステリシス特性(平たくいえば反応を鈍くすること)を持たせれば、この症状は軽減するような気もする。この点は、できれば改良を期待したいところだ。

Iペイスは100kWの急速充電を用いれば40分でバッテリーを80%まで充電できるほか、家庭用電源(7kW)でも10時間で同じレベルまで充電できるという。

日本の急速充電はまだ50kWが主流なので、こういった利便性を日本でもすぐに享受できるわけではないが、150kW急速充電の実用化が間近に迫っているので、充電環境は確実に改善されていくはず。

また、Iペイスは日本の充電規格であるチャデモに対応する予定なので、これも安心材料といえるだろう。

伝統に根ざした自動車メーカーからIペイスという実用的なモデルが登場することで、EVに対するものの見方もガラリと変わりそうな気がする。イギリスでの価格はおよそ900万円から。日本での発表は年内にも行なわれる見通しだ。

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