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ポルシェの自動運転はここまで進んだ。開発の舞台「ポルシェ・エンジニアリング・ナルド・テクニカルセンター」に潜入

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ポルシェの自動運転はここまで進んだ。開発の舞台「ポルシェ・エンジニアリング・ナルド・テクニカルセンター」に潜入

ポルシェの開発部門を支えるテストトラック

イタリア南部のナルド郊外にあるテストトラック「ナルド・テクニカルセンター(NTC)」は、2012年にポルシェが買収。以来、重要な開発拠点として重宝されてきた。その機能は近年大幅に拡張しており、最新の開発インフラが整えられているだけでなく、自動車テクノロジーに関する有能なエンジニアも数多く在籍している。

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「テスト開始まであと3秒、2秒、1秒」と、無線からの声が聞こえてきた。カウントダウンが終わると、すぐにシルバーのポルシェ カイエンがコースへと向かっていった。

しかし、コクピットに収まる開発部門のテストエンジニア、マリオ・トレドはステアリングに手をかけていない上に、ペダルからも足を離している。その代わりに、ドライビングロボットが指揮を執り、クルマが安全にコース上に留まることを確認していた。

この日の朝、ポルシェ・エンジニアリング・ナルド・テクニカルセンターのドライビング・ダイナミクス・プラットフォームには、カイエンに加えてグレーのパナメーラも登場。このポルシェが運営するテストトラックでは、今まさに自動運転技術のテストが行われている。

施設を改良して自動運転技術開発に対応

今回のような「SAEレベル4(完全自動運転)」の自律走行機能テストは、NTCでは日常的に行われているという。ここでは将来的な本格生産を目指して、様々なテクノロジーが日々テストされている。そして同時にNTC自体の継続的なアップデートも行わなければならない。

「自動運転、コネクティビティ、電気自動車など、自動車業界は新たなトレンドに直面しています。今後5年から10年の間に、自動車業界の革命が迫っています。このナルド・テクニカルセンターも、新たなインフラや新機能を備えて、この変革に適応しなければなりません」と、NTCのマネージングディレクター、アントニオ・グラティスは指摘する。

施設のアップデートが何を意味するのか・・・。それはサーキットセクションで確認することができるだろう。以前は主に商用車用テストに使用されていたトラック内周は2020年に新たな路面表示が施され、全長48kmの新たなテストセクションへと生まれ変わった。現在、一部区間がヨーロッパの片側3車線高速道路、別の区間はアメリカの片側3車線高速道路のようになっている。

「自動運転技術にとって、路面表示はとても重要なのです。これがなければ、SAEレベル4の自律走行機能のテストはできません」と、先進運転支援システムを開発するADASコンピテンスセンター・マネージャーのダビデ・パレルモは説明する。

このテストトラックを舞台に、パレルモは同僚のトレドと、オートバイに乗ったもうひとりのテストライダーと共に、実際の高速道路でよく見られるシチュエーションや動きを再現する。車線変更や中央車線をまたいだ運転などを、安全な状況でシミュレーションしているのである。

相互データ通信を可能にする光ファイバー網

将来的にNTCで行われるテストのなかには、全く人がいない状態で実施できるメニューが出てくるかもしれない。例えば2020年2月には、ドライバーがコントロールしていない状態のポルシェ カイエンが、テストトラックにおいて最高速度130km/hで600km以上も走行した。この耐久テストでは、安全のためにテストドライバーが乗り込んでいたものの、ステアリングホイールとペダルはドライビングロボットによって操作された。

「このような形式のテストの自動化は、より高い効率とより完璧な再現性が約束されています。ただ、人間のドライバーを完全に置き換えることができないのも確かなのです」と、パレルモ。

テストコースの改修に加えて、NTCサーキットのインフラも整備が進められている。将来的には光ファイバーケーブル網によってすべてのデータのやりとりが行われる予定だ。現在、ナルドでは車両と周辺インフラとの相互通信を可能にすべく、ルートに沿ってディスプレイ、信号機・送信機などを配置する計画を持っている。そのため、オーバルコースとビークルダイナミクスプラットフォーム周辺に、約91kmもの光ファイバケーブルを敷設する準備を続行中だ。

また、NTCは独自の移動通信インフラの整備も進めている。これにより、自律走行機能や車両間通信のさらに高度なテストが可能になる。さらに数年後には、新たに「シムシティ」がテストエリアに追加される。ここに移動可能な家屋や標識を備え、先進運転支援システム(ADAS)をテストするために、さまざまな都市を再現できるようになる。

電気自動車に対応した充実の充電設備

プロジェクト管理シニアマネージャーのアントニオ・レウッツィが、全長12.6kmの外周コースを297km/hのスピードで走行しながら、もうひとつのアップグレードを紹介してくれた。

「走行中にまったくバンプを感じないでしょう? 昨年、アスファルトを全面的に張り替えたのです。これにより、高速走行でも振動をまったく感じることなく、信じられないほどスムーズに走行できるようになりました」

「これはテストドライバーにとって非常にありがたいアップグレードです。振動測定などにおいて、より正確な結果を得られるようになりました。 特に電気自動車の場合は非常に高いレベルの静粛性が求められますからね」

電動モビリティに対応した施設への投資も行われている。テストセンターを訪れると、ポルシェ・エンジニアリングが開発した2ヵ所の急速充電ステーションで、テスト用EVを最短時間で充電することができる。これらのハイパワー・チャージング(HPC)ステーションには、920Vと320kWの充電器が4基、950Vと350kWの充電器が2基、合計6基も設置されている。

施設管理担当シニアマネージャーのサルヴァトーレ・バルディは、NTCの将来について「将来的にNTCは未来都市のような施設になるはずです。それもあり、その中心となる電動モビリティに対応するあらゆる種類の充電システムを設置しています」と、説明してくれた。

カスタマーの要求にも応えて設備を拡充

より高度なバッテリーの使用を想定して、NTCは火災試験設備も充実している。火災・消火システムのテストは10年以上前から行われているが、近年リチウムイオン電池の安全性がますますクローズアップされており、その重要度は増している。

例えば、NTCでは最大摂氏700度の炎の中でバッテリーの耐火性が試されている。 また、電気自動車での試験中に危険な状況が発生した場合にも、その安全性を確認することが可能だ。NTC内にある消防署には、テスト専用のコンテナも設置されている。

「このコンテナを使えば、電気自動車やバッテリーを監視下のもとで一種の危険状態にすることができます。ウインチで実験個体をコンテナ内部へと引き込み、コンテナを完全に閉鎖。実験のスタートです」と、レウッツィ。

その後、煙感知器が警報を鳴らすと、スプリンクラーシステムが火災の初期段階で炎を抑えるために作動。同時に浸水システムが作動し、毎分800リットルの水が6バールの圧力でコンテナ内にポンプで送り込まれる。このシステムの設計・建設は、安全装備関連企業のデニオスと協力して行われた。

ポルシェはワークショップの機能拡張や既存スペースの改修にも継続的に取り組んでいる。2022年までに、ユーザーのニーズに柔軟に対応できるモジュール式ワークショップを20ヵ所建設する計画がある。近代化された技術インフラに加えて、ナルドを使用するカスタマーは、テスト車両のためのより広範なエンジニアリングサービスを受けることができるようになるという。

「これまでは主にテストトラックを含めた試験場を貸し出していました。将来的には、カスタマーはNTCに車両を持ち込むだけで、当社のチームがその場ですべてのテストを実施。最終報告書や開発に関する技術的なアドバイスに至るまで、すべてを提供できるようにしたいと考えています。カスタマーはNTCですべての結果を一括して受けることができるので、移動コスト削減と効率化が進むはずです」と、NTCのマネージングディレクター、アントニオ・グラティスは説明した。

また、NTCは様々な教育機関とも協力関係を築いており、イタリアにおける優秀なエンジニアの育成も行なっている。

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みんなのコメント

2件
  • いつも思う事なんだけど、どのメーカーも自動運転をやるのは良いんだけど、積雪・アイスバーン・冠水した道みたいな災害的な道やら酷道なんかも視野に入れて開発してるのかな?
    どの記事見ても、そこまでやってるとこなさそうなんだけど。
  • エンジンと足回りとか機械系が得意のポルシェが、EVや自動運転も手掛けてるのは、驚きというか流れなのでしょう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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