■一風変わったデザインのクルマを振り返る
新型車が登場して、ヒットするかしないかの明暗を分ける重要な要素のひとつが外観のデザインです。デザインに正解は無いともいわれますが、ライバル車よりも多くのユーザーに好まれるデザインを目指すのが第一でしょう。
さらに、ほかのクルマに似ていない個性を主張することも、デザイナーの腕の見せどころです。
しかし、個性を主張するのは「諸刃の剣」といえ、ユーザーに受け入れられないこともあります。
そこで、ユニークなデザインを採用するも人気とならなかったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「パルサー 5ドアセダン」
かつて、日産のエントリーモデルとして、北米市場での販売を視野に入れた「サニー」と、欧州市場に向けた「パルサー」がありました。
パルサーは1978年に誕生したFFコンパクトカーで、その後代を重ねて1990年に4代目が登場。4代目では世界ラリー選手権への参戦を目的に開発された「パルサー GTI-R」が広く知られていますが、スタンダードモデルにはユニークなデザインのモデルが存在しました。
4代目のボディラインナップは、3ドアハッチバックと4ドアセダン、そして面白いフォルムの5ドアセダンです。
5ドアセダンは一般的には5ドアハッチバックと呼びますが、日産はあえて5ドアセダンと呼称しており、実際にテールゲート後部はショートデッキ状でセダンにも見えます。
3ドアハッチバックをベースに4ドア化するのが通例ですが、セダンベースのハッチバックというのが欧州流といえますが、日本では3ドアハッチバックとセダンはヒットするも、5ドアセダンは人気とはなりませんでした。
その後、1995年に5代目が登場すると、5ドアハッチバックはショートワゴンタイプのボディに改められ、5ドアセダンは4代目限りで、今では激レアなモデルです。
●三菱「ディオン」
1990年代はミニバンが台頭した時代です。それまでファミリーカーといえばセダンやハッチバックが主流だったなか、広い室内のミニバンが登場すると、ファミリーカーの勢力は一気にミニバンへと移行しました。
そんな市場の状況から各メーカーとも次々と新型ミニバンをラインナップし、そのなかの1台が2000年にデビューした三菱「ディオン」です。
ディオンは同社のトールワゴン「ミラージュディンゴ」のホイールベースを延長して開発。3列シート7人乗りミニバンです。
ボディはやや背の高いステーションワゴンタイプという定番のフォルムで、使い勝手の面では3列目シートが床下に格納可能でフラットな荷室が得られるだけでなく、停車時には後ろ向きにしてベンチとしても使えたほか、2列目シートは左右独立分割のロングスライド機構とウォークイン機構を採用し、チャイルドシート装着時でも3列目シートへ容易にアクセスできる工夫がされていました。
ところが使い勝手の良さを追求した一方でデザインは不評で、とくにフロントフェイスは良くいえばユニークですが、万人受けするとはいい難い顔です。
そこで三菱は2002年にフロントフェイスを一新するビッグマイナーチェンジを敢行。フロントバンパー、ヘッドライト、ボンネットにいたるまで変更されました。
しかし、販売台数は伸び悩み、2006年に販売を終了。後継車は無く一代限りで消滅してしまいました。
●アウディ「A2」
アウディの現行ラインナップでもっともコンパクトなモデルは「A1」で、その上の車格は「A3」ですが、かつてA1が登場する以前に「A2」が販売されていたのはあまり知られていません。
というのも、A2は日本では正規輸入されていなかったからです。
A2は1999年に誕生。ボディはコンパクトなトールワゴンタイプのFF5ドアハッチバックですが、その形状が非常にユニークで、歴代アウディもモデルのなかでもかなり異質です。
サイドビューを見るといわゆるワンモーションのルーフラインで大きく湾曲し、後端に向かって大きく下がるかたちとなっています。
さらにショートノーズのフロントフェイスは「タレ目」のヘッドライトで、ほかのアウディ車は精悍な印象だったなか、かなりファニーな顔です。
一方で技術的には意欲作で、シャシとボディはオールアルミとされ、車重は900kgを下まわる軽量なボディを実現。
主要な市場は欧州でしたが、やはりデザインが受け入れられず販売は低迷し、2005年に生産を終了し、実質的な後継車はA1です。
なお、現在はA2のアルミ製ボディが災いして修理に特殊なスキルが要求され、工場も限られており、ドイツ本国でも現存数はかなり少なくなっているようです。
※ ※ ※
最後に紹介したA2はわずかな数ですが日本にも並行輸入されおり、中古車情報サイトなどで見たことがある人もいるのではないでしょうか。実際に今も中古車が流通しています。
トヨタ「ヤリス」と同等のサイズでオールアルミ製というかなりマニアックなモデルですが、ガソリンエンジン車はMTしかないというのが日本で販売されなかった理由のひとつでしょう。
また、同じくオールアルミ製の「A8」は市場価値も高いのですが、エントリーカーのA2では修理に多額のお金がかけられないため、事故後に廃棄されるケースが多いという数奇な運命をたどったモデルです。
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みんなのコメント
ベースのディンゴの初期の縦目なら変と思う。