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布より革とはかぎらない!? 車のシート「素材」で変わる長短と意外な事実

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布より革とはかぎらない!? 車のシート「素材」で変わる長短と意外な事実

 同じ形でも大違い!? 近年は布と革以外も普及。車のシート、「素材」による長所と短所は?

 現在クルマのシートに使われる表皮は布のファブリック、革、人工皮革のエクセーヌ&アルカンターラが3強である。

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 バブル期と重なった平成初期の日本車では6代目ローレルやアコードインスパイア&ビガーのように、シート表皮を前述した3つから選べるモデルもあった。

 本稿では、同じ形状でも大きく異なる各シート表皮ごとの特徴や長所と短所を考察。シート表皮には意外なトリビアも多い。

文:永田恵一/写真:TOYOTA、SUBARU、MAZDA、NISSAN

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■布といっても種類は多彩! 各シート表皮の長所&短所

日産GT-R(2012年)シート。車種によってはホールド性をアップするために部分的に素材を変えるなんてこともある

 クルマのシート表皮でもっとも使われることが多いのが布のファブリックだ。

 ファブリックの表皮デザインは、2代目までのVWゴルフや1990年代初めまでのベンツなどでは「(シートの座り心地とはまったく関係なく)よく言えば質実剛健、悪く言えば事務的、ダサい」というものもあったが、1990年代中盤以降そういったデザインは見なくなった。

 ファブリックの表皮は、全体的に見るとデザインのバリエーションの豊富さやコストの低さという長所を持ち、短所としては洗濯ができない布だけに手入れがしにくいという点が挙げられる。

 また、ファブリックは一口のファブリックといってもジャージ、トリコット、モケットに分かれ、一般的に言われるそれぞれの特徴、長所&短所を挙げていくと

●ジャージ(ファブリック)

トヨタ アイシスのジャージ素材シート。ジャージ素材は汚れがつきにくく、小さい子供を乗せるミニバンなどに向いている

 経糸と横糸を交互に合わせる平織で作られた繊維素材で、サラッとした手触りが特徴。ファブリックの中では汚れが付きにくい点が長所で、大きな短所はない。

●トリコット(ファブリック)

スバル XVのトリコット素材シート。トリコットは滑らかで高級感があるが滑らかさゆえの滑りやすさが欠点か

 織り目が細かく、滑らかな手触りが特徴となる繊維素材。
長所は滑らかな手触りと通気性の良さ、短所は手触りが滑らかなためクルマのシート表皮として使うと滑りやすく運転姿勢が落ち着かないことがある点。

●モケット(ファブリック)

トヨタ センチュリーのモケットシート。高級感があるが生産に手間がかかるモケットは高級車にふさわしい素材だ

 ループ状の糸で織り出したパイルの柔らかい手触りと高いグリップを持つ素材で、ファブリックのなかでは高級感と耐久性を持つ点が長所。

 マークIIに代表される1980年代までの高級車に分類される日本車では、マルーンなどと呼ばれる現在マツダ3などが使うバーガンディのシートカラーをもっと明るくしたものがあったのも懐かしい。

 短所としては生産に手間が掛かる素材のため、ファブリックの中ではコストが高いことが挙げられる。

●本革シート

トヨタ カムリの本革製シート。高級感といった面では本革は布より一歩秀でているが、高温多湿の日本では夏場の蒸れがネックか

 その名の通り、牛の革を使ったシート表皮。

 長所はソファなどと同様の高級感と耐久性の高さ、過ごしやすい季節であれば座った際の気持ちよさが浮かぶ。耐久性の高さもあり、欧米の黎明期のクルマではクルマが売れる台数が少なかったこともあり、革シートのクルマの方が多かったくらいだ。

 いっぽう短所は、使い方によってはひび割れなどが起きることがあるのでクリームなどでの手入れの手間をしたい点、滑りやすいことが多い点、コストの高さ、冬場の座り始めの冷たさと夏場は蒸れるといったあたりだ。

 冬場の座り始めの冷たさへの対応として革シートでは温まりが早いシートヒーターがかなり普及し、夏場の蒸れ対策もシートベンチレーションなどと呼ばれる送風機能を持つクルマも増えているが、これらの装備が付くとコストはさらに上がる。

 また、ひと口に革シートといってもそのクオリティは車格などによってピンキリなのも事実なので、「革シートだからいい」と限らないのも難しいポイントだ。

●エクセーヌ&アルカンターラ

マツダ ロードスター(3代目)のシート。舌を噛みそうなアルカンターラという名称はスエード調人工皮革の商品名だ

 衣類や靴に使われるスエードは手触りや見た目の風合いはいいが、汚れに弱いなど、使用環境が厳しいクルマには使いにくい素材である。

 日本の東レはスエードの弱点をなくした人工皮革を1970年代から商品化しており、日本ではエクセーヌ、米国ではウルトラウエード(現在日米はウルトラスエードの名前)、欧州ではアルカンターラのブランド名で展開。

 1980年代中盤からクルマにも使われるようになり、欧州ではイタリアのランチア、日本車では冒頭に書いた平成初期の6代目ローレルやアコードインスパイア&ビガーが採用。ここ数年はシートだけでなくダッシュボードの一部などに使われることも増えている。

 長所はスエードに通じるデザイン性の高さと手触りのよさ、コストがファブリックと革の中間に抑えられる点、短所は静電気が起きやすくパチッと来ることがあるくらいだろうか。

■布より革とはかぎらない!? シートにまつわる誤解とトリビア

●革シートだからといって高級とは限らない?

モケットも革も高級感という面では甲乙付け難い。センチュリーのような高級車にはぴったりな素材だ

 自動車黎明期には「革シートよりもモケットのようなファブリックシートの方が高級」と言われている時期があった。

 これは馬車の名残で、馬車の操縦席は屋根もなく雨に濡れることもあるので丈夫さを理由に革が使われ、パッセンジャーが乗るキャビンはフカフカとしたファブリックを使うことが多かったため「革は実用品、ファブリックは高級品」とイメージがあったからである。

 まあ現在はそんなイメージもないので、好きな方を選ぶのがいい。

 なお「モケットか革」と迷うクルマの代表としてトヨタセンチュリーがある。センチュリーのシートの座り心地はどちらも快適という大前提で、「パンとした張りのあるモケット」と「フンワリした革」と非常に甲乙つけがたく、やはり好きな方を選ぶのが吉だ。

 筆者は先代センチュリーのモケットシート仕様に乗っていたが、18年落ち、走行14万5000kmという個体でどういう使われ方をしていたのかも不明だった。

 それでもモケットシートは「リアシートは張り替えてあるのかと思った」という人がいるくらい劣化のない良好なコンディションで、素晴らしい耐久性を備えていることを確認した。

●ビニールシートは安物?

合成皮革シートは汚れを気にせず使え、エクストレイルのような本格SUVには最適だ

 昭和の時代は乗用車でもビニールシートのクルマが珍しくなかったが、ビニールシートは下級グレードに使われることが多かったせいなのか「安物」というイメージが強いようで、現在ビニールシートを使うクルマは軽トラックくらいである。

 しかし、ビニールシートは「汚れてもタオルで拭けばいい」という手入れのしやすさが大きなメリットだ。

 さらに、平成初期までのベンツでは高品質なビニールレザーのシートもオプション設定されており、ベンツのビニールレザーのシートは革シートと区別がつかないことも多かったくらいクオリティが高かったという。

 こういった話を聞くと「ビニールシート=安物」とは言い切れず、現在乗用車でビニールシートに近いのは日産エクストレイルの合成皮革シートくらいだが、SUVブームも考慮すると「手入れが簡単で汚れを気にせず使えるいいビニールシート」を設定するクルマがあってもいいように思う。

●シート表皮でサポート性を向上したGT-R

GT-Rには体が接触する部分の表皮を専用ハイグリップファブリックに変え、表皮素材でサポート性を向上したシートがあった

 日産 GT-Rの生みの親である水野和敏さんが手掛けていた頃のGT-Rの2012年&2013年モデルには、サーキット走行を視野に入れリアシートを外すなどしたトラックパックというオプションが設定されていた。

 トラックパックには、シート形状は標準のまま、体が接触する部分のシート表皮を専用ハイグリップファブリックとすることで、シート形状ではなくシート表皮でサポート性を向上した革とのコンビシートも含まれていた。

 これは水野さんが手掛けたレーシングカーに盛り込んだアイデアを使ったものだそうで、「シート表皮でクルマは大きく変わる、シート表皮にはこんな使い方もある」ということがよく分かる好例だ。

*   *   *

 シート表皮はいろいろあるが、選択肢のある新車を買う際には見た目やイメージも大事だが、やはり自分の好みや使い方に合ったものを吟味して選ぶことが重要だ。

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