レトロな電動ミニバン 英国価格は約930万円~
フォルクスワーゲンは、新型EV「ID.Buzz(IDバズ)」の英国価格を発表した。右ハンドル仕様で、3つのグレードが用意されている。
【画像】かわいらしいレトロな電動バン【フォルクスワーゲンID.Buzzをマルチバンやライバルと写真で比較】 全90枚
ID.Buzzは、初代マイクロバスをEVとして復活させたもので、2017年のデトロイト・モーターショーで公開されてから5年を経て市販化にこぎつけた。
エントリーグレードとなる「ライフ」は、LEDヘッドライト、デジタルコックピット、10インチのタッチスクリーン、音声コントロール機能、スマートフォンのワイヤレス充電、3つのUSB-C充電ポートを標準装備。価格は5万7115ポンド(約930万円)からとされている。
「スタイル」グレードは、LEDマトリックスヘッドライト、アダプティブ・アンビエントライトなどを追加して6万1915ポンド(約1000万円)から。
初期限定モデルの「1st Edition」は、安全装備一式、21インチのアルミホイール、メモリー機能付きコンフォートシート、フォルクスワーゲン最大となる12インチのタッチスクリーン・インフォテインメント・システムを搭載。価格は6万2995ポンド(約1030万円)から。
1950年のマイクロバスを彷彿とさせるツートーンカラーはオプションとして用意されている。
ID.Buzzには乗用車仕様と商用車仕様が用意されているが、今回英国で受注を開始したのは乗用車で、商用車の「ID.Cargo」は来月から受注開始予定だ。
箱型のかわいらしい外観 2024年にはキャンピングカー仕様も
英国では当初、シングルモーター/後輪駆動のモデルのみが販売される。他のIDモデルと同じリアマウントの同期モーターを採用し、最高出力204ps、最大トルク31.5kg-mを発生する。2023年にはよりパワフルなデュアルモーター/四輪駆動のモデルが、2024年にはキャンパー仕様のID.Buzzカリフォルニアがラインナップに加わる予定だ。
乗用車仕様のID.Buzzは、内燃機関搭載のマルチバンと同様のボディスタイルとなっている。5人乗りスタンダードホイールベースモデルに加え、2023年には7人乗りのロングホイールベースモデルも導入する予定。いずれも、フロントドアは従来のヒンジ式、リアは左右スライドドア(オプションで電動式)、テールゲートは上開き式となる。
商用車仕様のID.Cargoは、サイドに1枚または2枚のスライドドア、リアに上開き式のシングルテールゲートまたは観音開きの窓なしドアのいずれかを備える。
フォルクスワーゲンの汎用性の高いEV用プラットフォーム「MEB(Modularen Elektrik Baukasten)」をベースにしたID.Buzzは、初期のコンセプトと同様に箱型のプロファイルを持ち、全体的に角張ったデザインになっている。
コンセプトとの違いとしては、フロントガラスがやや後方にセットされ、衝突安全性能と空力効率が向上している。また、LEDヘッドライトやフルワイドLEDテールライトなどのディテールも見直され、よりテクニカルな外観となった。ホイールは19インチと20インチを装着する。
スタンダードホイールベースのモデルは、全長4712mm、全幅1980mm、全高1938mm。既存のマルチバンよりも全体的に小さくなっている。ホイールベースは2988mmで、ID.3、ID.4、ID.5、中国市場向けのID.6などMEBベースのモデルとしては最長となる。ただし、マルチバンのホイールベース(3000mm)にはわずかに及ばない。
ロングホイールベースモデルのサイズは未確認だが、関係者によれば、ホイールベースが250mm長くなり、最大3列のシートを収容できるようになるとのことである。
前面投影面積が大きいにもかかわらず、空気抵抗係数を示すCd値は乗用車で0.28、商用車で0.29と、バンの基準からするとかなり低い。
シンプルながらユニークな室内レイアウト 収納も充実
インテリアでは、マルチバンと同様の人間工学に基づいたドライビングポジションを、独自のスタイルで実現している。フロントシートはID.4より261mm高くセットされ、全方位の視認性を高めた。また、上級グレードの「プロ」にはアームレストを装備し、キャプテンチェアのような仕様となっている。
ハイマウントでミニマルなダッシュボードには、5.3インチのデジタルメーターディスプレイと10.0インチインフォテインメント・タッチスクリーン(オプションで12.0インチ)を搭載。他のIDモデルでは、メーターディスプレイの高い位置にロッカー式コントローラーが取り付けられているが、ID.Buzzではステアリングコラムに取り付けられたレバーで操作する。このレバーでは、D(ドライブ)やB(バッテリー)など走行モードも変更可能だ。
室内をより広く見せるために、2トーンカラーを含むさまざまなカラーリングを用意。アンビエントライトもオプションで追加できる。
収納スペースを重視し、ダッシュボード下部に2つの大型ドリンクホルダーが現れるコンパートメントや、フロントシートとドアトリムの間に「バズ・ボックス」と呼ばれる栓抜きとアイススクレーパーを備えたセンターコンソールを装備している。
フォルクスワーゲンはまた、最大8つのUSBポートと、オプションで携帯電話のワイヤレス充電器を設定する予定だ。
他のIDモデルと同様に、内蔵SIMカードによるOTA(無線)ソフトウェアアップデート機能を搭載し、ディーラーなどに立ち寄ることなく各種機能のアップデートができるようになっている。最上級グレードでは、V2X通信(他の車両やインフラなどとの接続)、ローカルハザードワーニング、自動車線変更機能を備えた「トラベルアシスト」など、30 種類以上の運転支援システムを搭載している。
リアシートは60:40分割で折りたためるが、取り外してラゲッジ容量を拡張することはできない。スタンダードホイールベースモデルのラゲッジ容量は1121Lで、リアシートを倒すと2205Lに拡大できる。荷室フロアは完全なフラットではないが、オプションでベッドフロアが用意されている。
商用車仕様のID.Cargoの荷室は、3900Lもの容量を誇る。最大積載長は2200mm、高さは1250mm、幅は1700mmとなっており、ユーロパレットを2枚並べることができる。キャビンと荷室はパーティション(オプションで窓付き)で仕切られる。また、固定用レールと最大6個のラッシングポイントを備え、荷物の安全性を確保する。
サイドに23個の窓を持つマイクロバス・サンバの再現は見送られたが、パノラミックガラスルーフがオプションで用意されている。
航続距離は400km以上 さらなる大型バッテリーも導入予定
初期モデルには、77kWhのバッテリーが標準装備されている。このバッテリーはフロア構造内に組み込まれており、フォルクスワーゲンは「背の高いバンとしては比較的低重心」と説明している。
後輪を駆動するのはリアアクスルアセンブリに搭載された同期電動モーターで、204psと31.5kg-mを発生する。出力はメルセデス・ベンツEQVと同じだが、トルクは5kg-m少ない。
フォルクスワーゲンは、まだ公式の性能数値を発表していない。参考までに、同様のパワートレインを持つID.4プロ(車重2109kg)の0-100km/h加速タイムは8.5秒と謳われている。最高速度は145km/h。
充電は家庭用電源で11kW、交流式で22kW、直流式で170kWまで対応。いわゆるプラグ&チャージ機能により、クレジットカード情報を充電器と通信することができる。また、双方向充電にも対応しており、ID.Buzzから家電製品に電力を供給したり、家庭用バッテリーの充電を行ったりすることが可能だ。
航続距離はWLTPサイクルで約415kmを達成するという。フォルクスワーゲンはAUTOCARに対し、52kWhの小型バッテリーも導入する計画であることを明らかにした。また、2023年に発売されるロングホイールベースモデルでは、大型の111kWhバッテリーを設定するという。
初期モデルのパワートレインは1種類のみだが、今後は最高出力170psと最大トルク31.5kg-mのシングルモーター/後輪駆動モデルも追加される。また、最高出力300ps、最大トルク46.8kg-mを発揮するデュアルモーター/四輪駆動の高性能モデル「ID.Buzz GTX」も登場する見込みだ。
サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアにマルチリンクを採用。DCC(ダイナミック・シャシー・コントロール)システムが搭載され、アダプティブ・ダンピング機能と最大3種類の走行モード(エコ、コンフォート、スポーツ)に対応している。
フロントに電気モーターを搭載しないことで、旋回直径は11mとマルチバンに比べて1m以上小さくなっている。
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