■なぜアルヴェルは8倍もの差が付いたのか?
背の高いボディに3列のシートを装着するミニバンは、1990年代の中盤から車種を充実させ、人気のカテゴリになりました。
輸入車メーカーのスタッフが日本を訪れると「なぜ日本にはここまでミニバンが多いのか」と不思議がるそうです。
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それでも、最近のミニバンの売れ方は、以前と違っています。もっとも顕著なのは、全高を1700mm以下に抑えたワゴン風のミニバンが廃止されたことでしょう。
かつてトヨタでは「ウィッシュ」や「アイシス」、日産は「ラフェスタ/ラフェスタハイウェイスター」、マツダは「プレマシー」、ホンダは「ストリーム」、スバルは「エクシーガ」というように、背の低いミニバンを用意していました。これらの車種は、2010年代に入ると次々と販売を終えています。
その背景にあるのは、ミニバンを選ぶ人達の意識変化です。
2000年代にはセダンやハッチバックからミニバンに初めて乗り替えるユーザーが多く、日産「セレナ」のような全高が1800mm以上の車種は敬遠される傾向もありました。そこで全高を1700mm以下に設定したワゴン風の車種も相応に売れたのです。
ところが2010年代の中盤になると、ミニバンを初めて買うユーザーは次第に減り、目新しさも薄れました。
購入するのは多人数乗車や荷物の積載といった目的のある人達に限られ、ワゴン風のミニバンは機能が中途半端と受け取られて売れ行きを落とします。
その結果、背の低いミニバンは廃止され、現在売られているのは、ほぼすべてがスライドドアを備えた背の高い車種です。
そしていまでは、背の高いミニバン同士でも販売格差が広がりました。とくに同じメーカーが用意するミニバンの間で、売れ行きに差が付いているのですが、それはなぜなのでしょうか。
トヨタの場合、高級ミニバンの「アルファード」は、2020年の9月と10月に1万台以上が登録されました。ところが姉妹車の「ヴェルファイア」は1270台前後です。
以前はヴェルファイアが多く売れましたが、2017年に現行モデルのマイナーチェンジでアルファードがフロントマスクを派手に変更して、順位を逆転させました。
さらに2020年5月以降は、トヨタの全店が全車を扱うようになり、従来はアルファード&ヴェルファイアを販売していなかったトヨタ店とトヨタカローラ店でも、アルファードが売れ始めました。
そればかりか長年にわたりヴェルファイアを扱ってきたネッツトヨタ店でも、アルファードへの乗り替えが始まり、姉妹車の販売格差が8倍まで広がったのです。
フロントマスクの違いが売れ行きに大差を付けるのですから、クルマは嗜好品的な性格が強い商品だといえます。自動車ビジネスの危うさ、難しさを感じます。
トヨタでは、ミドルサイズのミニバンでも販売格差が広がりました。
2020年10月の登録台数は、「ヴォクシー」が6258台、「ノア」が4696台、「エスクァイア」が1643台となり、ヴォクシーとエスクァイアの間には、約4倍の開きがあります。
2018年と2019年の9月もヴォクシーが好調に売れましたが、販売格差は約2倍でした。全店で全車を売る体制に移行した結果、4倍に広がっています。
■日産やホンダでもミニバンに販売格差が!?
全店が全車を扱うと、売れる車種は販売台数をさらに伸ばし、不人気車はユーザーを奪われて落ち込みます。
日産やホンダは、10年以上も前に全店が全車を扱う体制に移行したので、アルファードとヴェルファイアのような姉妹車はすでに存在していませんが、やはり販売格差が大きく広がっています。
日産の場合、ミドルサイズのセレナはミニバンの主力車種として堅調に売れていますが、高級ミニバンの「エルグランド」の販売は大幅に低下しました。
エルグランドは2020年10月に比較的規模の大きなマイナーチェンジを受けたので、今後は売れ行きを伸ばす可能性もありますが、現時点ではセレナとの間に22倍の販売格差があります。
セレナは標準ボディが5ナンバーサイズのミニバンでは、3列目シートがもっとも快適です。シートアレンジも多彩で、3列目を左右に跳ね上げると、自転車などを積める広い荷室が広がるなど、ミニバンの価値を追求しました。
対するエルグランドは、3列目に座ると膝が持ち上がった窮屈な姿勢になります。さらに、3列目の格納はシートを前側に倒して畳むタイプとなり、荷室が広がっても床面がシートの厚みで高くなり、フラットな状態にできないことから自転車などは積みにくいです。
エルグランドは価格が高い割に、セレナに比べて実用性が乏しく、売れ行きでも差を付けられました。
そして近年の日産は売れ筋車種が限られ、国内の販売力がセレナ、「ノート」、軽自動車に集中しています。日産の全店がセレナの販売に力を入れた結果、エルグランドとの格差が拡大した事情もあるのです。
同様のことがホンダのミニバンにも当てはまります。
2020年10月の登録台数は、「フリード」が7849台、「ステップワゴン」が3133台です。かつてのステップワゴンはミニバンの人気車でしたが、いまはフリードとの間に2倍以上の販売格差があります。
2020年11月6日にマイナーチェンジした「オデッセイ」は、7月から9月の台数は500台から900台と、フリードの10%程度しか売れていません。
この背景にはホンダのブランドイメージもあるでしょう。昨今のホンダ車の売れ行きを見ると、軽自動車の「N-BOX」が国内で販売されたホンダ車全体の30%に達しており、ほかの軽自動車も含めると、その比率は50%を超えます。
そのためにホンダのブランドイメージは「小さなクルマのメーカー」になり、N-BOXと「N-WGN」「フィット」、フリードを合計すると、国内で売られるホンダ車の70%に達します。
フリードのデザイン性や実用性が高く、商品力で好調に売れていることも事実ですが、軽自動車とコンパクトな車種を中心としたホンダのイメージも大きく影響しているといえます。
※ ※ ※
ミニバンはいまでも売れ筋のカテゴリで、競争も激しいですが、競う相手は他メーカーのライバル車だけではありません。
むしろ自社製品同士の競争、いい換えれば、どの車種の販売に力を入れるかで勝敗が左右されるというわけです。
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