■スタンツァーニなど、スーパーカーレジェンドが携わった奇跡の1台
2021年8月、2年ぶりに開催されたモントレー・カーウィークでは、RMサザビーズ北米本社が3日間にわたって開催した巨大オークション「Monteley」も注目を集めた。
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そこで今回VAGUEが注目したのは、1950年代末をもって途絶えた名門、ブガッティの再興を目指したイタリア人実業家、ロマーノ・アルティオーリ氏の命によって開発された「EB110SS」である。この伝説的なスーパーカーのオークションレビューをお届けしよう。
●ライバルはマクラーレン「F1」
故パオロ・スタンツァーニを筆頭とする当時のレジェンド的エンジニアたちが、その持てる技術を結集したのが、EB110である。
カーボンモノコックで構成される車体に、4基のIHI(石川島播磨重工業)製ターボチャージャーを装着した3.5リッターV12エンジンとフルタイム4WDシステムを組み合わせ、前衛派ブガッティの名に違わず「20世紀の自動車テクノロジーの最終到達点」の称号に相応しい1台に仕立てられていた。
1991年、パリ・デファンスとヴェルサイユにて発表され、1992年後半頃から正式デリバリーが開始したEB110は、標準版に相当する「GT」では560ps、1992年に追加発売された高性能・軽量版「SS(1993年までは“Super Sports”、それ以降は“Sport Stradale”に改称)」では610psものパワーを発揮し、それぞれ342km/hと351km/hの最高速をマーク。同時代のマクラーレン「F1」やジャガー「XJ220」とともに世界最速スーパーカーの座を競った。
また車両生産のみならず、「Ettore Bugatti」ブランドでアパレルや食器、バッグ類なども製作。すべてのライフスタイルにおいても、往年のブガッティ的な総合芸術に挑もうとしたものの、1995年のブガッティ社経営破綻に伴ってEB110の生産も終了してしまう。
しかし、カーボンモノコックに4基のターボ、4WD駆動方式などは後の「ヴェイロン」や「シロン」にも踏襲され、現代ブガッティの定石として受け継がれることになった。
生産終了までにカンポ・ガリアーノ本社工場から送り出されたEB110は139台(ほかに諸説あり)とされ、そのうちの約30台のみが新車時から「SS」として製作されたといわれている。
■「ヴェイロン」の2倍の価格になった「EB110」
今回の「Monteley」オークションに出品されたEB110SSは、正規のSSとして製作されたうちの1台。「グリジオ・キアーロ(ライトグレー)」のボディに、EB110SSでは珍しい「ネロ・インキオス(ブラック)」のインテリアの組み合わせで、1994年4月29日に工場試験を完了したのち、フランスのコレクターに納車されたという。
その後スイスの愛好家の所有を経て、現在のオーナーによって米国に空輸されるのだが、その時点での走行距離はわずか9500kmだったという記録が残っている。
●1994 ブガッティ「EB110 SS」
アメリカ輸出に先立ち、このEB110SSは伊カンポ・ガリアーノの「Bエンジニアリング」社にてテクニカルチェックを受けている。この会社は、ニコラ・マテラッツィ氏などアルティオーリ時代のブガッティ・アウトモービリ社スタッフによって設立されたもので、EB110をベースとするスーパーカー「エドニス」を自社開発するかたわら、EB110のメンテナンスサービスやパーツ供給をおこなっている。
スイスにあった時代にも、ジュネーヴのブガッティ正規ディーラーによって3万5000スイスフラン(約3万8000ドル)以上の費用を投下したサービス作業を受けていたのに加えて、アメリカでもコネチカット州グリニッジの「ミラー・モーターカー」社にて、ブレーキの消耗品を交換したほか、ピレリP-ZEROロッソタイヤへの換装にデファレンシャルの調整など約2万7000ドルをかけて、さらなるサービス作業を実施。この時にも、Bエンジニアリングから供給されるパーツと専門知識が使用されたとのことである。
アメリカで走行した分を合わせてもマイレージは1万km未満。また、いわゆる「25年ルール」が適用される車齢を迎えたことから、使用状況や走行距離の制限なしにアメリカの公道で楽しむ手続きもおこなわれており、合衆国各地で開催されるクラシックカー/スーパーカーイベントにも参加してきた。
とくに2019年の「ザ・クエイル・モータスポーツギャザリング」および「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にて、EB110SSを意識してデザインされた最新の限定車「チェントディエチ」が初お披露目された際に、かたわらに展示されていた個体そのものである。
この魅力的なEB110SSに、RMサザビーズ北米本社は275万-300万ドルのエスティメートを設定。8月14日、もう1台のヴェイロンの33ロットあとにおこなわれた競売では275万5000ドルで落札された。これは日本円換算で約3億600万円、つまり同じオークションにおけるヴェイロンの2倍近い価格で落札されたことになる。
異次元のブガッティ、ヴェイロンがデビューした今世紀初頭から2010年代中盤まで、EB110は一時的ながら忘れられた存在となっていた。国際マーケットでの相場価格も新車のヴェイロンや、同時代のライバルであったマクラーレンF1が億単位で流通しているのを横目に見ながら、せいぜい6000万-7000万円くらいの正札がつけられていたのだ。
しかし、EB110へのオマージュを体現した限定車「チェントディエチ」が発表されたあたりから、そのオリジンたるEB110の評価も急上昇したようだ。
EB110が現役だった時代、極東の小さな支社の末端社員とはいえ、ブガッティ・グループの一員として「世界最高のスーパーカーを創造する」という壮大な夢に加わるべく全精力を傾けた経歴を持つ筆者としては、ようやく正当な評価を受けられたような気がして、非常にうれしく思えてしまったのである。
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みんなのコメント
なんだっけ?
ベルサイユのばら?
エンジニアリングはカウンタックを手掛けたパオロ・スタンツァーニ。これぞカウンタックの進化形だね!