日本メーカー生まれなのに海外でしか販売されなかった限定車たち。その存在は7つの大罪よりも罪深い(?)。そんなヤツらの魅力に迫りまくる!
※本稿は2022年1月のものです
文/永田恵一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年2月10日号
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■トヨタ
●GRスープラ A91 CFエディション(2021年北米・600台限定)
カーボンを多用したデバイスはエアロダイナミクスにもこだわり、空力特性を大きく改善
2019年に3代目モデルとして復活したスープラは日本仕様の3L、直6ターボを搭載するRZにマットストームグレーメタリック、ホライズンブルーというボディカラーを台数限定で設定。しかし、メインマーケットのアメリカ仕様では現在600台限定となるA91 CFエディションを販売中。
A91 CFエディションのCFはカーボンファイバーの略で、エクステリアにはカーボン製のフロントスポイラー、大型カナード、サイドスカート、スープラの大きな特徴となるダッグテールをより際立てたダックビルスポイラーを装着し、ダウンフォースを高めることによりスタビリティを向上。ホイールもマットブラック塗装となる。
インテリアもカーボンパネルなどでグレードアップされ、NASAが行うハイパフォーマンスドライビングイベントへの無料参加という特典も付く。日本仕様にも少量でいいので、同じ仕様が欲しい!
■スバル
●WRX S209(2019年北米・450台限定)
STIのブランド浸透のために北米専用としたが、アッという間に完売
STIのコンプリートカー、特にエンジン本体にも手が入れられているSシリーズは即完売になる人気車だが、2019年に絶版となったWRX STIをベースとしたS209はSシリーズとしては初となるアメリカ専売モデルだった。
S209はアメリカ向けということもあり、エンジンは日本向けのWRX STIベースのSシリーズとは異なり、エンジン本体、タービンなどの周辺パーツともに専用チューニングされた2.5lターボを搭載したほか、タイヤも265幅の19インチを装着。
それに伴いボディ全幅もオーバーフェンダーで拡幅された。なお、サスペンションやボディ補強はSシリーズの文法どおりのチューニングが施されている。
筆者はクローズドコースでS209に乗った経験があるが、トルクの太い2.5Lターボを積む点は2Lターボとは違った面白さがあり、日本で販売されなかったことが非常に悔やまれる。
●インプレッサWRX STI コスワースCS400(2010年イギリス・75台限定)
日本にも若干数が並行輸入されたようだが、今後入手するのは困難
5ドアハッチバックでスタートし、後に伝統の4ドアセダンも加わったインプレッサWRXSTIの3代目モデルのイギリス仕様には、エンジン開発とチューニングの名門であるコスワースとのコラボレーションのCS400が存在。
CS400はイギリス仕様がベースのため、2.5Lターボを搭載。ヘッド、ピストン、コンロッドなどエンジン本体をはじめ、タービンや排気系、コンピュータといった周辺パーツにも大幅に手が加えられ、最高出力は300psから400psに向上。
結果、0~100km/h加速は基準車の5.2秒から3.7秒に短縮され、おそらく市販状態では歴代最速のWRX STIとなった。
さらにCS400はブレーキやサスペンションなどの強化も抜かりなく、価格は670万円と内容を考えれば激安だったので、幸運なオーナーには一生大事にしてほしい。
日本にも極少数マニアが並行輸入したモデルがあるようだが、中古市場に出てくることはまずないシロモノだ。
■日産
●ジュークR(2012年欧州・5台限定)
パワーアップに合わせて太いタイヤを履くためにフェンダーは超ワイド化。見た目は迫力満点!!
日本では絶版となったが、奇抜なデザインで好評を博したジュークは、スペシャルティなコンパクトSUVということもあり、1.6Lターボのようなスポーツモデルも似合う。
その初代ジュークに現行GT-Rの3.8L、V6ツインターボエンジン、デファレンシャルと一体化されたトランスミッションをリアに置く独立型トランスアクスル4WDというパワートレーンを移植した破天荒なモデルがジュークRである。
ジュークRは車体の強化はもちろん、オーバーフェンダーが付き、車内もリアシートこそあるものの、ロールケージに加えフロントシートはフルバケット+フルハーネスとなるなど、レーシングカーのようだった。
ジュークRは初代がベースということもあり現行GT-Rほどは速くなく、GT-Rのような高い完成度もなかったようだが、夢のある愛すべき存在なのは事実だった。
●300ZXターボ Tバールーフ 50thアニバーサリー(1983年北米・5000台限定)
Zが人気の北米だけあって限定台数5000台というのが凄い。日本ではなかなかそこまでは売り切れない
フェアレディZは、もともと「乗用車ベースとなる、いろいろな意味で手軽かつ実用的なスポーツカー」というコンセプトが特にアメリカで絶大に支持され、日本車では珍しい「世界に影響を与えた一台」だ。
日産の創立50周年記念車を3代目300ZXターボTバールーフのアメリカ仕様に設定。50thアニバーサリーは2シーターの3Lターボをベースに、エクステリアではオーバーフェンダーなど、インテリアには50周年オーナメント入りシートなどを装着した特別なモデルとして心に刻まれている。
●240RS(1983年海外限定・200台+α限定)
日本では正規販売されていないが、ラリー関係者にごく少数右ハンドル仕様が販売された。台数は不明
3代目シルビアをベースにした240RSは、1980年代中盤までのWRCのグループB規定で開発されたホモロゲーション取得モデル。
FRだった240RSのFJ24エンジンは当時のスカイラインやシルビアとはほとんど共通部分がない2.4L NAで、240psを絞り出した。
また、240RSはキャブレター仕様で、日本の排ガス規制を想定していなかった点も日本で正式に販売されなかった理由のひとつで、グループB規定が短命だったことも240RSには不運だった。
■三菱
●ランサーエボリューションX FQ-440 MR(2014年イギリス・40台限定)
史上最強のランエボXは440ps!! 素性のいいエボXだからなせる業
インプレッサ時代を含むWRX STIとランエボは、海外にはこの手のモデルがほとんどないだけに、ヨーロッパでも人気車だった。という背景もあり、ランエボのイギリス仕様には3世代目のVIIIと最後4世代目のXをベースに400馬力にパワーアップしたFQ-400MRが設定されたこともあった。
そのFQ-400MRを発展させ、ランエボXの最終最強進化版的存在としたのがFQ-440MRだ。
三菱自動車のイギリス進出40周年記念車でもあったFQ-440はHKSのタービン、マフラーなどの吸排気系の変更、専用ECUへの変更といった、チューニング業界でいうタービン交換で武装。
結果、スペックは日本仕様の300ps/43.0kgmから、同じ2L、直4ターボのままで440ps/57.0kgmにパワーアップされた。もちろん、ボディ、足回りなど車体の強化も抜かりなく、800万円してもいいから日本でもぜひ欲しいモデルだった。
■スズキ
●スイフトスポーツカタナ(2019年オランダ・30台限定)
カタナの復活タイミングでコラボ。エンジンなどには手を入れていないが、カラーリングのセンス抜群
1981年登場の大型サイズを中心としたスズキのオートバイであるカタナは日本刀をモチーフにしたデザインなどで人気となった名車で、2019年に復活している。
カタナ復活とスイフトスポーツとのコラボによりオランダで販売されたのがスイフトスポーツカタナで、バイクのカタナに通じるシルバーとブラックのボディカラーをそれぞれ15台限定で設定し、ボディにカタナを思い出させる漢字の「刀」の文字を含んだラッピングなどが施された。
機能面ではローダウンや専用マフラーの装着に加え、インテリアもグレードアップ。
■マツダ
●MX-5 アイコン スペシャルエディション(2016年イギリス・600台限定)
パールホワイトとグレーメタリックのボディカラーにソウルレッドのアクセントがオシャレ
ロードスターは例えばイギリスではソフトトップの2L、RFの1.5Lなど、日本にはない基本仕様がある。そんなイギリス限定車のひとつがアイコンスペシャルエディションだ。
3代目でも設定されたこの限定車は、現行型4代目モデルではガンメタ塗装のホイール、パールホワイトとグレーのボディカラーにソウルレッドのフロント&リアスポイラー、ドアミラー、サイドシルのデカールなどを持つドレスアップされたモデルだ。
機能的には基準車と変わらないが、日本とのドレスアップの志向の違いを感じる。
* * *
特にスポーツモデルに海外専売の限定車が多いのは、日本より北米、欧州がメインマーケットになっていて売れているから。この点はわかるが、日本人を喜ばせるアイデア、企画も、もっともっと出し商品化してほしいと切に願う。
【番外コラム01】グッジョブ!! 日本限定発売の輸入スポーツカー
アルピーヌA110ビトンリミテ(2021年・24台限定)
日本専売モデルはかなりあるなか4台をピックアップ。最新はA110のツートーンモデル。J50はフェラーリ日本正規販売50周年を記念したモデルだ。どれも海外のクルマ好きが羨ましがっていると思うとちょっと優越感。もっと出して!!
【番外コラム02】限定じゃないけど……北米専売レクサスIS 500Fスポーツ
レクサスIS 500Fスポーツ
ISの北米仕様には5L、V8を搭載したIS500が設定される。車名がIS500だけに初代のIS Fほどのスポーツ性はないようだが、今やV8搭載は難しいだけに貴重な存在で、そのわりに安いのも羨ましい。ただ2022年秋に日本でも販売開始予定。
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みんなのコメント
どうせ手が出ないもん。
普通のジュークが250万の時代に4000万か5000万したよね。
あれはアラブの富豪がおもちゃにしてくれればいい車。
発想は面白かったけどね。
メーカーは慈善事業でやっているわけじゃない。売れない地域では出さない。それだけの話しだろ。