この記事をまとめると
■例年アメリカ各地でオートショーが開催される
今年もCESで注目車が続々公開! なぜ今自動車メーカーは「モーターショー」より「家電見本市」に力を入れるのか?
■それぞれのオートショーの特徴や現状について解説
■開催地によって展示車両の傾向も異なる
デトロイトショーに出展するメーカーは減った
本稿執筆時点では、アメリカ・イリノイ州シカゴにおいて、「シカゴオートショー」が開催されている。アメリカでは10月上旬開催の「オレンジカウンティ(南カリフォルニア・グレーター・ロサンゼルス地域)オートショー」を皮切りに、全米各州で年間を通じてオートショーが開催されているのだが、シカゴオートショーはそのなかでももっとも集客するオートショーとされている。
アメリカで開催されるオートショーといえば、ミシガン州デトロイトで開催される北米国際オートショー(通称デトロイトショー)が有名。デトロイトとその周辺には、GM(ゼネラルモーターズ)やフォードのワールド・ヘッド・クォーター(本社)があり、いまはステランティスグループ傘下となったものの、クライスラーブランドの生産工場もあり、アメリカ自動車産業の中心として栄え、かつては「ビッグ3」といわれたアメリカン3を中心に、世界の有名完成車メーカーが集まり華やかなショーが行われた(新年すぐの開催だったので、世界の自動車業界による賀詞交歓会のような性格もあった)。しかし、ビッグ3からアメリカン3と呼ばれるようになるほど衰退していくにつれ、デトロイトショーへの出展をとりやめるメーカーが増え、直近の2022年では開催を厳寒の1月から陽気の良い9月に変更したものの、ブースを構えた完成車ブランドはアメリカン3以外はトヨタとスバルのみという『お寒い』ショーになってしまった。
事情通は「そもそもデトロイト市とその周辺では居住人口が少なく、集客数は伸び悩んでいました。それでもアメリカメーカーに力があるころには、お付き合いで多くの海外ブランドがショーに参加していたのです」と語る。
一方でシカゴオートショーがどうかというと、まずシカゴ市は全米屈指の大都市であり、その周辺地域も含めれば人口もかなりの数となり集客が十分見込めるのである。そのシカゴオートショーが2月に開催されるのに、1月にデトロイトショーが開催されるのだから、開催時期を見ても集客はなかなか見込めないだろう。
またデトロイトはアメリカにある時差区分ではニューヨークなど東海岸の都市と同じ『東部時間』地域となるのに対し、シカゴは『中部時間』地域となり、デトロイトショーとはまた一味違うというか、展示されるクルマの趣向も多少異なってくるのである。アメリカでも東西両沿岸部を中心にSUVは高い人気を誇っているのだが、そのなかでシカゴの街を歩くとセダンがやたら目につく。つまりシカゴのある中西部では、東西両沿岸部に比べるとまだまだセダンニーズというものがあるように見える。
そして、郊外では農業に従事する人も多いので、ピックアップトラックのニーズが断然高まってくるのである。また、展示車個々を見てもたとえばキャデラックの最新クロスオーバーSUVでも、東西両沿岸部ではあまり見かけない、ドアの内張りの一部など内装色がマルーン(赤系統)になっていたりする。30年ほど前ならばキャデラックやビュイックなどラグジュアリーブランドではマルーン一色の内装色も珍しくなかったが、いまは東西両沿岸部ではなかなかお目にかかれない。
つまり、仮にシカゴ地区の人がデトロイトショーへ出かけても、置いてある展示車の趣向性がいまひとつ合わないのである。
シカゴオートショーにはワーク仕様のモデルが多数
また、デトロイトショーに比べシカゴオートショーは会場でワールドデビューするモデルは少なく、市販車メインの展示でトレードショー色を強めて開催を続けてきた(いまはデトロイトショーが衰退しているのでシカゴオートショーのほうがワールドデビューモデルは多いぐらいにはなっているが……)。前述したようにピックアップトラックのニーズも高いので、展示車も多く、しかもパーソナルユース仕様だけでなく、高所作業車などいわゆる「ワーク仕様」のモデルの展示も多く、バンやパトカーなども展示されており、見ごたえも十分になっている。
シカゴショーが終わったあとすぐに、3月下旬から4月上旬あたりからニューヨークのマンハッタン島で「ニューヨーク国際オートショー」が開催される。こちらも人口の多いニューヨーク地区で開催されるので集客もかなり多いが、ニューヨークという土地柄、投資関係の人へのアピールの場所と捉えて出展するメーカーも多いようだ。ショー会場のほか、さまざまなイベント会場で各メーカーが個別に新車披露パーティなどをショー開催のタイミングで行っている。
西海岸では「ロサンゼルスオートショー」が開催される。近年ではカリフォルニアが環境問題に積極的に取り組み、アメリカ国内でも桁違いにBEV(バッテリー電気自動車)が走っている土地柄なので、BEVをメインとしたZEV(ゼロエミッション車)関連の展示が目立っている。地元ロサンゼルスはまさに自転車代わりにクルマがないと生活できない地域。そのためクルマが当たり前すぎて、地元の人のオートショーへの眼差しは意外なほど冷めているのだが、ZEVに熱心という特徴が定着してきたので、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスの各オートショーは今後も世界から注目され、いまの存在感を維持していくのではないかとされている。
ヨーロッパでは自動車は兵器以上に社会にとって悪いもののように見られていることもあり(内燃エンジン搭載車)、オートショーの衰退が止まらない。アメリカでもデトロイトショーの衰退は目を覆うばかりだが、それは局地的というかデトロイトショー固有の問題のほうが大きく作用しているともいえるだろう。自動車が生活に密着している国らしく欧州のような『オワコン』へ加速していくようなことはなく、当分話題をふりまいていきそうである。
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みんなのコメント
どのモーターショーでもガン無視されたのが印象的だった
少なくとも一般人よりはクルマに興味あるジャーナリストが、全く食指が動かなかった駄車認定