手応えは上々「フィエスタR2最高」と波に乗る
トヨタのヤリス(日本名/ヴィッツ)が活躍するWRC(世界ラリー選手権)の第9戦ラリー・ドイツに、自動車評論家の国沢光宏さんがフォード・MスポーツのフィエスタR2でスポット参戦中。今回は2日目をリポートする。
【WCT TV】国沢光宏の気になるクルマvol.1 フォレスター前編
日本でもここ数年で再びイベントが復活する可能性が高いとみられる世界ラリー選手権。そのドイツ戦に国沢さんがWRCのジュニアWRCと同じ車両規定であるR2車両でRC4クラスにスポット参戦している。
8月17日(金)、ラリー・ドイツ競技2日目は計6本のSS(スペシャル・ステージ)で争われ、合計距離は101.42km、リエゾン(移動区間)も含めた1日の総走行距離は449.52kmだった。とくに、朝イチと午後イチのステージであるSS2/5「シュタイン・ウント・ヴァイン」、SS3/6「ミッテルモーゼル」はラリー・ドイツの名物のひとつ、一面の葡萄畑が広がるステージだ。
しかし天候によっては非常に滑りやすく危険なものとなる。午後の走行でステージは雨が降った。国沢さんによると「ステージに残っているのにやっと」なほどで、「ウエット路面でも、どの路面が滑り、滑らないのかがのってみないとわからない」そうだ。雄大で緑豊かな土地に思わずうっとりしてしまうが、WRC最高峰クラスのドライバーにとっても非常に難関でテクニカルなステージとなるという。
朝はまずSS2の観戦スポットへ。取り急ぎ第1出走車の走行に間に合うよう競技者たちの本拠地であるサービスパークから現地に向かったが、すでに町全体が”満員状態”に。というのも小さく道の細い田舎道に駐車場などないに等しく、観客たちはみんな路肩に車を止めて現地にむかうのだ。ちなみに家や車の出入り口は一切塞がれていなく、家と家の間に数台車がきっちり路駐されていた。マナーがいいのか悪いのやら……
なんとかクルマを置くスペースを探し出し、今度は2kmほど登山した。崖の上に上がったあと、30度ほどの傾斜で踏みならされていない土の道をひたすら歩く。あまりにも不安定な場所なのにもかかわらず、ステージ沿いに大勢の人が立ち並び、崖下にあるヘアピンゾーンの観戦をしていた。
国沢さんの走行もそこで初めて見ることができた。ほかのライバルたちが手こずるなか、華麗なターンを決めて颯爽と走り去っていった。国沢さん、お見事です!
急いでサービスパークに戻り、午前の走行を終えたドライバーたちを待つ。サービスパークは最高峰クラスのベースでさえ、ガラガラな状態。サービスパーク内での催しも軽食が取れるブースがあるくらいで、ざっと一周回ってみたがトークショーなどがある様子もなかった。静けさすらあり、各サービスで休憩中のメカニックたちが談笑していた。
しばらくすると、轟音とともにWRカーたちが正午のサービスを受けに帰還。国沢さんのマシンも無事に戻ってきた。午前の3本は慣れるための走行として割り切っていたという。ステージ中に4つの分かれ道がある箇所もあるので、とくにペースノートが重要になってくる。
サービスに入る前にステージでのアタックによって汚れたマシンを洗車してくれるサービスを全車が受ける。国沢さんのフォード・フィエスタR2もケルヒャーの高圧洗浄機によってピカピカに!
マシンがサービスパークに戻ると同時に、一気に人も増えていった。ここでは約30分間のサービス時間が設けられており、マシンの不具合などがあればこの時間帯で直す。チームにとっても非常に忙しい時間だ。そのサービスシーンを見ようと各ブースは人だかりができていた。
サービスパークを出て、午後の走行を見るためにクルマを走らせていると、なんとアウトバーンを走行するMスポーツのセバスチャン・オジェが! 国沢さんによるとラリー・ドイツでは競技が滞りなく行なえるように警察が全面協力しているという。渋滞箇所などは路肩にラリーカーたちを誘導して、時間に間に合うよう計らってくれるというのだ。
午後の観戦場所は下界に奇麗な街並みとモーゼル川を見下ろすことができるSS6。まさに葡萄畑の真ん中だ。葡萄の青々しい緑がなだらかな山中にどこまでも続いていた。
SS2でもそうだったが、どうやら朝一で各ステージにある観戦スポットで場所取りをし、そのままステージに居座っている観戦者もいる模様。彼らの必需品は観戦用の折りたたみ椅子とトレッキングシューズ、傘、そして観戦スポットに必ずある簡易的な売店のビールと炭酸飲料だ。
インフォメーションカーやポルシェ・ケイマンGT4がステージを走行したあと、WRCマシンたちが葡萄畑にエンジン音を轟かせて登場。急な曲がりの登り坂をいとも簡単にクリアしていった。
最高峰クラスの圧倒的な走りは別として、そこまでレベルの高くないマシンの走行を半日見ていてつまらなくないのだろうかとふと思ったが、彼らはそういったマシンをみながら、手振り身振りでマシンの走らせ方やラインどりについて話し合ったり、ヤジを飛ばしたり、ブローオフ音やバックタービンの音を真似して笑ったりして楽しんでいる様子だった。
SS6ではオーバースピードでコースアウトしてしまったマシンも。これには観戦者も大盛り上がりだ。
国沢さんは午後の走りに手応えを感じたようだ。乗り方にも慣れてきたこともあり、マシンをおりるやいなや「フィエスタR2最高だね!」と笑顔。国沢さんはRC4クラスとして参戦する11台中7番手という成績の中、競技2日目を終えた。マシンは壊れにくく、むしろ走っている時の気持ちの良さが感じられたそうだ。
WRC最高峰クラスの順位は競技2日目終了時点で、トヨタのオット・タナクが2番手のオジェに約1分差をつけてトップを走行中。WRC界隈ではトヨタのエアロダイナミクスが高評価を受けているそうだ。また前回タナクが優勝したグラベルラリーのラリー・フィンランドで、トヨタはアップデートしたエンジンを投入している。今回のターマックで実力を示すことができれば、トヨタにとっても追い風になることだろう。
翌日の競技3日目は葡萄畑と並ぶドイツ名物のひとつ、パンツァープラッテが登場。バウムホールダー軍事演習場内を走行するラリー・ドイツの名物ステージだ。多くの観客が集まるとのことなので、次回はその様子やサービスパークでの風景についてお伝えする。
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