ホットハッチという言葉で真っ先に浮かぶのがスズキのスイフトスポーツ。軽快なターボエンジン、優れたハンドリングとコストパフォーマンスなどライバルから抜きんでた存在である。
そんなスイフトスポーツとほぼ同価格帯のライバルが日産マーチNISMOだ。そこでこの2台の魅力を分析してもらった。
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文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】国産ホットハッチ対決!! スズキ スイフトスポーツと日産 マーチNISMOの魅力に迫る
■コンパクトスポーツの代表スイフトスポーツ
スズキ スイフトスポーツ。その名のとおりスイフトをベースに開発されたコンパクトスポーツだ
コンパクトカーをベースに開発されたスポーツモデルは、クルマ好きのユーザーから常に高い支持を得ている。全長を4m以下に抑えたボディは、街中から峠道まで運転しやすく、自分の手足のように操れる。ボディは5ドアハッチバックだから、実用性も相応に確保され、3~4名でも快適に乗車できる。
価格は割安で、エアロパーツを装着したりエンジンや足まわりに独自のチューニングを施しながら、180~200万円前後に収まる。無理をしないで購入できるスポーツモデルというカジュアルな感覚も心地よい。
このようなコンパクトスポーツの代表がスイフトスポーツだ。文字通りコンパクトカーのスイフトをベースに開発され、エンジンは直列4気筒1.4Lターボを搭載する。
サスペンションにはモンロー製のフロントストラットやリヤショックアブソーバーを使い、操舵感や走行安定性も向上させた。エアロパーツや17インチアルミホイールも標準装着している。
これらのパーツを備えて、スイフトスポーツの価格は201万7400円(6速MT)だ。ノーマルタイプの1.2Lエンジンを搭載するスポーティグレードのスイフトRS(5速MT)は178万2000円だから、約23万円の上乗せで、エンジン、トランスミッション、足まわりなどが強化されて内外装の装備も充実する。
性能や装備と価格のバランスを考えると、スイフトスポーツには買い得な印象があって人気を高めた。2021年1~5月には、1か月平均で約1000台が登録されている。この台数はスイフト全体の約43%だから、スイフトスポーツは最多販売グレードでもあるわけだ。
■スイフトスポーツのライバル車マーチNISMO
日産 マーチNISMO。オーテックジャパンが手掛けたマーチのチューニングモデルだ
一方、スイフトスポーツのライバル車としては、マーチNISMOが挙げられる。オーテックジャパンが手掛けたマーチのチューニングモデルと考えれば良い。
マーチNISMO・Sでは、専用にセッティングされた直列4気筒1.5Lエンジンと5速MTが搭載され、ブレーキやサスペンションにもチューニングを施した。
ボディの下まわりが補強され、ボディ剛性も高めている。エアロパーツ、16インチアルミホイール、NISMO専用スポーツシートなども備わり、車両全体に手を加えた。
マーチNISMO・Sの価格は187万6600円で、直列3気筒1.2Lノーマルエンジンを搭載するマーチGとの価格差は約20万円だ。機能や装備の違いを考えると、マーチNISMO・Sの価格も、スイフトスポーツに劣らず買い得といえるだろう。
それなのにマーチNISMO・Sの売れ行きは低調だ。2021年1~5月の1か月平均登録台数は、マーチ全体でも850台だから、スイフトスポーツよりも少ない。
マーチNISMO・Sの売れ行きを販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「今の日産では、コンパクトな車種の売れ筋は、ノートと軽自動車のデイズ、ルークスになる。マーチの売れ行きは下がった。マーチNISMOはさらに少ない。納期も2021年6月下旬に契約をいただいて、9月下旬から10月上旬になる。生産台数が限られるから納期も長めだ」。
■ベース車の人気がスポーツモデルの売れ行きを左右
マーチNISMOの売れ行きが伸び悩む背景には、ベース車であるマーチ自体の人気低迷が影響している
以上のように、マーチNISMOの売れ行きが伸び悩む背景には、マーチという車種自体の人気低迷が影響している。割安にエアロパーツを装着したりチューニングを施しても、車種の人気が乏しいと、売れ行きを伸ばせない。
そして人気と同様のことが、走行性能にも当てはまる。コンパクトカーとして走りの素性が優れていれば、高性能なエンジンを搭載したりサスペンションのチューニングを施すと、さらに優れた運転感覚を味わえる。
逆にベース車の造り込みに不満が伴うと、そこにいくらチューニングを施しても、走りの良さにはあまり期待が持てない。マーチNISMOのようなチューニングされた車種の商品力も、ベース車によって大きく左右されるのだ。
マーチの場合は、ベース車の走りがいま一歩と感じさせる。街中では路上の細かなデコボコを伝えやすく、大きめの段差を通過した時の粗さも気になる。ベース車でも操舵に対する反応を妙に機敏に仕上げたから、カーブに進入する時などは、ボディが唐突に傾きやすい。車両全体の動きが滑らかさに欠ける。
このマーチの欠点は、例えばレンタカーを借りて、街中を走る時でもスグに分かる。「マーチは細かく揺すられて、全体の動きがバラバラな感じ」といった感想を聞くことがある。
マーチNISMOは、前述の通りボディを補強して、サスペンションもそれに合わせてチューニングされている。前述の唐突な挙動変化、ボディの大きな傾き方、粗い乗り心地などは相応に改善された。それでも足まわりについては、少し無理に締め上げた印象が残っている。
またボディスタイルは、ユーザーの好みによって変わるから一概にいえないが、マーチの丸みを持たせた外観は可愛らしい印象だ。エアロパーツを装着した時の視覚的なバランスは、現行マーチNISMOよりも、先代マーチ12SRや15SR-Aの方がカッコ良かったと思う。
■スイフトスポーツに対抗するNISMOの本命は……
スイフトスポーツの内装。その質感はマーチのそれを上回る
その点でスイフトスポーツは、水平基調のボディでリヤピラー(柱)の太さも強調され、マーチに比べて後方視界は悪いが外観の見栄えは良い。内装の質感もマーチを上まわる。
こうなるとスイフトスポーツは、マーチNISMO・Sに比べて価格が約14万円高いものの、魅力度ではさらに大きな価値がある。そのために売れ行きも、マーチNISMOを上まわるわけだ。
スイフトスポーツに対抗できるNISMOの本命は、現時点では登場していないノートe-POWER・NISMOだろう。先代ノートe-POWER・NISMOの価格は250万円少々だった。
現行ノートe-POWER・NISMOを設定する時は、装備の上級化を踏まえても、価格を260万円から270万円にすると割安感が生じて魅力も高まる。ノートNISMOか、それとも同価格帯のノートオーラGか、という選択も成り立つ。
ただしノートNISMOの価格は、マーチNISMO・Sに比べれば約80万円、スイフトスポーツと比較しても70万円ほど高い。今のノートはハイブリッドのe-POWERのみを搭載するから、価格が高まった。
ノーマルエンジンを廃止すると、スポーツモデルも手軽には購入しにくくなってしまう。クルマ好きのユーザーに向けた車種だから、e-POWERでは6速MTを選べないことも欠点になる。
ノートがe-POWERのみになった今、マーチNISMOの重要性も高まったが、商品力が追い付かない。ノートに1.6Lノーマルエンジンと5速、あるいは6速MTを加えることも含めて、日産にはコンパクトスポーツモデルをさらに充実させる余地がある。
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みんなのコメント
只、この二台を見たら
ホンダのフィットモディューロXは
圧倒的にボッタクリと分かる…
マーチオーナーには悪いけど、現行モデルは何年目?10年ぐらい経過してんじゃない?
新しいスイフトターボとマーチ比較して悩む人も少なそう。