ヤマハ製小型低速モーターをベースに広がるモビリティの世界
2024年1月12日から14日、幕張メッセで開催された日本最大のカスタムカーイベント「東京オートサロン2024」に、二輪車メーカーのヤマハ発動機が初出展して注目を集めています。
【画像】東京オートサロン2024に初出展したヤマハの画像を見る(25枚)
ヤマハは「小さなEVを、社会を変える力に。」をテーマに、小型低速EV(電気自動車)の汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」を活用したコンセプトモデル7機種を発表しました。
ちなみにベースとなっている「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」は、1~2人乗りの小型低速EV汎用プラットフォーム。車体の複数連結やバッテリーの複数搭載など、目的によって変更可能で自由度の高さがウリなんだとか。
バッテリーにはホンダの「ホンダモバイルパワーパックe:」を搭載し、既存の協業パートナーと開発を進めているというユニークな試みで、バリエーションに富んだユニークなコンセプトモデルが勢ぞろいしました。
プロジェクトを統括しているヤマハの大東淳さんは、乗り物に関する価値観が目まぐるしく変わっていく中で、この小さくて変幻自在な低速EVが人々の暮らしを支える多種多様な乗り物になると語ります。
「地域によってさまざまな課題があります。その課題に取り組み、人々の暮らしに寄り添っていくには、やはりいろんなアイディアが必要です。便利さや必要性だけじゃなく、楽しさや趣味性、ファッション性を追求してもいい。幅広いアイデアを求めています。一緒に可能性を広げることができるパートナーを必要としています」
今回の出展は、幅広い活用アイデアや共創・協業パートナーの探索も目的としているんだとか。そこで、調査員ガール5名が登場! バイクのニュースでレポートを書いてくれている女子高生ライダー、夕樹倫理さんも調査員としてリサーチしていました。
さまざまな地域や企業との関わりによる化学反応で、個人の特性や趣味嗜好に寄り添ってくれる何かトクベツなノリモノが誕生しそうです。
さまざまな用途や趣味嗜好に合わせた多彩なコンセプトモデル
まず、中央ステージに鎮座するコンセプトモデルは、ダートや不整地など、さまざまなフィールドで活躍する電動オフロードバギー「Concept580」。
マリンレジャーに特化した2人乗りの「Concept310」、未来的なデザインの1人乗りオフロードモデル「Concept 160」、農地や不整地での移動や牽引作業も行う働くクルマ「Concept451」、ゴルフに似合いそうなリゾート向け1人乗り電動モビリティ「Concept 350」、ホースライド型の4輪駆動電動モビリティ「Concept 682」、北欧風デザインがスタイリッシュな近未来的都市型3輪パーソナル電動モビリティ「Concept 294」などがラインナップしました。
ベースがたった一つと思えないほど、用途もスタイルもさまざま。多彩でユニークなコンセプトモデルが勢揃いしました。
ほかにも、参考出品で水素用直噴インジェクターを使用したROV(四輪バギー)「XYZ1000R」、原付二種ロードスポーツ「XSR125」のカフェレーサーカスタムが展示されました。
「Concept682」にあしらわれたヤマハ伝統のスピードブロックって?
バイクのニュースが注目するコンセプトモデルは、ヤマハ伝統のスピードブロックパターンをあしらったホースライド型4輪駆動電動モビリティ「Concept682」です。
気になるポイントはそのカラーリング! 黄色地に黒のブロックパターンが施されたカラーで、もともとはヤマハのアメリカ法人が、現地でレース活動する際のイメージカラーとして1970年頃から使い始めた「スピードブロック」と呼ばれるグラフィックです。ほかに「USインターカラー」や「ストロボカラー」などとも呼ばれています。
’70年代から’80年代にかけて、アメリカの国民的レースANAのデイトナ200マイルレースでヤマハが大活躍し、全米のモータースポーツファンにこのカラーリングが知られるようになっていきました。
さらに世界的に知らしめたのが、「キング・ケニー」の愛称で親しまれる元世界GPチャンピオン、ケニー・ロバーツです。1978年にこのカラーリングのYZR500で世界GP3で初優勝。その後、3連覇を成し遂げ、世界のモーターファンに鮮烈な印象を残したのです。
’70~’80年代のバイクブームに青春を過ごし、レースシーンに心ときめかせていた昭和世代には憧れのカラー。まさにレガシーといえるカラーリングが落とし込まれているのです。
人に寄り添う「楽しさ」を求めることも新しい未来のカタチ
ヤマハの伝統カラーをあしらった「Concept682」は、乗る楽しさや所有する喜びを叶えつつ、自分好みにアレンジしたりカスタムできる自由さがテーマ。バイクのようにまたがって操作するホースライド型の4輪駆動電動モビリティです。
アウトドア関連企業のビブラント株式会社との共創によって誕生したコンセプトモデルで、代表の石角直樹さんと一緒に企画のコンセプトメイクを手がけたのが株式会社カイロギの馬渕忠則さんです。
「私たちのような乗り物に対してパッションの強い世代はもちろんですが、同時にZ世代の子供たちにも音楽やファッションにちょっと懐かしい『昭和』の匂いを求めているんです。だから、ちゃんとヘリテイジを取り戻そうと。私を含め、メンバーにコアなヤマハファンがいたので、『ロバーツ先生の色にしよう!』ということになりました(笑)」
知っている人ならひと目見てヤマハらしいカラーリング、そして、ネットを通じてZ世代に新たに評価されている昭和のテイストを反映したと語る馬渕さん。伝統を受け継ぎながらも、未来を担う世代もワクワクするような、楽しさと希望を与える趣味嗜好性を追求しているそうです。
「四輪ということだったのですが、バイクのようにまたがって乗れるホールライド型にしました。自分好みにカスタムする楽しさも欲しくて、ブレーキまわりはブレンボ製。メーターは60年代後半のフェラーリ・ディーノに入っていたヴェリアボレッティ製の実物を使っています(笑)」
より前衛的で難解になりがちなコンセプトモデルですが、「Concept682」は人々の暮らしに寄り添うような、わかりやすい「楽しさ」を追求しているんだとか。
「大概コンセプトモデルというと、非常にコンセプチュアル(抽象的)になってしまうことが多いのですが、今回は『もう(実際に)あるでしょ?』、『いつ売るの?』と思ってもらうことが狙いでした。今は60代、70代でも若々しくファッショナブルな人はいくらでもいます。マインドが衰えていない人たちが多いんです。何も宇宙服を着ることが未来じゃない。わかりやすい『楽しさ』を求めることも、より新しい未来なのかなって思います」
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