この記事をまとめると
■乗客と積極的に会話をするタクシードライバーが減った
知られざるタクシー業界のルール! 新人が「銀座には近寄るな」と指導されるワケ
■その理由のひとつに新型コロナウイルスの蔓延がある
■昔と比べていまは配慮すべきとみなされたことも多い
ドライバーは乗客との会話を控えるようになった
筆者は仕事柄ネタ取りにもなるので、乗り合わせたタクシーの運転士が話好きなほうがいいなぁといつも思っている。一時期、仕事の都合もあり月に1回ぐらい、深夜にタクシーで東京都心から40kmほど離れた東京隣接県の自宅まで帰ることがあった。深夜で道路も空いているので、タクシーに乗る前にコンビニで買い物をして、コンビニ袋を下げてタクシーを捕まえるために道路端で手を挙げるのだが、わざわざ繁華街でもなく、とてもロング(長距離利用客)客がいるとは思えない場所で手を挙げるようにしていた。タクシーによっては、コンビニ袋を下げているので近距離利用客と思っているのか、ガン無視されることもあった。
停まってくれるタクシーも「近距離客だな」と諦めムードでドアを開けてくれるのだが、目的地を告げるとキツネにつままれたような表情になり、「わかりました、ところで高速道路は……」と聞いてくるので、「もちろん高速道路使ってください」というと、それまでの諦めムードから、宝くじを当てたかのような表情にたいがいの運転士はなる(このような近距離客かと思っていたらロング客だったときは「お化けが出た」などと業界では言われるようだ)。そのあとはうれしさもあるのかとにかく運転士は饒舌となり、目的地に到着するまで喋り続けることが多かった。筆者もここぞとばかりにタクシー業界のことで聞きたいことをぶつけるとペラペラと話してくれるので、非常に助かった記憶とともに楽しい思い出となっている。
ところが、最近はタクシーに乗っても話しかけてくる運転士が目立って減ってきているように感じる。その大きな原因は新型コロナウイルスの感染拡大があるだろう。ただでさえ、感染拡大のひどかったころは利用者自体が激減しているなか、感染予防のためもあり、乗客との会話を控える動きが広がったようである。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、利用客が減って乗務機会も大幅に減ったことで、タクシー運転士を引退するベテランドライバーも相次いだ。筆者の経験からいけば、話好きな運転士はより年配な人に目立っていた。新型コロナウイルス感染拡大を契機に話好きな運転士の多くがリタイヤしたことも多いだろう。
ドライバーは会話の内容にも配慮
そもそもタクシー運転士が新人研修を受けるときには、「乗客と話をしてもよいが、プロ野球と政治の話はするな」と教えられるようだ。乗客が応援しているチームを運転士がこき下ろせばたちまちトラブルとなる。政治でも支持政党などが異なればたちまちトラブルとなるので、世論を二分するような話題は極力避けるようにとされている。ただし、タクシーの車内というのは不思議な空間であって、ときどき初対面の運転士に人生相談や、自分のごくプライベートなことを話してくる乗客も意外なほど多いようである。
ただし、現状の世の中は分断化が進み、ジェネレーションギャップも以前より激しくなってきている。女性の乗客ならば、何気ない男性運転士の発した言葉によりセクハラに発展するなど、会話さえしなければトラブルにならなかったといった事案が増えているようである。
筆者は自宅最寄り駅からタクシーによく乗るので、何人かの運転士さんと顔見知りになっている。タクシーに乗り込むと、「久しぶり」とか「今日は早いね」などとまず声をかけてもらい、車内での会話も弾み、自宅近くになると「いつもの場所でいいんだよね」と言ってくれ、いつもの場所にタクシーを停めてくれる。いい歳したオッサンである筆者は、このようなやりとりは親しみもあって好感がもてるのだが、年頃の女性ならば恐怖に感じてしまうだろう。価値観など世の中が多様化し、そして何かと物騒になってくると、同じことでも受け止める側次第でずいぶん印象が変わってくるのがいまの社会なのである。
もちろんタクシー運転士も誰でも乗客なら話しかけるというわけではない。そこはプロなので、乗り込んできたお客の様子を見て、「この人なら大丈夫だろ」と思ったら、最初は天気の話題などをふって様子を見ながら話しかけるようにしているとも聞いたことがある。
ちなみに筆者は海外出張のときもタクシーをよく利用するのだが、英語が公用語として広まっているインドやアメリカなどではまだなんとか対応できるが、中国やタイ、インドネシア、ロシアなどでは現地語でタクシー運転士から話しかけられて困ってしまうことがある。
ただ、文明の進化はありがたいもので、いまではスマホの翻訳アプリなどでコミュニケーションが取れる時代になったので、道中を結構楽しく過ごすことができるようになった。治安のよくないアメリカでは、原則そのようなことはまずないのだが、運転士から「助手席に座れ」と言われ座らされ、目的地までしゃべり続けたこともある。筆者は国内外問わず話しかけやすいキャラクターなのかもしれない。
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みんなのコメント
普段はおしゃべりですけど、仕事中は無口です
客と話すの面倒くさいんで(笑)
とはいえ、話しかけられたら目一杯笑顔でお話しますよ
でも、やっぱり黙って運転したい