現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 売れなかったけど斬新! 今年絶版 N-BOXスラッシュの魅力とトライ

ここから本文です

売れなかったけど斬新! 今年絶版 N-BOXスラッシュの魅力とトライ

掲載 更新 24
売れなかったけど斬新! 今年絶版 N-BOXスラッシュの魅力とトライ

 今年もまた果敢に新たなジャンルに挑戦したホンダ車が姿を消した。――N-BOXスラッシュ。ご存じ「日本一売れているクルマ」たるホンダ N-BOXの派生モデルとしてデビューした。

 そのN-BOXスラッシュを高く評価するのが自動車評論家の清水草一氏。スタイルもカッコよく、質感も高い。N-BOXスラッシュは決して魅力がないわけではなく、軽自動車のなかで新たなジャンルに挑んだクルマであった。

画期的でプチブレイクしたのになぜ!? ポルテ・スペイドが消えた必然【偉大な生産終了車】

 そんなところどころにセンスが光ったN-BOXスラッシュに、哀悼の意を込めて、その魅力を今一度お伝えしたい。

文/清水草一、写真/ホンダ、編集部

【画像ギャラリー】本稿未掲載!全30枚 N-BOXスラッシュのさらなる内外装写真を見る

センスの良さ光るも2020年2月に生産終了したN-BOXスラッシュ

2020年2月に生産終了したホンダN-BOXスラッシュ

 N-BOXスラッシュが消滅した。すでに2020年2月の段階で生産が終了し、在庫販売のみになっていたのです……。

 N-BOXスラッシュが登場したのは2014年12月。私は新車試乗会に参加させていただきましたが、とってもセンスのいいクルマでした。

 すでに初代N-BOXがバカ売れしており、その余裕からか、ホンダのクルマ好きたちが、N-BOXをいかにも古典的なクルマ好き方向にアレンジしたブツ。それがスラッシュだったと思うのです。

 まず、全高が10センチ低い。そのぶん天井は低くなるけれど、N-BOXなどの軽ハイトワゴンは、もともと天井が高すぎる(私見です)! 前から見ると、乗員の頭上がスカスカすぎて、景色としてマヌケすぎる。そんなに頭上が広々としていたって、網棚付けるわけでもないし……。

 N-BOXスラッシュは、そこのところをスパッと10センチ切って、ちょうどいいバランスにした。それでも充分すぎるほど頭上には余裕がありましたからねぇ。広すぎるクルマは貧乏臭い! ちょうどいい広さってものがあるだろう! って思うんだけど、まさにそんな感じ。

N-BOXスラッシュは、今でいう「しなやかスポーティ」に仕上がっていると筆者は語る(全長 3395mm×全幅 1475mm×全高1670mm(FF車)/ホイールベース 2520mm)

 リアドアはヒンジを隠して、2ドアクーペっぽく見せていた。もちろん2ドアなわけないんだけれど、その古典的な美意識が涙を誘った。ドア枚数が多いのはカッコ悪い! という、イタリア人的な価値観がまだ生きていたんだね! 号泣。

 全高を低くして足回りも1センチローダウンされていたから、安定感が増して、当然のごとく走りは良くなっていた。

 このへんはホンダのクルマ好きがやることですから、間違いはありませんでした。もとは背が低いのが正義っつー方向性のメーカーだったんだから!

 でも、ただスポーティにしたってわけではなくて、乗り心地は実に上質。決して固くはないけれど、動きが適度にシャープで安定しているという、軽随一の高級な乗り味だった。

 今でいう「しなやかスポーティ」という、ドイツ御三家的な方向性ですね。さすがホンダのクルマ好きが作っただけのことはある。

N-BOXに先んじて機能を投入! スラッシュ最大の売りは?

N-BOXスラッシュ発売当時、N-BOXより先に、後席の前後スライド機構を採用した

 スラッシュの先駆的な試みとしては、N-BOXより先に、後席の前後スライド機構を採用したってのもあるんだよね。

 初代N-BOXは、フィット譲りの後席チップアップ(座面を跳ね挙げて高い荷物を積める機能)がウリだったけれど、そのため後席の前後スライドはできなかった。

 いっぽうスズキやダイハツは前後スライド命。どっちが優れているかの勝負が展開されていたんだけれど、スラッシュはその両方を実現! 

 その後N-BOXにも移植されたので、スラッシュ独自の機能じゃなくなったけど、登場時点では一番便利な軽だった……と言えなくもない。

カリフォルニア調の「ダイナー」や、ハワイ調の「グライド」、テネシー調の「セッション」などのファッション性にとんだインテリアカラーパッケージが用意された

 そしてそして、N-BOXスラッシュ最大のウリは、ファッション性だった!
ホンダは「ファンキー」をキーワードに、カリフォルニア調の「ダイナー」や、ハワイ調の「グライド」、テネシー調の「セッション」という、インテリアカラーパッケージを準備してくれたんです。

 名前を聞くとちょっとこっぱずかしいけど、実物はとってもセンスがよくて、「これ、このまま欲しいかも!」と本気で思いました。思い切りがんばっちゃいました的な、浮ついたニセモノっぽさは感じなかった。

 ただね、これらのパッケージ車、私は実際に路上で見かけたことは一度もなかったんですよ……。広報車しか見たことナシ! 全然売れなかったんだろうなぁ。

“ジンクス”は破れず…N-BOXスラッシュが成功できなかった訳

スタイリッシュなデザインだったが、N-BOXより9万円価格が高いため、贅沢な軽自動車になってしまった

 N-BOXスラッシュは、もともと値段が高かった。N-BOXより9万円高かった。そこにこういうパッケージオプションを付けると、当然もっと高くなって、とってもゼイタクな軽になった。

 近年、ゼイタクな軽はまったくフツーで、200万円超えなんてぜんぜんアタリマエだけど、多くの人がオプションで奢るのは、高性能ナビとか後席モニターとか、あとは押し出し感を高めるギラギラ系の外装とかで、こういうセンスのいいファッション的な内装にカネをかける人はほとんどいない。

 正直なところ、「ダイナー」とかって、カタログを見たら「これはやりすぎだろ!」「ハズカシ~」って思ってしまう雰囲気だったし。キマリすぎだったんです。

 フツーの人がキマリすぎなファッションで身を固めたら、目立っちゃって恥ずかしいでしょ。そこのところの手加減ができなかったと申しましょうか。あまりにもやり尽くしてしまったんですねスラッシュは。

 結局、高いだけでちょっと室内が狭い、単に割高なクルマということになり、一貫して売れませんでした。

 そして、N-BOXがモデルチェンジしてからは放置プレイ。無念……。

 でも、今写真を見返しても、N-BOXスラッシュってスタイリッシュだったよね。どーんとした四角い顔を張り出しつつ、サイドウィンドウが後ろに行くにしたがってシュッとすぼまる形状は、どこかアメリカンでカッコよかった。

 カッコよすぎる軽は売れないというジンクスがあるけれど、スラッシュもそのジンクスを破ることはできなかった。でもナイストライでした! 合掌。

【画像ギャラリー】本稿未掲載!全30枚 N-BOXスラッシュのさらなる内外装写真を見る

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

[15秒でわかる]アキュラ『ADX』新型…内外装はスポーティかつ高級な印象に
[15秒でわかる]アキュラ『ADX』新型…内外装はスポーティかつ高級な印象に
レスポンス
アルピーヌは東京オートサロン2025で3台のA110を披露
アルピーヌは東京オートサロン2025で3台のA110を披露
カー・アンド・ドライバー
WRCラリージャパン2024が開幕、4日間の熱い戦い トヨタ逆転優勝なるか
WRCラリージャパン2024が開幕、4日間の熱い戦い トヨタ逆転優勝なるか
日刊自動車新聞
注目が集まる角田裕毅の2025年シート「僕はレッドブルの一員なのでここにいます。ホンダとは話をしていません」
注目が集まる角田裕毅の2025年シート「僕はレッドブルの一員なのでここにいます。ホンダとは話をしていません」
motorsport.com 日本版
【スクープ!】AMG製電動スーパーSUVデビュー間近!メルセデスAMGが新型電動SUVを開発中!
【スクープ!】AMG製電動スーパーSUVデビュー間近!メルセデスAMGが新型電動SUVを開発中!
AutoBild Japan
「マジで!?」ホコリまみれの“スクラップ車”が14億5000万円で落札!? 50年ぶりに見つかった1956年製メルセデスの“驚きの価値”とは?
「マジで!?」ホコリまみれの“スクラップ車”が14億5000万円で落札!? 50年ぶりに見つかった1956年製メルセデスの“驚きの価値”とは?
VAGUE
ミツオカ「M55」発売決定! 2025年生産販売台数は100台で、2024年11月22日から受付開始
ミツオカ「M55」発売決定! 2025年生産販売台数は100台で、2024年11月22日から受付開始
Webモーターマガジン
【10月の新車販売分析】受注停止車種が多くともトヨタ1強にかわりなし! 軽乗用車はホンダとダイハツの2位争いが熾烈に!!
【10月の新車販売分析】受注停止車種が多くともトヨタ1強にかわりなし! 軽乗用車はホンダとダイハツの2位争いが熾烈に!!
WEB CARTOP
『簡単にキズが消えた!』初心者でも簡単、コンパウンドで愛車の浅いキズを手軽に修復するテクニック~Weeklyメンテナンス~
『簡単にキズが消えた!』初心者でも簡単、コンパウンドで愛車の浅いキズを手軽に修復するテクニック~Weeklyメンテナンス~
レスポンス
トヨタ新型「ミニアルファード」登場は? 「手頃なアルファードが欲しい」期待する声も!? 過去に"1代で"姿消した「ミドル高級ミニバン」があった!? 今後、復活はあるのか
トヨタ新型「ミニアルファード」登場は? 「手頃なアルファードが欲しい」期待する声も!? 過去に"1代で"姿消した「ミドル高級ミニバン」があった!? 今後、復活はあるのか
くるまのニュース
スクーターのようでスクーターではない!? シリーズ最大排気量イタルジェット「ドラッグスター700ツイン・リミテッドエディション」発表
スクーターのようでスクーターではない!? シリーズ最大排気量イタルジェット「ドラッグスター700ツイン・リミテッドエディション」発表
バイクのニュース
ホンダ 全固体リチウムイオン電池のパイロット生産ラインを公開
ホンダ 全固体リチウムイオン電池のパイロット生産ラインを公開
Auto Prove
MINI コンバーチブル【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
MINI コンバーチブル【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
【最新モデル試乗】期待のストロングHV登場! SUBARUクロストレックS:HEVの実力
カー・アンド・ドライバー
新車198万円! スバルの全長4.3m「“7人乗り”ミニバン」が凄い! 得意な「AWD×水平対向エンジン」採用しない“謎のモデル”に注目! 意外な「小型ミニバン」誕生した理由とは
新車198万円! スバルの全長4.3m「“7人乗り”ミニバン」が凄い! 得意な「AWD×水平対向エンジン」採用しない“謎のモデル”に注目! 意外な「小型ミニバン」誕生した理由とは
くるまのニュース
愛車の履歴書──Vol54. 池松壮亮さん(番外・後編)
愛車の履歴書──Vol54. 池松壮亮さん(番外・後編)
GQ JAPAN
トヨタ世界初!謎の「“パイ”エース」に大反響! 屋根なし&12人乗りに「成人式仕様みたい」「オトナも楽しめそう」の声! “マル秘システム”搭載の「ハイエース」がスゴイ!
トヨタ世界初!謎の「“パイ”エース」に大反響! 屋根なし&12人乗りに「成人式仕様みたい」「オトナも楽しめそう」の声! “マル秘システム”搭載の「ハイエース」がスゴイ!
くるまのニュース
頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

24件
  • これのターボだけど、加速いい。おまけにハンドリングも良い。フラフラ走るのn-boxとはキャラクターが正反対なクルマ。
    クラウンとかの高級車しかついてないハンドルヒーターや電動パーキング(発売当時)が付いてた。さらにセンタートンネルに大型サブウーハーまである。
    でも良さが宣伝出来なかったホンダは売れなかった…
  • ベースこそN-BOXで軽自動車サイズだけど、70年代のコークボトル時代のアメリカ車の前後をぶった斬ってキャビンだけにしたような感じを狙ったんだろうなと思った。窓の小ささから来る後席の薄暗い閉所感はそれこそマーキュリー・クーガーのような当時の2ドア車のようでもあり、または戦前のダットサンのようにも見えた。いい意味でホンダらしい変わった車であり、それが良かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.0172.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

32.0169.8万円

中古車を検索
N-BOXスラッシュの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

159.0172.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

32.0169.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村