街で見かけるバンやトラックには様々な車種が走っている。その中でも目立つのが、トヨタエンブレムだ。ダイナに始まり、ハイエース(レジアスエース)やプロボックス(サクシード)など、トヨタの商用車に対するユーザーの支持は厚い。
トヨタ商用車は、なぜ販売を伸ばし、長く利用されているのか。販売現場から見える、トヨタ商用車販売の実態に迫っていく。
ライバル不在!? それとも販売網のおかげ!? なぜトヨタの商用車はこうも支持を集めるのか
文:佐々木 亘
画像:Adobe stock(トップ:222774413@Adobe stock)、トヨタ
■豊富なラインナップが常連を作り離さない
各メーカーのHPで商用車ラインナップを見てみると、ホンダはN-VANのみ、三菱もミニキャブバンとミニキャブトラックだけだ。マツダのラインナップは多いが、トヨタ・ダイハツ・スズキ・いすゞのOEMで自社開発の車両ではない。
日産は、比較的商用車ラインナップが多いメーカーだが、それでもキャラバン、NV200バネット、ADまで。トラックや軽自動車についてはOEMを採用する。
商用車(ビジネスカー)ラインナップを比較したときに、トヨタの種類の多さは、他メーカーを圧倒している。
トラックでは、ダイナ(カーゴ・ダンプ)、タウンエーストラック、ハイラックス(ピックアップトラックとして)、1BOXはタウンエースバンとハイエースバンという大小を備え、ワゴン・ライトバンにはカローラフィールダーとプロボックスがいる。
左 バン スーパーGL(標準ボディ・2WD・ディーゼル車)(ホワイトパールクリスタルシャイン)<オプション装着車>
中 ワゴン グランドキャビン(2WD・2700ガソリン車)(ラグジュアリーパールトーニング)<オプション装着車>
右 コミューター GL(2WD・ディーゼル車)(シルバーマイカメタリック)<オプション装着車>
さらにセダンではカローラアクシオ、バス・タクシーではコースターやジャパンタクシー、ハイエースワゴンまでと盛りだくさんだ。軽自動車にはダイハツOEMのピクシスバンとピクシストラックもある。
全14車種にも及ぶビジネスカーは、法人・個人問わず、幅広い需要に応えているのだ。
ビジネスカーは、一つの法人での複数台所有が多い。トラックでも1BOXでもライトバンでもいい、どこか一つの分野で使ってもらえれば、ゆっくりと全車買い替えの提案にもつながるのが魅力である。
強い常連を作り、そして決してユーザーを裏切らない商品ラインナップがあればこそ、ビジネスカー販売は大きく成長する。全方位からビジネスユーザーに対して提案が行える、トヨタの強力ラインナップは、トヨタ商用車支持の大きな原動力となっているのだ。
■丈夫さは世界一?高い耐久性がユーザーをつなぎとめる
積載性や使いやすさ、そして安い価格が重要視されるビジネスカーは、いつの時代もシンプルイズベストの作り込みだ。
こうしたビジネスカーの中でも、トヨタの耐久性は高い。世界中で高い評価を得ており、日本では既に現役を退く50万キロ越えのダイナやハイエース、カローラなどが、中古車として輸出され、アジア・中東・南米などで売れる。それも、かなり良い値段になるから驚きだ。
日本車は全体的に高耐久なクルマとして、世界から認知されているが、中でもトヨタへの信頼度は高い。こうした世界各国からの評判が、日本国内でも広がり、信頼と実績に繋がっている。
高い耐久性を作り出す理由の一つに、部品精度の高さが挙げられるだろう。シンプルな商用車だからこそ、高い精度の部品と組付けが効いてくるのだ。
部品メーカーに話を聞くと、他メーカーよりもトヨタが求める精度は高いという。乗用車と同じ精度(もしくはそれ以上)の部品を求め、製造されるからこそ生み出される高い耐久性は、ユーザーをガッチリとつなぎとめる役割を担っている。
■ベテランからのスキル継承、若手の商用車販売を支える存在
売れる商用車を作り出すためには、高耐久などの評判とともに、良い状態で長く使うための高品質な整備も重要だ。
ハイエースやプロボックス、クラウンコンフォートなどの商用車の中には、定期メンテナンスだけで、問題なく30万キロ~50万キロ程度を走行してしまう個体が多い。オイルやタイヤなどの消耗部品をしっかりと取り換えれば、長期間、長距離を乗ることも十分可能なクルマたちなのだ。
ハイエース バン スーパーGL(標準ボディ・2WD・ディーゼル車)(ボルドーマイカメタリック)<オプション装着車>
こうした壊れにくい、不具合の起きにくいクルマを支えるのは、目利きの整備士たちだ。特に、コンピュータ制御ではなく、機械的にクルマを制御していた時代を知る、ベテラン整備士たちは、シンプルかつ機械的な商用車の整備には欠かせない存在である。
長年に渡り、商用車ラインナップを減らさなかったことで、整備の現場では古(いにしえ)の技術が脈々と継承されてきた。乗用車だけではなく、トラックや貨物バンなどの整備を他ディーラーに比べ、数多くこなすトヨタ整備士たちは、多くの先輩方が繋いできた技術を自らのものとし、商用車を支えている。
販売から管理までを一手に引き受け、法人が手を入れにくい車輛管理に至るまで提案活動を欠かさないトヨタの販売現場が、今日のトヨタ商用車のブランド化を実現した。プロボックスやハイエースに指名買いが多いのは、1台1台のビジネスカーを大切に扱ってきた、トヨタのおもてなしが大いに関係しているだろう。
今後も、日本はもちろん、世界中で愛される、トヨタビジネスカーの勢いは止まらない。
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