この記事をまとめると
■PHEVとなったジープ・ラングラー4xeに中谷明彦さんが試乗した
すっかり「近代化」が進んだラングラーのPHEVに試乗! それでも残る「アメ車」感とは
■2リッター直4にモーターが組み合わされ、センタートランスファーによるフルタイム4WDシステムに変更はない
■悪路走行はしていないが、高い悪路走破性を備えていることがラングラーを所有する歓びであり意義でもある
高いオフロード性能を誇る「ルビコン」にPHEVを設定
アメリカを代表するオフロード車ブランドである「ジープ」にも電動化の波が押し寄せている。悪路走破性の高いジープ、とりわけラングラーの電動化は難しいように感じられていたが、ジープは見事にそれを達成し登場させた。それももっとも悪路に強い「トレイルレート」を誇る「ルビコン」に搭載しての登場だ。
ジープ・ラングラーにはサハラとルビコンの2グレードがあり、ルビコンは高い悪路性能を誇る最強グレードだ。現行モデルは2015年に登場し、それまでのラングラーから大きな進化を果たしていた。
アルミ製ドアを採用して軽量化を図りつつ、堅牢なラダーフレームは継承。サスペンションをブラッシュアップしてオンロードでの洗練された乗り味も獲得していたのだ。
パワーユニットは驚くことに2リッターの直噴ガソリンターボエンジンで、2020年に3.6リッターV6ガソリンエンジン搭載車も追加されている。本場北米市場では3.6リッターのディーゼルターボエンジン搭載車も存在し、軽油価格が安い国内ユーザーからはディーゼルモデル投入を期待する声も高まっていたところだ。
それがPHEVという形で環境性能を追求したモデルとして追加投入されたことは、多くのラングラー愛好者にも驚きでもあったはず。
ラングラーPHEVが搭載するパワートレインは2リッター直4直噴ガソリンターボエンジンと8速AT間の通常トルコンが備わる位置に145馬力(107kW)の電動モーターを組み込み、ハイブリッドシステムとして構築している。トランスミッションから後方は通常のラングラーのプロペラシャフトやリヤアクスルがそのまま流用できていて、センタートランスファーによるフルタイム4WDシステムもそのままというパッケージングレイアウトとなっている。このパワートレインをジープは「4xe(フォーバイイー)」と称している。
PHEVとしての駆動用バッテリーは15.46kWhのリチウムイオンバッテリーで後席フロア下に配置。燃料タンクはガソリンモデルの81リッターから65リッターに縮小されることになったが、WLTCモードで約42kmのEV走行航続距離が確保されている。
ジープの特徴である悪路走破性はルビコン級では最大75cmの水深で渡河可能。バッテリーなどの電装部品は完全に浸水対策され、とくにコネクターなどは露出してはならない。そうした観点から、バッテリーやコネクターなどは75cm以上の地上高に配置されていることになる。ルビコンはもともと悪路走破後に室内に水を流して洗い流せるほどの防水性を備えており、電動化への不安は以外にも少ないと思える。
国内仕様のジープは従来すべて右ハンドル仕様だったが、今回のPHEVは左ハンドルのみの設定だ。
じつは右ハンドル車だと運転席足もとにトランスファーケースの出っ張り部分があり、左足の置き場に困っていた。左ハンドル仕様では運転席フロアはフラットになり、広く感じられて疲労が少ないのだ。
非日常的な無敵の走破性を電気でも味わえる
ルビコンにはボディサイドにステップが装着されていない。これは悪路でのトレイルレートを高めるためだが、乗降にはやや手間取る。フロントピラーのアシストグリップを握り、乗り込むのがルビコン式だ。乗り込んでしまえば、高いヒップポイントと視認性の良さで車体の大きさを感じさせない。
ブレーキペダルを踏み込んでスタート/ストップボタンを押せばシステムは起動し、走行スタンバイとなる。センターコンソール左側のシフトレバーをDレンジにセットすれば走行しはじめる。
ダッシュボード左下に設置されているドライブモードスイッチはハイブリッド(HV)、エレクトリック、E-SAVEの3モードがある。デフォルトはハイブリッド(HV)モードとなっていて、エンジンを始動させずにEVモードで走り始めることができる。
たとえ駆動バッテリーがゼロ充電状態でもEVで走り始めるのは有り難い。フル充電状態であれば、そのまま約40kmほどのEV走行ができる。ただ、実際に街なかを走ってみると、バッテリーの消費は著しく、満充電であっても40kmをEV走行するのは難しそうだ。電力消費モニターをみていると1.5~2kWh/kmといったところか。
エレクトリックモードだと充電がもつ限りEV走行可能で時速100kmでもEV走行するが、電費の消費は激しい。もちろん4×eのフルタイム4WDであり、255/75R17の見た目も迫力のあるBFグッドリッチ社製マッドテレインタイヤを標準装着しているので、その転がり抵抗の大きさも影響しているだろう。
ただ、このマッドテレイン、見た目のごつさの割に乗り心地はソフトでロードノイズも静か。市街地での日常仕様になんら問題ないレベル。加えてM+S(マッド&スノー)なので、多少の降雪には対応できるのもありがたい。
シフトレバー左手にある4WDの切り替えレバーで2Hを選択するとFRでの走行域が増えるので、燃費的にも若干伸びることを確認した。
E-SAVEモードはバッテリー電力を温存するモードで、エンジンを稼働させてハイブリッドで走行しつつバッテリーにも電力を蓄えていくことができる。E-SAVEで高速道路を巡航して10分ほど走ると5~6km分の電力が蓄えられた。ワインディングでの下りステージでは積極的にE-SAVEを活用し、ブレーキ回生とエンジンによる充電を連続的に行なうことでリチャージ効率も高まる。
外部コンセントからの充電は200Vに限られ、CHAdeMOの急速充電には対応していない。充電口は運転席側の車体左手フロントフェンダー上部にある。
ジープ・ラングラーは全車レギュラーガソリン仕様なので燃料代は比較的安くすむ。電気代もフル充電で300~450円程度とすれば、ガソリン消費とほぼ同等の経済性となる。
今回は悪路の走行は行わなかった。ジープ・ラングラーでルビコンといえば、国内の道路で試せるような過酷な場面は存在しないといっても過言ではない。それほど高い悪路走破性を備えていることがラングラーを所有する歓びであり、意義であるのだ。それは300km/h出るスーパーカーを所有していても、サーキットへ行かない限り性能を引き出せないのと同じ。非日常的な無敵の走行性能を所有することが意義深いのだ。
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みんなのコメント
記事の中で中谷さんもわざわざ指摘されている運転席の足下スペース。
それならばペダルレイアウトの写真の一枚も欲しかった。
丁寧な仕事をお願いします。