人気のスーパーハイト軽とSUVをくっつけちゃえ! とばかりに登場した「スーパーハイト軽SUV」。肝心の使い勝手はどうなのだろうか? ここではスーパーハイト軽SUV注目の3台の使い勝手を検証していく。
※本稿は2023年7月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2023年8月10日号
後席空間ならスペーシアギア! 乗降性一番のクルマは? スーパーハイト軽の使い勝手を検証
■スーパーハイト軽ならではの車内の広さ!
スーパーハイト軽SUVの使い勝手を検証。悪かろうはずがなーい!
3車とも全高が1800mm前後で室内も広い。後席を格納すると大容量の荷室になり、自転車なども積みやすい。
後席の居住性が最も優れているのはスペーシアギアで、座り心地は適度に柔軟だ。デリカミニは床と座面の間隔に余裕があるが、座面の柔軟性は乏しく、身体と座面の接する部分が短いから違和感が伴う。タントファンクロスは床と座面の間隔が足りず、さらに2022年に後席を変更したことで快適性が下がった。
またタントファンクロスは、有効室内長もほかの2車に比べて若干短い。その代わりタントファンクロスは乗降性が優秀だ。左側のBピラー(柱)をドアに埋め込み、前後ともに開くと開口幅が大きく広がる。この大開口はほかの2車では得られない。
■後席の格納方法にも個性が
各車工夫を凝らした後席の格納方法を採用する。それぞれに一長一短があり興味深い
荷室は各車とも充分に確保したが、後席の格納方法は異なる。デリカミニとスペーシアギアは、後席の背もたれを前側に倒すと座面も下がり、大容量の荷室になる。しかしタントは、ファンクロスを加えた2022年の変更で、座面が下がる機能を省いた。
背もたれが前側へ倒れるだけだ。格納すると後席が荷室から12cmほど持ち上がり、荷室高を減らした。後席の後ろ側にあるボードを持ち上げると平らな荷室になり、その下は収納設備になるが、自転車など大きな荷物を積む時の使い勝手はよくない。
その点でスペーシアギアは、荷室の床が低いから重い荷物も積みやすい。ライバル2車に比べて、目立つ特徴がなくデザインも地味だが、実用性は高い。
■後席利用時の注意点
スーパーハイト軽SUVユーティリティどうだ? 採点チェック
なお軽自動車では、追突された時の後席の安全性に注意したい。
後面衝突時の安全基準は燃料漏れだけで、乗員を守る基準はない。後席を車内の後端までスライドさせると、座った乗員の頭部がリアウィンドウに接近する。
そこで後席に座る時は、膝先に握りコブシが2つ収まるようにスライド位置を調節したい。そうすれば足元空間を充分に確保した上で、頭部とリアウィンドウの間にも相応の余裕を確保できる。安全に使いたい。
■注目のスーパーハイト軽SUVユーティリティチェック!!
三菱 デリカミニ
●三菱 デリカミニ(180万4000~223万8500円)
・後席ニースペース(リアモースト/フロントモースト):400mm/60mm
・後席座面から天井高:990mm
・後席フロアから天井高:1400mm
・後席座面長:450mm
・後席背もたれ高:460mm
・後席前後スライド量(実測値):390mm
・後席ヒップポイント高(フロアから座面):320mm
・後席ヒップポイント地上高(地面から座面):790mm
・スライドドア開口幅:630mm
・スライドドア開口フロア地上高:400mm
・荷室奥行き(最小):330mm
・荷室奥行き(最大):650mm
・荷室天井部高:1180mm
・荷室開口部横幅:1030mm
・荷室開口部地上高:600mm
後席は小柄な乗員に配慮して、座面長が他車よりも短く、床と座面の間隔は離れ過ぎている。座り心地は硬めだから違和感が生じた。座り心地をもう少し柔軟にして、座面長を伸ばし、着座位置を25mmほど下げると快適に座れる。
後席のスライド位置を後端に寄せた時の足元空間はとても広い。後席の背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がる。荷室の床に少し傾斜ができるが、ワンタッチで自転車も積める大容量の空間に変更できる。路面から荷室床面までの高さは平均的だ。
ダイハツ タントファンクロス
●ダイハツ タントファンクロス(172万1500~193万0500円)
・後席ニースペース(リアモースト/フロントモースト):300mm/70mm
・後席座面から天井高:1000mm
・後席フロアから天井高:1360mm
・後席座面長:470mm
・後席背もたれ高:460mm
・後席前後スライド量(実測値):390mm
・後席ヒップポイント高(フロアから座面):240mm
・後席ヒップポイント地上高(地面から座面):740mm
・スライドドア開口幅:710mm
・スライドドア開口フロア地上高:390mm
・荷室奥行き(最小):250mm
・荷室奥行き(最大):490mm
・荷室天井部高:1120mm
・荷室開口部横幅:1030mm
・荷室開口部地上高:600mm
一番の特徴は、左側のBピラーをスライドドアに内蔵させたことだ。左側の前後のドアを両方とも開くと、開口幅は1490mmに達する。後席の格納方法には注意したい。
以前は後席の背もたれを前側に倒すと座面も下がったが、2022年の改良で簡素化され、座面は下がらず背もたれだけが倒れる。広げた荷室の床に約120mmの段差ができる。
また後席は床と座面の間隔が不足して、足元空間もライバル2車ほど広くない。座面の柔軟性も不十分で、後席は先代型のほうが快適だった。
スズキ スペーシアギア
●スズキ スペーシアギア(172万5900~192万2800円)
・後席ニースペース(リアモースト/フロントモースト):390mm/170mm
・後席座面から天井高:1000mm
・後席フロアから天井高:1410mm
・後席座面長:490mm
・後席背もたれ高:470mm
・後席前後スライド量(実測値):375mm
・後席ヒップポイント高(フロアから座面):200mm
・後席ヒップポイント地上高(地面から座面):760mm
・スライドドア開口幅:750mm
・スライドドア開口フロア地上高:350mm
・荷室奥行き(最小):310mm
・荷室奥行き(最大):510mm
・荷室天井部高:1200mm
・荷室開口部横幅:1030mm
・荷室開口部地上高:510mm
目立つ機能はないが、後席の座り心地はライバル2車よりも快適だ。座面に柔軟性があり、角度もちょうどよく、大腿部のサポート性にも不足はない。後席を後方へスライドさせた時の膝先空間も、デリカミニと同様に広い。
後席は背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、大容量の荷室になる。しかも地上から荷室開口部までの高さがライバル2車よりも実測値で90mm低く、自転車を積む時も前輪を大きく持ち上げる必要はない。収納設備も3車の中で最も多く、実用性が高い。
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みんなのコメント
後席を一番後ろまでスライドさせて乗車している人をよく見るが
追突されたらどうなるか考えてないのかな