ラグジュアリーでコンフォータブルなのに怒涛の速さを見せる。新型アウディS8は、そんなドラマティックなキャラクターの持ち主だった。エレガントなエクステリアデザインも含めて、ぜひ大人に乗って欲しい1台だ。(Motor Magazine 2020年1月号より)
ハイパフォーマンス スポーツリムジンの先駆け
ハリウッドのアクション映画では、クルマが主役並みの働きをするケースが多い。私の記憶でかなり鮮明に覚えているのが、1999年にリリースされた「ローニン」だ。監督はフランケン・ハイマーというアマチュアレーサー、相当なエンスーである。
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このスパイ映画の中で主人公がミッションを成功させるためにさまざまな道具を調達させるが、その中に「どんな条件下でも使える世界最速のセダン」という注文が下り、そこで用意されたのがアウディS8であった。当時は自動車メーカーとのコラボなどなかったから、明らかに監督の見識で選ばれたのだろう。もちろん劇中でS8は、八面六臂の活躍を見せる。
ラグジュアリーリムジンというジャンルにあっては後発だったアウディが仕掛けたのは、他のドイツプレミアムブランドが当時はまだ持っていなかった、4輪駆動とハイパフォーマンスを組み合わせたスポーツリムジンだった。
それまでにないバリューを持って誕生したS8だが、ライバルも黙ってはいない。現在ではBMWはM760i xDriveそしてメルセデスベンツもAMG S63でこのセグメントに加わっている。
さて、前置きが長くなったがS8は1996年に登場して以来の4世代目に進化し、スペインのバルセロナで試乗会が開催された。プロジェクトマネージャーのベルント・フーバー氏は「先駆者として、アウディのスローガン、技術による前進によって、リードを保ちたい」と語る。
圧巻のパフォーマンスと細かい気配りを兼ね備える
まずS8に搭載されるエンジンについて紹介しよう。571psの最高出力と800Nmの最大トルクを発生する4L V8ツインターボで、クワトロシステム、4WS、スポーツデファレンシャルに加えて、アダプティブエアサスペンションが標準で装備される。このサスペンションはフロントカメラと連動して前方の路面状態を事前に検知し、各車輪に備わったアクチュエーターでロール、ピッチ、ダンパーを補正する機能を備えている。
一方、全長5mをゆうに超え、全幅はほとんど2m近い堂々たる体躯を持つサルーンには、その威容にふさわしい「おもてなし」も用意されている。たとえばドアを開くと車高が上昇、乗降性を高めてくれる。もちろん望めばショファードリブンとして使うことも可能で、後席の足もとには、ロングホイールベースバージョンでなくても十分以上のスペースが確保されている。
しかし本当のS8のウリは、その卓越したダイナミック性能にあると言うべきだろう。ドライバーズシートに腰を下ろすと豪華でスポーティなコクピットの歓迎を受けて、さっそくスペインのオートルートに向かった。
アクセルペダルを踏み込めば2.3トンの巨艦はわずか3.8秒で時速100kmに達し、さらに豪快な加速を続ける。8速スポーツオートマチックトランスミッションはあくまでスムーズで、気がつけば3速ですでにスペインの法定最高速度120km/hに達してしまう。4WSのおかげでレーンチェンジは高速でも安定した姿勢で実行できる。
さらに標準で搭載されている48Vマイルドハイブリッドのサポートで、負荷の少ない走行状況ではエンジンは停止。市街地では時速22km/h以下でアイドルストップす るなどの綿密な燃料を倹約するロジックにより、最大で100kmあたり0.8LLの燃費向上に貢献しているという。
最後になったが、その高性能ぶりと裏腹に、エクステリアデザインは非常に大人しく、A8との差を極力控えめにしているようだ。それが逆にエレガントな雰囲気を醸し出している。冒頭に述べたようにS8はまさに、高級サルーンの皮を被ったスポーツカーというべきなのだ。
ドイツでの発売時期は年末からで、日本向けのデリバリー予定や価格は公表されていない。(文:木村好宏)
■アウディ S8 TFSI クワトロ主要諸元
●全長×全幅×全高=5179×1945×1474mm
●ホイールベース=2998mm
●車両重量=2305kg
●エンジン=V8DOHCツインターボ
●排気量=3996cc
●最高出力=571ps/6000rpm
●最大トルク=800Nm/2000-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
[ アルバム : アウディ S8 TFSI クワトロ主要諸元 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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