未来のトップドライバー候補として、これから日本のモータースポーツ界を担う若手ドライバーにスポットを当てる『ネクスト・スター』。第4回は、2024年のFIA-F4に道上龍代表が率いるDrago CORSEから参戦する佐藤樹に話を聞いた。
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ZENT LC500優勝を見て決めたレーサーへの道。レースと関わり深い19歳が描く未来【ネクスト・スターVol.3/卜部和久】
──まず、佐藤選手がモータースポーツを始めたきっかけを教えて下さい。
佐藤樹(以下、佐藤):父親の影響で、3歳ごろに気付いたらカートに乗っていたという感じです。『乗ってみたい!』などと言っていたのかもしれませんが、正直僕の記憶には残っていないです。
──お父様はモータースポーツが好きだったのですか?
佐藤:昔少しだけバイクのレースなどをやっていたらしいですけど、僕が小さいころはF1しか見ていなかったです。逆に国内のスーパーGTなどはほとんど見ておらず、僕もF1ばかりを見ていましたね。
──では、カートを始めてからの佐藤選手のキャリアを教えて下さい。
佐藤:カートを始めたのは3歳からで、ロータックスMAXシリーズには参戦していましたけど、全日本カート選手権などには出ておらず、正直そこまで本格的にはやっていなかったです。
その後、18歳になって自動車免許を取得してからはフォーミュラレースに参戦するようになって、もてぎ・菅生スーパーFJ地方選手権では参戦初年度(2021年)にチャンピオンを獲得することができました。
翌2022年はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のフォーミュラクラスを受講してスカラシップ選考会に残り、JAF-F4(現フォーミュラ・ビート)ではチャンピオンになりました。
──最終的にスカラシップを得ることはできませんでしたが、HRSで学んだことはどういったことだったのでしょうか?
佐藤:HRSで講師を務める方々は、現役でスーパーフォーミュラに乗っているようなドライバーの方たちばかりです。その方たちと一緒に走ることができたので、自分に足りないものが明確化されたと思っています。
──2023年はHELM MOTORSPORTSからFIA-F4にフル参戦初年度を戦いました。ランキングとしては13位で終えましたが、フル参戦初年度はどういったシーズンでしたか?
佐藤:シーズン序盤は割と調子が良くて、予選で3番手を獲得することができたときもありました。ですが、シーズン後半になると、あまりうまくいかなくなってしまい、そのままシーズンが終わってしまったという感じでした。
──FIA-F4で2年目となる2024年はDrago CORSEに移籍することになりました。今季は第2戦で初表彰台を獲得していますが、ここまでのレースはいかがですか?
佐藤:第2戦で表彰台に上がることはできましたが、それ以降はあまりうまくいかず、うまくいってもシングルポジションに入るくらいにはなってしまったので、少し苦戦しています。
ウエットのときは調子が良くてトップ5くらいで走ることができるのですけど、ドライだと足りない部分が多いなという印象です。自分はウエットが比較的得意ということもありますが、ウエットでタイムを出せているのに、なぜドライでタイムを出すことができないのかという部分もあるので、もっといろいろと改善していかなくてはいけません。
また、予選で前にいけないことも結構あるので、まずは予選一発でもっといいタイムを出したいですね。今後も表彰台に上がるためには、その部分が必要だと思っています。
■フォーミュラEに惹かれた理由と今後の課題
──次に、佐藤選手が思うFIA-F4シリーズの難しい部分、面白い部分を教えて下さい。
佐藤:FIA-F4はやはりワンメイクなので、みんな同じものを使用しているレースです。そのなかで、本当に“細かい誤差”みたいな部分がかなり大きなタイムギャップになるところがあります。その部分はすごく難しいです。そのことを踏まえて、ドライバーのスキル差がはっきりと出るので、そこが分かりやすくて面白いのではないかなと思います。
──では、佐藤選手のレーシングドライバーとしての長所と短所を教えて下さい。
佐藤:長所……難しいですね(苦笑)。今までは割と予選でタイムを出せることが僕の長所かなと思っていたのですけど、今年はそれがうまく出せていないんですよね。でも、やはり調子が悪くても予選でタイムを出せることが長所のはずです(笑)。逆に短所は安定感に欠けるところだと思っていて、少し調子が悪くなるとレースが崩れてしまう部分は短所ですね。
──佐藤選手は将来どのようなレーシングドライバーになりたいというビジョンはありますか?
佐藤:僕は小さい頃からF1を見ていたこともあるので、国内よりも海外で活躍できるようなドライバーになりたいです。そのためには、やはり今年の話にはなってしまいますが、予選でもっとタイムを出せるようにしたいです。そもそもの一発タイムを出す部分が足りないと思っているので、そこが大事になってくると思っています。
──海外レースで将来参戦してみたいシリーズはありますか?
佐藤:最近だとフォーミュラEやWEC(世界耐久選手権)などが面白そうだなと感じています。
──フォーミュラEに参戦してみたいと言う若手ドライバーはかなり珍しいかと思います。どのあたりに惹かれましたか?
佐藤:海外で活躍できることに加えて、いろいろな国でレースを開催しているカテゴリーは、おそらくそこまで多くはないと思います。そのなかでフォーミュラEはさまざまな国を転戦しながら、フォーミュラカーでレースが行われているので、その部分は魅力です。
──海外のレーシングドライバーで憧れている選手などはいますか?
佐藤:(シャルル)ルクレールですね。走りの部分もそうですけど、外見的なカッコよさに惹かれます。
──では最後に、今季のFIA-F4を今後どのように進めていきたいか、そしてレーシングドライバーとしての将来像を教えて下さい。
佐藤:FIA-F4は、ここ数戦は少し苦戦してしまっています。ですが、正直僕にとっては鈴鹿大会の延期が少し味方になり、延期期間中にテスト走行をすることができました。そこでの経験を活かし、まずは予選でしっかりとタイムを出して、上位で戦えるようにしたいです。
そして、まずはこのFIA-F4をしっかりとした成績で卒業してからは、やはりフォーミュラに乗りたいと思っています。将来的にはフォーミュラで経験を積み、海外レースに参戦できるようなドライバーになりたいです。
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本格的なレース参戦は18歳からという佐藤。そこからスーパーFJやJAF-F4でチャンピオンを獲得し、ホンダレーシングスクール鈴鹿では最終のスカラシップ選考会に残るなど、実力は十分にあるだけに、あとはリザルト次第か。インタビューでは物静かな冷静さも感じられ、少ない周回で一発で決める予選のタイム出しを克服できれば、落ち着いて上位を争う姿も見られそうだ。
■プロフィール 佐藤樹(さとう・いつき)
2002年12月3日神奈川県出身。3歳からカートを始め、2021年にもてぎ・菅生スーパーFJ地方選手権でチャンピオンを獲得。翌2022年はホンダレーシングスクール鈴鹿のフォーミュラクラスを受講してスカラシップ選考会に残ると、同年のJAF-F4でシリーズチャンピオンに輝く。FIA-F4には2023年からフル参戦を開始し、今季第2戦で初の3位表彰台を獲得。現在ランキング12位につけている。
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