■ランボルギーニ最新SUV ウルスの実力を実際の公道で試す
2018年2月にジャパンプレミアされた、ランボルギーニ初のスーパーSUV「ウルス(URUS)」。SUVでありながらランボルギーニと一目でわかるデザイン、圧倒的な出力はもちろん、オンロード・オフロード問わない高い走行性能など、あらゆる部分が前代未聞のパフォーマンスで登場したクルマです。
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今回は、そんなウルスを公道で試す機会に恵まれましたので、実際の使用シーンでの使い勝手や走行性能などをレポートしていきたいと思います。
ランボルギーニといえば、何よりもスタイリングが魅力ではないでしょうか。しかし、ウルスは背の高いSUVなので「アヴェンタドール」や「ウラカン」のように“いかにも普通じゃない感”は意外とありません。
実際に人の多い東京都内の駅前を走っても、目で追いかけたり写真を撮る人はほんの一部でした。筆者は過去にもアヴェンタドールで都内をドライブしたこともありますが、その時の“目立ち度”とは雲泥の差です。しかし逆をいえば、街に溶け込める自然さを兼ね備えたスーパーカーともいえるでしょう。
ウルスのボディサイズは5112×2016×1638mm(全長×全幅×全高)あるので見た目の迫力はかなりのものですが、実際に街中を運転してみると想像以上に運転しやすいことに気づきます。SUVならではの目線の高さや見切りの良さもありますが、運転しやすい大きな要因は「アヴェンタドールS」にも採用されている、最大3度まで曲がるリアホイールステアリング機構のおかげです。
低速ではフロントタイヤとリアタイヤが逆位相になることで優れた小回りを実現しますが、高速域ではフロントタイヤとリアタイヤが同位相になることで、直進安定性を向上させ、ふらつきを抑えます。逆位相時の最小回転半径は5.9メートルとなっているので、国産Lサイズセダンと同等かそれ以下の数値です。そのため世田谷区の狭い路地の通行や、首都高のパーキングでも驚くほど自然に扱えました。
最新のクルマらしく、安全性能にもぬかりはありません。ウルスのシャシーはポルシェ「カイエン」などと同じ最新のプラットフォームが使われており、走行性能はもちろん電動化などあらゆる発展性も視野に入れたものです。
衝突被害軽減ブレーキやACC(前走車追従型クルーズコントロール)はもちろん、夜間のハイビーム操作を自動でアシストする機能も装備。車両周辺に取り付けられたセンサーやカメラによって、各種アラートやトップビューカメラも使えますから、街中はもちろん長距離のドライブでも快適です。
ウルスは乗車定員を4人と5人乗りから選ぶことが可能で、4人乗りのリアシートにはフロントシートと同様のバケットシートタイプのものが備わります。バケットシートといっても体をきつく固定するものではなく、適度なホールド感によって運転の安心感を高めるような設計なのでゆったりとくつろげます。もちろん電動タイプなので、どんな方でも最適なドライビングポジションをとることができます。
シートヒーターやドリンクホルダー、コンソールの小物入れやUSB充電ソケットやシガーソケットも装備されているので、乗員は普通の乗用車感覚で使うことができます。リアゲートも電動開閉式で、ラゲッジスペース容量も616リットルと大容量。5人乗りのモデルではリアシートを倒すことによって最大1596リットルまでラゲッジスペース容量を増やすことができるので、ランボルギーニということを除けば、本当に普通のSUVとして使える実力を持っているのです。
■意外と普通のクルマ? いや、ウルスは紛れもなくスーパーカーだ!
ウルスは路面の状況によって走行特性を変えられる5つのモードをセンターコンソールに備えています。「Tamburo ドライブモード・セレクター」と呼ばれたセレクターに備わったモード、「STRADA」「SPORT」「CORSA」はオンロードで使用するモードで、「TERAA」「NEVE」は砂地や雪道、悪路で使用するモードです。今回はオンロードのみの試乗ですので、TERAA、NEVEに入れる機会はありませんでしたが、その他のモードを試すことができました。
試乗車のタイヤはフロント285/45R21、リアは315/40R21の特大サイズで、専用に開発されたピレリ「P ZERO」です。
まずはSTRADAモード。これは通常の走行に使用するモードで、出力特性や駆動特性などがマイルドなセッティングです。ウルスはメーカーのキャラクター上スポーツ寄りのクルマなので、STRADAモードでもサスペンションは硬めの味付けですが、タイヤサイズを考えれば十分に快適です。これだけ太いタイヤであるにも関わらず、ステアリングが轍に取られてふらつくような場面もありませんでした。
このモードではアクセル操作に対して気を使うことはありません。2250rpmから850Nmを発生するエンジンなので、高回転まで回す必要もなく急な坂道でも力強く登ってくれますから、運転があまり得意ではない方や、小柄な女性などでも普通に乗れてしまうでしょう。
次にSPORTモードです。このモードに入れた途端、アイドリングでも排気音が大きくなったことがよく分かります。また車高が下がり、安定性向上と操作に対しての機敏性が増します。走り出すと図太い排気音が響き、「ランボルギーニに乗っている」という気分を盛り上げてくれます。
サスペンションのダンピングが締め上げられるのと同時にステアリングの特性もクイックになるので、SUVのであることを全く感じさせません。乾燥重量が2200キロあるウルスですが、体感では1600から1700キロくらいの車重に感じます。変速特性も高回転寄りになるので、下手なスポーツカーではまるで太刀打ちできないパフォーマンスを発揮してくれます。
最後にCORSAモードです。このモードではトラクションコントロールや一部の安全機能が制限され、サーキット走行などで威力を発揮します。このモードに入れた途端、V型8気筒4リッターのツインターボエンジンが、眠りから覚めたかのように獰猛なサウンドを放ち始めます。
走行中の回転数も常に3000rpm以上に保たれ、どの速度域からアクセルを踏んでもシートバックに強く身体が押し付けられる加速を体感できます。また、アクセルオフ時のブリッピングやアフターファイアも激しく、ランボルギーニを操っている感覚を存分に堪能できます。
一般道や首都高では路面のギャップを拾い快適とは言い難いものがありますが、それが逆にレーシングカーに乗っているかようにスパルタンな印象を与えてくれるので、気分を高めてくれます。鋭いステアリングレスポンスに加え、ロールが抑えられたサスペンションによって、巨体からは考えられない俊敏性を発揮してくれます。
最高出力650馬力、最大トルク850Nmを発生し、8速ATを介して駆動するウルスのパフォーマンスは、0-100キロ加速は3.6秒、0-200キロ加速は12.8秒、最高速度は305キロに達します。この性能を受け止めるブレーキは市販車最大サイズのカーボンセラミックディスクで、フロント440mm、リアは370mmの巨大サイズ。フロントキャリパーにはアルミニウム製の10ピストン、リアには鋳鉄製の6ピストンが採用されており、ブレーキング時の剛性感や効き、コントロール性も素晴らしいものがあります。
以上のように、スーパーカーとしての圧倒的なパフォーマンスを持ちながら、ファーストカーとしても充分使えてしまうのがウルスの魅力です。2018年のランボルギーニに過去最高の利益をもたらした理由もよく分かります。
試乗車にはさまざまなオプションが付いていたので、消費税込みで約3300万円というプライスが付いていましたが、ベース車は消費税込みで約2800万円からとなっています。AWDのウラカンであれば消費税込みで約3000万円からですから、ウルスはバリュープライスといっても過言ではないでしょう。
「ランボルギーニには乗りたいけど、普通に使えないクルマでは困る」このように思っている方が居たら、迷わずウルスを購入してしまって大丈夫です。 【了】
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