人と車の新しい関わり方を提案するコンセプトモデルをバリエーション豊かに展示している。
初日のプレスカンファレンスで豊田章男社長が「このブースには、来年発売される車はひとつもありません」と話したように、とにかく未来的な内容である。
▼豊田社長によるプレスカンファレンスの模様
Ultra-Compact BEV
トヨタは東京モーターショーの「FUTURE EXPO」に、2台の超小型EVを出展。今回初めて公開される2020年冬頃の発売を目指したパーソナル向けコンセプトモデル(写真上)と、もう1台は一昨年6月7日に発表されたビジネス向けコンセプトモデル(写真下)だ。
パーソナル向け超小型EVは、免許を取りたての人や高齢者が、買い物など日常の近距離移動で使うことを想定して開発。
小回りが利き、1回の充電で約100kmの走行が可能という特徴がある。巡回訪問のような業務用途も想定しているという。
開発責任者の谷中壮弘(やなかあきひろ)氏は、「これから増えていく高齢の方々の様々なシーンで、移動の自由を提供し続け、豊かで活き活きとした生活を支えるモビリティをつくりたい。そして消費エネルギーやスペース、騒音など、周囲への負荷が小さい次世代のモビリティの広がりによって、より良い社会に向けお役に立ちたい」と語っている。
これらコンセプトモデル以外に、有明エリアと青海エリアを結ぶシンボルロード「OPEN ROAD」では、「歩行領域EV(立ち乗りタイプ/座り乗りタイプ/車いす連結タイプ)」「TOYOTA i-ROAD」の試乗も可能。今後のEV全盛時代を見越した、様々なEVを提案している。
トヨタは中国を皮切りとして2020年にEVを本格投入、以降、グローバルに車種を増やしながら、2020年代の前半には10車種以上にする……という計画を発表している。
LQ
「LQ」は人に寄り添う新しいテクノロジーを搭載し、「新しい時代の愛車」を具現化したコンセプトモデル。米国で人工知能や自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行う、Toyota Research Instituteと共同開発したAIエージェントや自動運転機能を搭載している。
“Learn, Grow, Love”をテーマとし、ドライバー一人一人の嗜好や状態に合わせた移動体験の提供を通じ、時間とともにより愛着が感じられるモビリティを目指して開発された。「LQ」という車名は、新しい時代の愛車(Beloved Car)を提案するきっかけ(Q/Cue)になれば、との思いが込められている。
搭載されるAIエージェント「YUI」は、モビリティエキスパートとしてドライバーに寄り添い、特別な移動体験を提供することを目的に開発。
ドライバーの表情や動作から感情や眠気などの状態を推定し、会話を中心としたコミュニケーションに加えて、覚醒・リラックス誘導機能付きシート・音楽・車内イルミネーション・空調・フレグランスなどの各種HMI(Human Machine Interface)を用いて働きかける。
また、シーンや嗜好に応じた音楽の選曲・再生や、興味のある話題や施設情報を提供することで移動自体を楽しむことをサポートする。トヨタ社内だけでなく、JTBやAWA、NTTドコモなどのエンジニアが協力して開発してきた。
「LQ」にはSAEレベル4相当(完全自動化直前の段階で、通常の状況下では人間が運転に全く責任をもたないレベル)の高度な自動運転機能も搭載。乗降場で車を止めると自動的に駐車場内を移動、駐車してくれる「無人自動バレーパーキングシステム」を備えるなど、既存の自動運転とは一線を画す内容となっている。
驚かされるのは、これらの先進的機能をもつ「LQ」が遠い将来の実現を目指した、単なるコンセプトモデルではないこと。2020年6月~9月には実際の公道(東京都 MEGAWEBおよびお台場・豊洲周辺)で一般参加者を乗せ、LQが走る移動体験イベントが予定されている。
MIRAI Concept
2014年、世界初のセダン型燃料電池車MIRAIを発売し、世界に先駆けたFCV開発を行ってきたトヨタ。今回展示される「MIRAI Concept」は、2020年末の発売に向けた次期「MIRAI」の開発最終段階のモデルだ。
FCシステムを一新することで、燃料電池自動車としての性能を大幅に向上。水素搭載量拡大などにより、航続距離を従来型比で約30%延長することを目標に開発が進められているという。
外観ではTNGAプラットフォームの採用により、低重心で伸びやかなプロポーションを実現。さらに20インチの大径タイヤ採用でダイナミックさと軽快感を演出した。
インテリアはドライバーを包み込むようなインストルメントパネルと12.3インチのワイドモニターを取り込んだセンタークラスターを採用。“運転する楽しさ”と“先進のくつろぎ感”を併せ持つシンプル&モダンで温かみある空間が追求されている。また、居住性を向上させ、5人乗りが実現した。
乗り心地や加速性能、ハンドリングなども大きく改善され、今までのガソリン車にない走行フィーリングを目指して現在開発中。市販化が楽しみな1台だ。
e-Palette(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)
まるで未来のコンセプトバスのようだが、さにあらず。こちらは来年開催される東京2020オリンピック・パラリンピックで実際に使用される車。昨年1月に発表された「e-Palette Concept」の量産バージョンだ。
トヨタ初のAutono-MaaS(トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語)専用EVとして東京2020大会に十数台提供され、選手村内を巡回するバスとして選手や大会関係者の移動をサポートするという。
パッケージ面では前後対称の箱型デザインを採用し、タイヤを四隅に配置することで、広い室内空間を確保。大開口スライドドア、低床フロア、電動スロープ、停留所への正着制御など、車椅子ユーザーもスムーズに乗降できる機能を実現。
さらに、身長に関係なく使いやすい手すりやシート、色弱者の方にも配慮した色合いの床・内装トリム・シートなど、“Mobility for All”の体現を目指している。
トヨタの車両制御プラットフォームに専用開発の自動運転システムを搭載し、低速自動運転を実現(SAEレベル4相当)。今回の東京モーターショーでは展示のみだが、走る姿を見られる日はもうすぐだ。
見どころは他のブースにも
今回トヨタは、会場全体を縦横無尽に使い、コンセプトモデルから市販目前車まで多数の車を展示している。
数多くのEVやFCVが展示され、一部の市販車両は試乗も可能。まさに未来を体感できる「モビリティのテーマパーク」だ。
メガウェブも展示会場のひとつで、そちらにはより近い未来を想定したコンセプトモデルが展示されている。
ちなみに、話題の新型ヤリスはヴィーナスフォートの2階無料エリアに。高級フルサイズワゴンのグランエースは、青海Bホールのトヨタ車体ブースに展示されているので、お見逃しなく。
文/田端邦彦、写真/篠原晃一
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