■一世を風靡したクロカン四駆を振り返る
2020年7月27日に、三菱は新中期経営計画を発表しました。そのなかには「パジェロ/デリカD:5/アウトランダー」などの製造をおこなう、パジェロ製造株式会社の生産停止が含まれています。
これによって、2021年中には売れ筋であるデリカD:5とアウトランダーの生産を岡崎工場へ移管するとともに、パジェロの生産が完全に終了することになります。
すでに国内向けのパジェロは2019年8月に生産を終えていますが、今回、新中期経営計画の元、海外向けも生産を終了し、1982年から続く長い歴史に幕を閉じます。
1990年代の初頭、若い世代を中心にスキーなどのアウトドアレジャーが人気となり、クロスカントリー4WD車爆発的に売れた「RVブーム」が起きました。
そのRVブームをけん引していた代表的な車種が2代目パジェロで、同時期に各メーカーもクロスカントリー4WD車を数多くラインナップしていました。
そこで、RVブームの頃に隆盛を誇ったクロスカントリー4WD車を、5車種ピックアップして紹介します。
●三菱「パジェロ」
三菱初代「パジェロ」は、「ジープ」に匹敵する高い悪路走破性を発揮しつつ、乗用車に近い使い勝手の良さから、新時代のクロスカントリー4WD車として高く評価されました。
しかし、発売当初は小型貨物登録車のみしかラインナップされなかったことから、本格的なクロスカントリー4WDを必要とするユーザー以外には受け入れられませんでした。
その後乗用登録車の追加をはじめ、3列シート車などバリエーションが増え、世の中ではスキーブームが起こり、徐々にパジェロの人気が高まります。
そして1991年、悪路走破性をそのままに走行性能や快適性、安全性を大きく向上させた2代目パジェロが登場。
ボディバリエーションも、後席がオープントップとなる「Jトップ」、3ドアショートタイプの「メタルトップ」、5ドアロングタイプでラグジュアリー性を兼ね備えた「ミッドルーフ」、後席がハイルーフとなる「キックアップルーフ」が設定され、5ナンバーのレギュラーサイズと3ナンバーのワイドボディをラインナップ。
エンジンもガソリンとディーゼルで複数のバリエーションが設定されるなど、あらゆるニーズに応えたところ大ヒットし、前述のとおりRVブームをけん引する存在となりました。
●トヨタ「ランドクルーザー」
トヨタ「ランドクルーザー」は悪路走破性と信頼性の高さから、世界中で絶大な評価を得ている日本を代表するクロスカントリー4WD車です。
なかでも現行モデルで最上級クラスの200系は、砂漠も走れるラグジュアリーカーとして、「キングオブオフロード」の称号で呼ばれています。
そのランドクルーザー200系の先祖である80系が、RVブームのころに人気となっていたモデルです。
1989年に登場したランドクルーザー80系は、5ドアのステーションワゴンタイプのボディで、3列シートの乗用車と、2列シートの商用バンをラインナップ。
パワートレーンは年式、グレードで異なりますが、4リッターと4.5リッター直列6気筒ガソリンエンジンと、4.2リッター直列6気筒ディーゼルを設定。
トランスミッションは4速ATもしくは5速MTが組み合わされ、駆動方式はフルタイム4WDとし、当時はまだ駆動系の制御は電子化が進んでおらず、悪路ではドライバーの腕次第だった最後のモデルです。
なお、ランドクルーザー80系は、北米でレクサス初代「LX」として販売されました。
●日産「サファリ」
日産は1980年に、ランドクルーザーに対抗すべく大型のクロスカントリー4WD車「サファリ」を発売しました。1987年には2代目が登場し、RVブームが到来すると人気が急上昇します。
ラインナップは2ドアのショートボディと、4ドアのロングボディがあり、初期は商用バンのみの設定でしたが、後に乗用車のワゴンが追加されます。
エンジンは4.2リッター直列6気筒のディーゼルとガソリンを搭載し、後に2.8リッターディーゼルが追加。トランスミッションは4速ATと5速MTが選べました。
丸みをおびてスマートな印象のランドクルーザー80系に対し、サファリは直線基調の無骨なデザインでしたが、その無骨さが本格的なクロスカントリー車にふさわしいと支持され、ファンを獲得。
サファリは1997年にフルモデルチェンジをおこない3代目となりましたが、RVブームは沈静化しており、このモデルをもって日本での販売を終了しました。
■ハンドリングにもこだわったクロカン四駆とは!?
●いすゞ「ビッグホーン」
いすゞは2002年に、国内市場向け乗用車の生産から撤退してしまいましたが、かつてはスポーティなモデルやクロスカントリー4WD車を、数多くラインナップしていました。
そのなかの1台が1981年に発売された「ロデオビッグホーン」です。
ロデオビッグホーンは、ピックアップトラックのラダーフレームにステーションワゴンタイプのボディを架装することで製作され、当初は商用バンのみでしたが、後に乗用ワゴンを追加。
そして、1991年に車名を「ビッグホーン」に改めた2代目が登場し、ショートボディとロングボディが設定され、全車乗用車登録となりました。
当初、エンジンは3.1リッター直列4気筒ディーゼルや3リッターV型6気筒ガソリンを搭載し、トランスミッションは4速ATと5速MTを設定。
また、他のクロスカントリー車には無かったビッグホーンならではの特徴として、イギリスのスポーツカーメーカーのロータスが監修した「ビッグホーン ハンドリグバイロタース」と、ドイツのチューニングメーカーのイルムシャーが監修した「ビッグホーン イルムシャー」という、スポーティグレードがラインナップされていたことが挙げられます。
高い悪路走破性を発揮しつつも、オンロードの走行性能も高められ、この「ダブルネーム」シリーズは人気を獲得。
その後、ビッグホーンはホンダやスバルにもOEM供給されるなど販売を拡大しましたが、RVブームの終焉とともに販売は低迷。2002年に生産を終了し、同年末にはいすゞは乗用車の販売から完全撤退しました。
●マツダ「プロシードマービー」
現在、マツダのSUVラインナップは「CX」シリーズが展開されており、高い人気を誇っていますが、かつてRVブームの頃は、クロスカントリー4WD車を販売していました。その代表的な車種が1991年に発売された「プロシードマービー」です。
プロシードマービーはクロスカントリー4WD車では定石だった、ピックアップトラック「プロシード」のシャシに、ステーションワゴンタイプのボディを載せる手法で開発され、特徴的だったのが3000mmというロングホイールベースによる広い室内と、価格が220万円台からと比較的安価に設定されていたことです。
搭載されたエンジンは2.6リッター直列4気筒ガソリンと2.5リッター直列4気筒ディーゼルの2種類で、トランスミッションは4速ATと5速MTを設定。駆動方式は、全車パートタイム4WDです。
足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン、リアがリジッドアクスルで、耐久性や強度が高く、クロスカントリー4WD車に最適な形式となっています。
プロシードマービーは一定の人気はあったものの、同クラスのトヨタ「ハイラックスサーフ」や日産「テラノ」ほどのヒット作にはならず、1999年に販売は終了となり、後継車はありませんでした。
※ ※ ※
パジェロの歴史が終わるということはファンにとっては寂しいことですが、三菱の新中期経営計画によると2023年中には、新型SUVが出ることも発表されています。
あくまでもASEAN向け商品の強化であり、日本での展開は未定ですが、しっかりとクロスカントリー4WD車も含まれているようです。
約40年続いたパジェロの系譜は途絶えることになりますが、ジープから続くDNAはこの先も受け継がれていきます。
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みんなのコメント
アウトランダー、エクリプスクロス、RVRなどSUV激戦地帯に投入するも力が足りず埋没気味となっている。唯一デリカD5で気を吐くが、これとてFMCする資金が足りずビッグマイナーで延命と、かなり深刻。他のメーカーにはないカテゴリーのクルマでニッチ戦略をとった方がいいのは、デリカD5が証明している気がするのだが。
三菱から歴史有る車名も消えて残るはミラージュ、デリカ、RVRのみになり、セダンは既に
絶滅して魅力の無いメーカーになってしまった。