現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > それは、電動化された魂──開発担当が語るタイカンに刻まれたポルシェのDNA

ここから本文です

それは、電動化された魂──開発担当が語るタイカンに刻まれたポルシェのDNA

掲載 更新
それは、電動化された魂──開発担当が語るタイカンに刻まれたポルシェのDNA

ポルシェは9月4日、初の100%バッテリーEV(BEV)、タイカンのワールドプレミアを、欧州、北米、中国の世界3か所で同時刻に行った。ドイツではベルリン近郊のノイハルデンベルクの太陽光発電所、北米では米国ニューヨーク州とカナダ・オンタリオ州の国境にあるナイアガラの滝近くの水力発電所、中国では福建省福州市から約150km離れた平潭にある風力発電所と、ポルシェにとって主要なマーケットであり、かつ自然エネルギーで電力を賄う象徴的な場所を選んでのプレゼンテーションだった。

ポルシェが最初にタイカンに設定するグレードはターボとターボSの2種類。2020年までには派生モデルとしてクロスツーリスモの導入も予定している。写真のターボは最高出力680psを誇り、0-100km/h加速は3.2秒中国でのワールドプレミアに登壇したポルシェAG研究開発担当役員のミヒャエル・シュタイナー氏は冒頭でこのように述べた。

425ccにできること! 齢58歳の2CVでパリからシトロエン100周年イベントへ(前篇)

エクステリアデザインは当然ポルシェのDNAを色濃く反映したものとしており、曲線やシャープさが強調されており、空力的にも高効率を追求した。「ポルシェは常にかわり続けることによってのみ、ポルシェたり得た。今日は世界に対して、変化とはどういうものなのかを具体的にお見せしたいと思います。われわれの伝統をイノベーションによって未来へとつなげていく、すべてのポルシェには魂があるのです。エンジニアをはじめ従業員、お客様、そしてレースのヒーローであるポルシェのレーシングドライバーたちがその魂をカタチづくっている。タイカンはそれを再定義するものです。「Soul, electrified.」(それは、電動化された魂。)。ポルシェはエモーショナルな内燃機関を作り続ける一方で、プラグインハイブリッドですでに成功を収めています。そしてこのピュアEVを3つめの柱として構築していく。ポルシェは電動化に60億ユーロを投資し、2025年までにポルシェの販売台数の半分を電動化することを予見しています」

写真左がターボS、右がターボDelia Baumこのワールドプレミアイベントの数時間前、シュタイナー氏にインタビューする貴重な機会を与えられた。

ドライバー中心に設計したインテリアは、タイカンのために新たにデザインしたもの。センターコンソールには10.9インチのインフォテインメントディスプレイを配置し、オプションで助手席にディスプレイを設置できる。ポルシェらしさは、BEVであっても同じポルシェは918スパイダーをはじめ、カイエンやパナメーラにいち早くプラグインハイブリッドを採用してきた。実は電動化に対して先進的なメーカーだ。

「近年、われわれが電動化に対して関心もったきっかけはモータースポーツ、ル・マン24時間レースの919のレースカーでした。4気筒の軽量なエンジンに電動化を組み合わせたものでしたが、パフォーマンスもよく、様々な面でアドバンテージがあることがわかりました。800Vの技術はこのときに培ったものです。それが今回、タイカンの量産車に活かされています」

ボタン類を極力排し、タッチ操作やボイスコントロールで直感的に操作できるようになっている今年はジャガーIペイスを皮切りに、アウディe-tron、メルセデス・ベンツEQCなど、日本市場にはプレミアムEVが続々と投入されている。しかし、いずれもスペースの問題をクリアしやすく、市場での人気も高いSUVばかりだ。なぜポルシェはあえて4ドアサルーンからBEVをはじめるのか?

「我々は、過去のヒストリーをみればわかるように、911をはじめとするスポーツカーメーカーなのです。もちろんSUV であれば開発はもっと簡単だったかもしれません。しかし、楽な選択肢をとることはありません。何がポルシェらしいのか。BEVであっても、それを提示する必要があるのです」

タイカンのひとつのキーワードとなっているのがサステナビリティ。その特徴として、インテリアにはレザー素材を一切使用しておらず、リサイクル素材を使用している近年VWグループは、プラットフォームの共用化を推し進めている。それはBEVでも同じだ。アウディはタイカンのプラットフォームを使って、スポーツモデルのGTを作ると発表した。BEVは内燃機関モデル以上に差別化が難しいのではないかと想像される。

「たしかにアウディはタイカンのプラットフォームをつかって、クルマを作ることを決定しました。しかし、これまでも、プラットフォームを共用しても差別化はできてきたと考えているし、今後もデザインだけでなくパフォーマンスも含めて明確な違いを生み出し、典型的なポルシェらしさを実現できると信じています。すべてのディテールをシェアするわけではありませんし、シャシー、加速、ハンドリング、ブレーキングといった圧倒的なパフォーマンスによる典型的なポルシェエクスペリエンスは、電動化しようとも変わることはありません」

走行モードは、従来のポルシェ車と同じ「レンジ」、「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「インディビジュアル」を利用できるDelia Baumバッテリーエレクトロニックヴィークルスポーツカー可能性ポルシェのこだわりの1つとして、一般的なBEVでは要望のある、回生ブレーキを強くしたワンペダルフィーリングをあえて設定していないという。

「ワンペダルに対する需要が市場にあることはもちろん理解しているし、ポルシェとしてこの技術を使うべきかどうかの議論はしました。しかし、速いスピードで走るレースドライバーの視点までを考慮して検討したときに、満充電でも、充電が残り少ない状態でも一貫したペダルの操作性、ブレーキのフィーリングを得られるかどうか。ペダルからしっかりとフィードバックがあって、ドライバーは安心してブレーキを操作でき、必要に応じてさらに踏み込むことができる。われわれが考えるブレーキとはそういうものでなければなりません。ペダル1つでの加減速には、精緻さが感じられない。ポルシェはパフォーマンスオリエンテッドであり、メインでコントロールするのは、やはりドライバーであるべきだと考えています」

Delia Baum以前より911の電動化なども噂にはなるが、実際にはあのコンパクトなボディで実用性を備えたBEVをつくるのは難しいとされている。最後に2ドアBEVのスポーツカーの可能性について尋ねてみた。

「スポーツカーの性能のとって最大の敵は重さです。2ドアBEVのスポーツカーを作るにあたっては、718(ボクスター)の電動化も含めてすでに何年も開発を続けています。バッテリーのエネルギー密度は高まってきているし、その他の要素も進化している。BEVのスポーツカーが出るのは時間の問題であると考えています。どの程度電動化していくのか、どのタイミングが適切なのかをこれから見極めて行く必要があります。そして、そういったクルマが出たときに、車名が911のままでいいのかということも考えなければいけません。いずれにせよ、スポーツカーの電動化には可能性があると思っています」

Delia Baumワールドプレミアに先駆け、助手席ながらプロトタイプのタイカンに同乗する機会があった。0-100km/h加速3秒を切るその速さは、まさに異次元。これまで乗ったすべてのBEV中でもっとも重心が低くスポーティだと言える。テストドライバーの腕にかかればESPをオフにしてのドリフトも自在だった。しかも普通ならスピンしてしまうようなスリップアングルを維持しながら、旋回していく。果たして自らステアリングを握ったときに、どれだけポルシェらしさを感じることができるのか。大いに楽しみだ。

文・藤野太一 編集・iconic

こんな記事も読まれています

新型「セダン」2台×「SUV」2台 日産がコンセプト4車種相次ぎ発表 北京モーターショー
新型「セダン」2台×「SUV」2台 日産がコンセプト4車種相次ぎ発表 北京モーターショー
乗りものニュース
日産、北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカー4車種を公開
日産、北京モーターショー2024で新エネルギー車のコンセプトカー4車種を公開
レスポンス
【ホンダ】バイクミーティングイベント「HondaGO BIKE MEETING 2024」をモビリティリゾートもてぎで6/2に開催!
【ホンダ】バイクミーティングイベント「HondaGO BIKE MEETING 2024」をモビリティリゾートもてぎで6/2に開催!
バイクブロス
ガガガガ、ズサーッ 島内最長トンネル貫通の瞬間 2年遅れも洲本バイパス全通へ向け
ガガガガ、ズサーッ 島内最長トンネル貫通の瞬間 2年遅れも洲本バイパス全通へ向け
乗りものニュース
メルセデスベンツ GLCクーペ、PHEVモデルを追加…EV走行距離118km
メルセデスベンツ GLCクーペ、PHEVモデルを追加…EV走行距離118km
レスポンス
新しくもどこか懐かしい? 「愉しむためのBEV、時代が変わる予感」 ヒョンデ・アイオニック5N
新しくもどこか懐かしい? 「愉しむためのBEV、時代が変わる予感」 ヒョンデ・アイオニック5N
AUTOCAR JAPAN
フェルスタッペン陣営との交渉を仄めかすメルセデスF1に対し、レッドブル代表は不満「チームのことに時間を費やすべき」
フェルスタッペン陣営との交渉を仄めかすメルセデスF1に対し、レッドブル代表は不満「チームのことに時間を費やすべき」
AUTOSPORT web
ポルシェ964型「911」が2億円オーバー!!「シンガー」が手掛けたレストモッドは「911カレラRS 2.7」のオマージュでした
ポルシェ964型「911」が2億円オーバー!!「シンガー」が手掛けたレストモッドは「911カレラRS 2.7」のオマージュでした
Auto Messe Web
ホンダ オデッセイ【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
ホンダ オデッセイ【1分で読める国産車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
GAERNE/ガエルネのオフロードブーツ「Gアドベンチャー」がジャペックスから発売!
GAERNE/ガエルネのオフロードブーツ「Gアドベンチャー」がジャペックスから発売!
バイクブロス
アジアン・ル・マン・シリーズの2024/25年カレンダーが発表。3カ国で計6レースを開催へ
アジアン・ル・マン・シリーズの2024/25年カレンダーが発表。3カ国で計6レースを開催へ
AUTOSPORT web
悪天候のNZ初開催地で地元の英雄ハイムガートナーが初勝利。ブラウンも僚友を撃破/RSC第3戦
悪天候のNZ初開催地で地元の英雄ハイムガートナーが初勝利。ブラウンも僚友を撃破/RSC第3戦
AUTOSPORT web
メルセデスF1、2026年のフェルスタッペン獲得を計画か。マネージメント陣との交渉を示唆
メルセデスF1、2026年のフェルスタッペン獲得を計画か。マネージメント陣との交渉を示唆
AUTOSPORT web
アプリ売りのオジさん彷徨記 Vol.34 お宝発見ツアーIN群馬編 Part3
アプリ売りのオジさん彷徨記 Vol.34 お宝発見ツアーIN群馬編 Part3
AutoBild Japan
キジマからレブル 250/S/500(’17~)用の「リーチタイプシート プレーン」が発売!
キジマからレブル 250/S/500(’17~)用の「リーチタイプシート プレーン」が発売!
バイクブロス
日本展開もイイんじゃない? 三菱欧州向けコンパクトSUV「ASX」デザイン変更 MTもDCTグレードも
日本展開もイイんじゃない? 三菱欧州向けコンパクトSUV「ASX」デザイン変更 MTもDCTグレードも
AUTOCAR JAPAN
トーヨータイヤが耐摩耗性能と低燃費性能を両立した小型トラック用リブタイヤ「DELVEX M135」を発売
トーヨータイヤが耐摩耗性能と低燃費性能を両立した小型トラック用リブタイヤ「DELVEX M135」を発売
レスポンス
F1、24時間年中無休の“無料”ストリーミングチャンネルをアメリカで設置。過去レースやドキュメンタリーも放送
F1、24時間年中無休の“無料”ストリーミングチャンネルをアメリカで設置。過去レースやドキュメンタリーも放送
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1370.03132.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

799.02680.0万円

中古車を検索
タイカンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1370.03132.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

799.02680.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村