現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 日産が発表した熱効率50%の究極エンジンが話題。いったいどうやって実現したのか?

ここから本文です

日産が発表した熱効率50%の究極エンジンが話題。いったいどうやって実現したのか?

掲載 更新 176
日産が発表した熱効率50%の究極エンジンが話題。いったいどうやって実現したのか?

最大熱効率50%はエンジンの世界では革命に近い

世界的な電動化ムーブメントの中、エンジン(内燃機関)の進化も止まってしまったような雰囲気も感じますが、現実的にはまだまだエンジンに頑張ってもらわなくてはいけません。そんな中、日産自動車が『次世代「e-POWER」発電専用エンジンで世界最高レベルの熱効率50%を実現』という発表を行ないました。

実験室レベルを除くと、ガソリンエンジンの最大熱効率は40%程度といわれています。たとえば、「トヨタ カムリ ハイブリッド」に搭載している2.5Lエンジンの最大熱効率は41%、「スバル レヴォーグ」の1.8Lターボエンジンの最大熱効率が40%超といったあたりが量産車におけるトップランナーとなっています。

ちなみに、マツダのSKYACTIV-Xの最大熱効率は公開されていませんが、45%には届かないといわれています。このように、わずか1%上げることに血道をあげているのが最大熱効率の世界ですから、日産が発表した50%という数字は非常にインパクトが大きいわけです。

第1の鍵は点火ギリギリまで渦を保持するSTARC

では、どのようなテクノロジーによって最大熱効率50%を実現したのでしょうか。

まず理論熱効率を上げることが大前提です。専門用語でいえば、「圧縮比」と「比熱比」を上げることが重要なのですが、具体的には前者は“確実に急速燃焼”させること、後者は“燃料が薄い状態で安定して燃焼させること(リーン燃焼)”が目的となります。

そこで日産が採用したのが「STARC(スターク)」という新燃焼コンセプト。これは吸気の際にシリンダー内で発生するタンブル流という渦(うず)を、点火ギリギリまで崩れないように保持する技術で、リーン燃焼においても安定した強い燃焼が可能になるといいます。

エンジン負荷を減らせるe-POWERがSTARCを可能にした

ピストンが超高速で上下するシリンダーの中央に、常に渦を維持するという緻密な制御が求められるSTARCは、日産のシリーズハイブリッドシステム「e-POWER(イーパワー)」との組み合わせを前提に成立する技術でもあります。e-POWERはエンジンが発電に徹して駆動はモーターで行なうパワートレイン。エンジンでタイヤを駆動する場合、トランスミッションを介したとしても、低速から高速までカバーするための“柔軟性”が必要ですが、e-POWERならエンジンは負荷の少ないゾーンで発電に専念できるからです。

STARC燃焼を採用したエンジンは、リーン燃焼で最大熱効率が46%に到達。しかも、実験室の単気筒エンジンだけでなく多気筒エンジンでも実証済みということで、量産ガソリンエンジン初の最大熱効率45%を超えるユニットが登場する日はかなり近そうです。

進化版e-POWERは発電専用エンジンが完全定点運転する

しかし、それでも最大熱効率46%から目標である50%までは、まだ4%も残っています。エンジン熱効率の歴史を振り返ると、ここでの4%を埋めるには、まだ10年以上がかかると考えたくなりますが、ここで日産はe-POWERをさらに進化させることで最大熱効率50%を実現しました。

エンジンが発電に専念してモーターで駆動するe-POWERを突き詰めると、エンジンは最大熱効率のピンポイントで回れば問題ないことになります。つまり、発電用に“完全定点運転”とすれば+2%の伸びが期待でき、さらに排熱回収を組み合わせることで最後の+2%を埋め、トータルで最大熱効率50%を達成できるというのが日産の主張なのです。

最大熱効率50%のエンジンを積んだe-POWERのCO2排出量はLCA(ライフサイクルアセスメント)で計算すると電気自動車と同等レベルになるといいます。

電気自動車のLCAは発電のエネルギー比率によって変化するのでCO2低減のポテンシャル自体は電気自動車が有利ですが、電気自動車が普及するまでのつなぎの役割として最大熱効率50%のエンジンを用いたe-POWERというのは有効というのが、日産の考える現時点での電動化時代に向けたロードマップというわけです。

文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)

こんな記事も読まれています

グランプリのうわさ話:ニューウェイ、“感情的な相違”でアストンマーティンからの巨額オファーを拒否か
グランプリのうわさ話:ニューウェイ、“感情的な相違”でアストンマーティンからの巨額オファーを拒否か
AUTOSPORT web
純正のほぼ半値! 高額なトヨタ「GRヤリス」純正ローターに代わる高性能1ピースローターが登場! 魅力的なパッドも充実しています
純正のほぼ半値! 高額なトヨタ「GRヤリス」純正ローターに代わる高性能1ピースローターが登場! 魅力的なパッドも充実しています
Auto Messe Web
目の肥えた人に刺さる「縦目」 メルセデス・ベンツW108/W109型 UK版中古車ガイド(1) Sクラスのご先祖
目の肥えた人に刺さる「縦目」 メルセデス・ベンツW108/W109型 UK版中古車ガイド(1) Sクラスのご先祖
AUTOCAR JAPAN
メルセデス・ベンツW108/W109型 殆どの部品は入手できる! UK版中古車ガイド(2) 複雑なサス故障にご注意
メルセデス・ベンツW108/W109型 殆どの部品は入手できる! UK版中古車ガイド(2) 複雑なサス故障にご注意
AUTOCAR JAPAN
働くクルマ「作業中エンジンつけっぱなし」問題に終止符? EV化いよいよ加速か 三菱ふそう&架装メーカーも準備OK!
働くクルマ「作業中エンジンつけっぱなし」問題に終止符? EV化いよいよ加速か 三菱ふそう&架装メーカーも準備OK!
乗りものニュース
ホンダ EV充電環境をワンストップで提供 新型「N-VAN e:」予約スタートに先立ち
ホンダ EV充電環境をワンストップで提供 新型「N-VAN e:」予約スタートに先立ち
グーネット
オトナの体験楽しむ「三浦ランデブー2024」開催 激レアスーパーカーも集結【動画あり】
オトナの体験楽しむ「三浦ランデブー2024」開催 激レアスーパーカーも集結【動画あり】
グーネット
スーパーカーも静寂への一歩を踏み出す。余計な音を削減する驚きの効果を体感
スーパーカーも静寂への一歩を踏み出す。余計な音を削減する驚きの効果を体感
レスポンス
大型トラックの「タイヤの数」と「位置」に注目すると面白さ倍増! いまの流行は「運転しづらい」4軸低床だった
大型トラックの「タイヤの数」と「位置」に注目すると面白さ倍増! いまの流行は「運転しづらい」4軸低床だった
WEB CARTOP
ハイソカーふたたび──新型トヨタ アルファード試乗記
ハイソカーふたたび──新型トヨタ アルファード試乗記
GQ JAPAN
話題の「サイバートラック」が展示!「モデルY」にも試乗いただけます! テスラ出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
話題の「サイバートラック」が展示!「モデルY」にも試乗いただけます! テスラ出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
LE VOLANT CARSMEET WEB
1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選 Vol.3
1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選 Vol.3
GQ JAPAN
2台でペナルティ3回。乱戦を6&7位で終えたトヨタ「ポルシェとフェラーリは明らかに我々より速かった」/WECスパ
2台でペナルティ3回。乱戦を6&7位で終えたトヨタ「ポルシェとフェラーリは明らかに我々より速かった」/WECスパ
AUTOSPORT web
ロードコースは譲らない。王者アレックス・パロウが圧巻のポール・トゥ・ウイン/インディカー第4戦
ロードコースは譲らない。王者アレックス・パロウが圧巻のポール・トゥ・ウイン/インディカー第4戦
AUTOSPORT web
道路の真ん中にあるナゾの物体 やたら派手で中身は何? 円柱以外の形もあり
道路の真ん中にあるナゾの物体 やたら派手で中身は何? 円柱以外の形もあり
乗りものニュース
フォードF1責任者、レッドブルとのパワーユニット開発は順調と主張「ただ、ライバルのことは分からない」
フォードF1責任者、レッドブルとのパワーユニット開発は順調と主張「ただ、ライバルのことは分からない」
motorsport.com 日本版
最強「V8エンジン」搭載! 新型「カクカク本格SUV」発表! 豪華内装の“3列シート”モデルも用意の「ディフェンダー」登場
最強「V8エンジン」搭載! 新型「カクカク本格SUV」発表! 豪華内装の“3列シート”モデルも用意の「ディフェンダー」登場
くるまのニュース
4輪のような大排気量エンジンが超パワフル! 「ハーレーダビッドソンのドル箱」公道での走り味は? 長距離はもちろん街乗りも快適です
4輪のような大排気量エンジンが超パワフル! 「ハーレーダビッドソンのドル箱」公道での走り味は? 長距離はもちろん街乗りも快適です
VAGUE

みんなのコメント

176件
  • トヨタ、ホンダ、マツダですら40%で自慢してるのに日産は一気に50%超えですか。
    さすがですね。
  • 最大熱効率41%ながら高速走行にも使用するため常には最大熱効率で使用できないTHSⅡと、高速走行ではモーターの特性で効率が落ちるものの、エンジンは常に最大熱効率の50%で定回転するe powerとで比較した時、トータルではどちらが効率に優れるのでしょうね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村