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【ヒットの法則179】プジョー1007はトレンドセッターとなりうる利便性と独自のスタイルを備えていた

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【ヒットの法則179】プジョー1007はトレンドセッターとなりうる利便性と独自のスタイルを備えていた

2006年2月に日本に上陸したプジョー1007。「従来のカテゴリーにとらわれない新しいコンセプト」という狙いが込められた新しい4桁の車名を持つこのモデルは、次代を担うコンパクトカーと期待されていた。果たしてプジョー1007はその資質を持っていたのか、ユーザーにどのように受け入れられたのか。当時トレンドセッターの代表とされたMINIと比較しながらの、興味深いインプレッションを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年5月号より)

大開口の2枚のドアこそ、1007の最大の見せ場
時代を決定づける1台には、必ずその「予感」がある。もちろん、そのクルマが何か、あるいはその時代がどんな様相かなどによって、その種類は違うとしても、「コレは来るぞ」というものには大抵似た匂いが漂っているものだ。

【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?

それは、まず当然の如く、ポップでアイコニックな存在であること。さらにそれだけでなく、その裏に独創性、他に代わりの効かない本質的な魅力を備えていなければならない。

最近で言えば、MINIがそんなトレンドセッターの代表と言える。偉大な先祖が築いた強力なブランド性を生まれ持つばかりでなく、その遺産を活かした愛嬌のあるスタイリングをまとい、さらにそこにメイド・バイ・BMWならではの図抜けたクオリティや、MINIならではの個性的な走りまで身につけているのだから、それはまさに、なるべくしてなったと言えるだろう。

そして今年、また1台そんな資質を持つモデルが登場した。それがプジョー1007。個性化著しい最近の輸入小型車の中でも、突き抜けたキャラクターを持つ1台である。

何より注目は、左右両側電動スライドドアだ。この1007の元になったのは、2003年のフランクフルトモーターショーに出品されたコンセプトカー「セサミ」。由来は「オープン・セサミ」、そう「開け、ゴマ」である。離れたところからもリモコンキーで開閉可能な、この大開口の2枚のドアこそ、1007の最大の見せ場と言えるだろう。

1007はプロポーションも独特だ。そのボディは全長わずか3730mmに対して、全高は1630mmにもなる。それと2315mmという短いホイールベースが相まって、そのフォルムはさながら実写版チョロQ。しかも顔つきは、大きな吊り目に大開口のグリルを組み合わせた最新のプジョーのそれなのだから、存在感は抜群である。

また、内装トリムやシート生地の着せ替えが可能なオプションのカメレオキットもユニークだ。いわゆる高級というのとは対極だが、そこには確かにワクワク感がある。

その全身から感じるのは、とにかくアヴァンギャルド、前衛的であれという意気込みだ。このあたりはMINIとはまさに対極。いかにもフランス生まれらしくて、とても微笑ましく思えてしまうのだ。

もちろん、斬新だというだけではトレンドを築くことはできない。使い勝手の面でも、スライドドアは隣のクルマに気を遣わず、気楽に乗り降りできるのが嬉しい。着座位置が高いため立った状態からほとんど腰を横にスライドさせるだけで乗り降りできるのも良い。立ち居振る舞いが、とてもスマートになる。

一方、後席の乗降性は一般的なヒンジ式4枚ドアに較べればいまひとつ。ドア自体が重く、電動モーターも強力なため、かなり強い力を加えないと開閉動作を止められないのも気になる。子供やお年寄りを乗せる時には、近くで最後まで見届けるよう心がけた方が良さそうだ。

走りっぷりは想像よりも断然良かった。着座位置は高いが、ことさらにロール感が大きいわけではなく、プジョーらしい反応の良さは健在。乗り心地はむしろ重厚感すら覚えるほどで、快適性は十分と言える。

ただし、ボディの剛性感は高くない。両側に通常のヒンジ式ドア以上の開口部を持つ上に、試乗車はガラスルーフまで備えていたから仕方ないのだが、走行中、不意にドアが開いていると告げるウォーニングランプが点ることがあった。もちろんドアなど開いていない。ボディが捩れているということだろう。

2ペダルMTは、やはり滑らかさでは今一歩。試乗車は1.6だったが、特に1速から2速へのシフトアップは空走時間も長く、助走の短い首都高の合流はヒヤヒヤものだった。スムーズに走らせるには、シフトアップに合わせて一瞬アクセルを抜くというコツを覚えるといい。

この走りは、あえてMINIと較べる意味を感じないほど、向いている方向が異なる。MINIはやはり俊敏性こそが最重要項目であり、使い古された言い方だが、まるでカートのように走る。乗り心地はその分硬めだが、許せてしまうのはそのキャラクター故か。実用性については、MINIは室内もラゲッジスペースも平均値より狭く、その点でも、やはり1007とは比較にならない。

しかし、それでもMINIが支持を集めているのは、そこに明確な割り切りがあるからに違いない。乗り心地は硬いけど走りは俊敏、室内は狭いけれどクオリティは妥協せず、何より見た目はサイコー。MINIのそうした姿勢こそが、人気の何よりの要因だろう。要するに、そこには揺るぎないスタイルがあるのだ。

確かに1007は、MINIよりもはるかに高い利便性を備えているが、その魅力は単に便利だというだけでは括れない。むしろ、MINIと同じくそこに確固たるスタイルがあること。言い換えれば、単に道具として優れるばかりでなく、共にある生活が彩りに満ちたものになりそうな雰囲気を漂わせることこそが、あるいは最初に書いた「予感」に繋がっているような気がする。

そして、それを後押しするのは、やはりMINIと同様に、1007のオーナーとなった人がどんな風に乗りこなすかだろう。そう、1007が次代のトレンドセッターになれるか、それは、この特異な存在感が目に留まったアナタにも掛かっているのである。(文:島下泰久/Motor Magazine 2006年5月号より)



プジョー1007 1.6 (2006年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3730×1710×1630mm
●ホイールベース:2315mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:108ps/5800rpm
●最大トルク:147Nm/4000pm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●車両価格:229万円(2006年当時)

[ アルバム : プジョー1007(2006年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

2件
  • 興味本位で当時試乗してみたけど、ミッションのせいで乗りにくかった事を覚えている。
    エクステリアデザインは悪くなかったんだけどね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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