オリンピックに絡めたイベントなどは行われていない
先日、某所にあるトヨタ系ディーラーを訪れていた時のこと。セールスマンが席を外している間にショールーム内を見渡していて、ふと気がついたことがある。それは、“TOKYO 2020(東京オリンピック&パラリンピック/以下、東京オリンピック)”のエンブレムや公式キャラクターなど、オリンピックに絡めた宣伝ポスターなどの掲示が見当たらないのである。
出せばバカ売れ必至! それでもトヨタが軽自動車を作らないワケ
トヨタはオリンピックパートナー(スポンサー)のなかでも、最上位となる“ワールドワイドオリンピックパートナー”となっている。東京オリンピック開催まであとわずかとなっており、周知も含め、それらしい飾りつけがあってもいいのだが……。
席を外していたセールスマンが戻ってきたので、その旨を聞いてみると「とくにオリンピックに関することは聞いていませんね」とのこと。そして、あくまで私見としながら、「昨年春からの新型コロナウイルス感染拡大以降、店舗へ積極的に集客するということになるので、週末のイベント開催については自粛をしております。その関係もあってオリンピックに絡めたイベントの開催はもちろん、店内装飾なども自粛しているのかもしれませんね」と話してくれた。
トヨタ以外のオリンピックパートナーでは、ショーウインドウにエンブレムや公式キャラクターが大きく貼られたりしているが、それすらないのは気がつくと結構違和感を覚える。「まあ、今回の東京オリンピックはいろいろあるので、距離を置いているのかなあ」などと勝手に納得してしまった。
週末イベント、つまり新型車の発表展示会や試乗会などが開催自粛になっているということは、不特定多数の新車購入希望客を集客しにくくなり、新車ディーラーとしては結構な痛手にも見える。前出セールスマンいわく「そこがトヨタ系ディーラーでは強みになるのです」とのこと。週末にイベントを行い、お客がくるのを待つ、純粋なカウンターセールスだけでなく、すでに各セールスマンが販売したお客のなかで、新車を買いそうなひとへ電話やメールなどで「お店にきませんか」と案内して集客するといったスタイルがいまの新車販売業界での主流とされている。
当然トヨタ系以外のディーラーでもこのようなことは行なっているのだが、トヨタの販売力は圧倒的であり、抱える既納客もかなり多く、しかも他メーカー系ディーラーよりは、トヨタ系ディーラーは得意としているのである。もちろん、フリーでの来店客もいないわけではないが、フリー客かと思い応対すると、愛車の点検のために車両を持ち込んできた、“既納客”ということも多いのであまり効率はよくない。
トヨタはこれから「怒涛のニューモデルラッシュ」となる
しかし、ただ「きませんか」では、お客もなかなか「それじゃ」というわけにはいかない。一番集客しやすいのは、“人寄せパンダ”的な新型車が存在するということになる。「試乗車がご用意できたので、いかがですか」という誘い文句ならば、集客もしやすいというもの。その点トヨタからは2020年を振り返ると、ヤリス、GRヤリス、2代目ミライ、4代目ハリアー、ヤリス クロス、RAV4 PHVなどコロナ禍でもかなり積極的にニューモデルが登場した。セールスマンをバックアップするようなニューモデルラッシュがあったからこそ、コロナ禍となって“トヨタ一強”状態がより顕在化したのではないかとは、前出セールスマン。
そうなると、2021年も暦年(1月~12月)と、事業年度締め(4月から翌年3月)の両方で、トヨタ一強がさらにブラッシュアップされることになりそうだ。それは、すでにさまざまなメディアでも取り上げられているが、これから9月あたりまで、トヨタは怒涛のニューモデルラッシュとなるからだ。
7月19日とされているようだが、新型アクアの発売を皮切りに、8月末には新型ランドクルーザー、さらにはGR86、そして話題のカローラクロスが9月中までにデビュー予定となっているというのである。さらに年末とされているが、ノア系3兄弟(ヴォクシー、エスクァイア ※エスクァイアはなくなるとの情報も)のフルモデルチェンジが予定されている。
また、2022年春にはトヨタブランドのBEV(純電気自動車)もデビュー予定とのこと。BEVは現状では量販はなかなか期待できないが、政府が“2050年カーボンニュートラル宣言”を行ってからは、話題になることは多くなっているので、人寄せパンダには最適である。とくに“トヨタのBEV”は話題性も高いといえよう。
現場のセールスマンからは9月までのニューモデルデビュー予定について、「短期間にこれだけ新型車が出るなんて」と少々困惑する声も聞かれるが、これも他メーカー系ディーラーセールスマンから見れば、“嬉しい悲鳴”にしか聞こえないことだろう。
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みんなのコメント
やっている所もあるが「ちゃんとやれているか?」となると、トヨタの精度の高さが際立つ。
もともと戦後の復興期から販売強化のためにディーラー網の整備、自動車学校の設立などユーザーの創出から囲い込みまで徹底して行ってきたが、それをさらに時代に合わせてブラッシュアップし続けてきた。
他メーカーでここまで徹底して実施しているところはなく、トヨタの牙城を崩すのは容易ではないことがわかる。
あるとすれば、トヨタのラインナップ上、手薄なモデルをぶつけることぐらい。で、成功したモデルもあったが、同じようなモデルがトヨタから出てきておいしいところは全部持っていかれる、そういう事例が多いね。