三菱の歴史あるビッグネームであるパジェロ。2019年7月1日、「2019年9月をもって国内向け仕様の生産を終了」と発表され、現在は国内での販売を終了し、海外専売モデルとなっている。
日産と提携した今でも、古くからの三菱ファン、パジェロファンだけでなく、三菱社内からもパジェロ復活を熱望する社員は多いと聞く。
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そこで、パジェロ復活の青写真はないのか? ベストカースクープ班が三菱関係者からの話を聞きながら、次期パジェロはどうなるのか、徹底解説する。
文/ベストカー編集部
写真/ベストカー編集部
CGイラスト/ベストカー編集部
初出/ベストカー2019年12月26日号
【画像ギャラリー】歴代パジェロ4代37年の変遷
惜しまれつつ2019年9月をもって国内向けモデルの生産を終了
惜しまれつつ37年の歴史に幕を閉じたパジェロ(海外は継続生産中)
パジェロも日本車のなかでレジェンドといっていいビッグネームだろう。パジェロのデビューは1982年のことだから今年で37年ということになる。
初代パジェロは1991年までの9年間、2代目は8年間、3代目は7年間のモデルライフで次期型へとフルモデルチェンジしていった。
特に初代の後半から2代目の時期にかけては「クロカン四駆ブーム」の中心的なモデルとして圧倒的な存在感を誇り、国内での販売台数も一気に伸ばした。
本格的な副変速機を持つ4WDシステムやラダーフレームを持つ強固な車体構造など、悪路走破性の高さはタフなイメージを高め、パリダカでの活躍などと相まって一時代を築き上げた。
時代は下って現行型が登場した2006年には、国内では無骨なクロカンタイプ4WDよりもライトなSUVが主流となっていて、以前のような販売台数ではなくなっていた。
しかし、一定数のファンはいるし、パジェロのような本格的な悪路走破性を必要とするユーザーにとっては、特にショートボディの存在は唯一無二の存在といってもよかった。
一方、三菱自動車自体の燃費不正疑惑や業績不振による経営危機など、時代に対応させる余力がなくなっていたこともまた事実。
2008年に追加された3.2Lディーゼルエンジンは当時のディーゼル排ガス規制に合致させるなど、細かい改良や対応は実施してきたものの、13年間に渡り、フルモデルチェンジには至らなかった。
2017年にはショートボディがカタログから落ち、2019年7月1日、「2019年9月をもって国内向け仕様の生産を終了」と発表されたのはご存じのとおり。現在は国内での販売を終了し、海外専売モデルとなっている。
クロカン四駆も電動化は避けて通れない
三菱にとってパジェロが特別な存在であることはいうまでもない。日産と提携した今でも、三菱社内にパジェロ復活を切望する社員は多いと聞く。
2017年の東京モーターショーに出展しされたe-EVOLUTIONはピュアEVのスポーツSUVという雰囲気
メルセデスベンツが新たに立ち上げたEVブランド、EQCの第一弾はSUV
もちろん開発現場でもそうだし、経営陣にもパジェロのネームバリューを三菱自動車復活の起爆剤にしたいという考えもある。
高い人気を誇るベンツGクラスはレンジローバーと並ぶ世界のクロカン4WDを代表するモデルだ。そのGクラスでさえも、今後の展開として、メルセデスベンツはEVを投入することを明らかにしているし、新たなEVブランドとして立ち上げ、日本でも販売を開始したEQCも第一弾はSUVである。
三菱は電動化には積極的に取り組んでおり、特にアウトランダーPHEVで磨き上げてきた前後2モーターを使った4輪制御技術は一日の長がある。
日産との資本提携によるメリットも大きく、日産がリードするEVリソースの共用化も電動化に大きな弾みをつけることとなる。
例えば前回、2017年の東京モーターショーで提案された「e-EVOLUTION」は次世代の電動化パジェロを起想させる技術的な内容だし、2019年のジュネーブショーでワールドプレミアされ、2019年10月の東京モーターショーにも出展された「エンゲルベルクツアラー」はPHEV技術を活用した現実的なメカとして次世代型パジェロへとつながっていくコンセプトだ。
2019年10月の東京モーターショーで公開されたエンゲルベルグツアラー
有数のスキーリゾートであるスイス中央部にあるスキーリゾートからその名を取ったエンゲルベルクは、リゾート地が似合うオールラウンドクロスオーバーとしてデザインされている。
三菱のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」がフロントの大部分を占め、給電時や充電時にメッキ部分が柔らかく点滅する。
エンゲルベルクは、アウトランダーPHEVで培った三菱独自のツインモーター方式PHEVシステムを進化させた、フロントとリアにモーターを搭載する高出力・高効率のツインモーター方式のフルタイム4WDを搭載。
ランサーエボリューションで磨いた技術を活用し、前輪左右の駆動力配分を制御するヨーコントロール(AYC) を採用。それに加え、四輪のブレーキ制動力、前後モーター出力の制御(ABS&ASC)を統合制御し、走る・曲がる・止まるといった運動性能を高める車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用している。
2.4L、直4エンジンにPHEV専用ガソリンエンジンと、車体フロア下に大容量の駆動用バッテリーを搭載し、WLTP規格でのEV航続距離は70km以上。総航続距離は700km以上となっている。
2019年の東京モーターショーに出展された「MI-TECHコンセプト」はガスタービンを使ったPHEV。前後2つずつのモーターでトルクベクタリング制御を盛り込んだ4WD
本格派クロカン四駆としての伝統とランエボのDNAを受け継ぐ新型パジェロ
電動化されて生まれ変わる新型パジェロはPHEVは早ければ2021年、ピュアEVはその後登場することになる
上の図はアウトランダーPHEVのシステムを表わしたもの。前後に各々モーターを搭載し、緻密な制御で前後トルク配分をする4WD制御技術は三菱が長い時間をかけて積み上げてきた知見によるものだ。こうした技術を活かして次期型パジェロはEV、PHEVといった電動化を取り入れていくこととなる
このエンゲルベルグは次期アウトアンダーPHEVとなる見込みだが、新型パジェロはフラッグシップとしてこのパワートレインをさらに極めていく。
新型パジェロには、リア側にデュアルモーターAYCを盛り込んだトリプルモーター方式を3L、V6スーパーチャージャーエンジンに組み合わせて搭載する。
このパワートレインは、低回転域で強大なトルクを生み出すモーターは細やかなトルク制御にも適しており、この制御技術でリードする三菱にしてみれば、泥濘路や積雪路など、パジェロが必要とされる場面であればあるほど積み上げてきたEV技術を発揮できることになる。
新型パジェロのデビューは早くても2021年。これまで培ってきた「4WDと電動化」のノウハウを盛り込んだ三菱のクルマ作りを盛り込んだPHEVへと大変身することになる。
さらに電動化が本格化する2025年頃に向けて、日産とのアライアンスでエクストレイルがアウトランダーPHEVとデビューした後、ピュアEVのパジェロがデビューするはずだ。しかし、市場規模を見ると茨の道になるのは間違いない。
もはや伝統あるパジェロといえども電動化が避けられない。とはいえ、三菱の財産でもあるランサーエボリューションの制御技術が生かされるはずだから、新型パジェロは、パジェロ+ランエボのDNAを受け継いだ、これまでとは明らかに次元が違う、「EVの本格派クロカンSUV」として帰ってくる。
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