東京都武蔵村山市にオープンした電動モビリティの体験型施設「eモビリティパーク東京多摩」。約100mの試乗コースを持ち、「特定小型原動機付自転車(特定小型)」に分類される電動バイクや電動キックボードの安全講習を実施している。来場者は試乗や動画の視聴を通じて特定小型の安全な乗り方や正しい交通ルールを学べる。どのような内容で、どういった体験ができるのか。記者が実際に体験してみた。
これまでイベントなどで特定小型を試乗したことはある。ただ、それはわずかな距離だったため、今回が初の本格的な運転の機会となった。
キズキ、都内に特定小型など電動モビリティ体験型施設 魅力発信とマナー周知
試乗前には、特定小型を含めた電動モビリティの概要や交通ルールに関する動画を視聴した。安全運転のための要点などがまとまっており、初めて乗る人でも参考になる内容だと感じた。
ヘルメットやプロテクターを装着し、試乗コースに出た。同施設には約20種類の電動モビリティを用意するが、今回試乗に選んだのは、新興企業のグラフィット(鳴海禎造社長、和歌山市)の電動バイク。車両やタイヤのサイズは、クルマにも詰め込める折り畳み自転車と同程度だ。最大の違いはペダルが固定されていること。加速はハンドルバー右側のスロットルで行う。ペダルは漕ぐためのものではなく足置き場だ。
特定小型は歩道を走行できない。ただ、試乗車両は走行モードを「特例特定小型原動機付自転車(特例特定小型)」の仕様に切り替えることで、普通自転車が通行可能な歩道に限って走行できる。時速20km以下で走行する「車道自転車道モード」が特定小型となり、最高時速6km以下で走る「歩道通行モード」が特定特例小型に該当する。
コースはスラローム走行ができる区間のほか、街中で見られる段差や点字ブロックも再現。公道に近い状況で走行することで、安全な速度や運転方法を体験してもらう仕掛けだ。
まず歩道通行モードで走った。速度は歩くよりも少し早い程度だろうか。次に車道自転車道モードを試してみた。試乗前、スタッフから「(車道自転車道モードは)予想以上に加速するので注意を」と助言を受けた。実際、なかなかの加速性能で、同サイズの折り畳み自転車では得難い加速力だ。
一方、記者がスロットルでの加速の調整に慣れていないこともあり、このモードでは狭いスラロームを上手く回るのが難しかった。同じ理由で、段差や点字ブロックを乗り越えた際の反動も予想以上に大きかった。レスポンスのよいモーターならではの加速力を理解することが、電動モビリティの安全運転の第一歩と言えそうだ。
2つのモードを続けて運転すると、特定小型と特例特定小型の違いがよく分かった。歩道を走行できる特例特定小型は、歩く速度とさほど変わらないため、通行人の動きに合わせてブレーキをかけたり、進路を変更したりするのも容易だ。一方、特定小型の加速力は道路で走らせるべき。こういった機能の違いを試すことができるのも体験型施設ならでは。電動モビリティはオンラインショップなどでも気軽に購入できるが、やはり自分で実際に運転してみないとわからないことは少なくない。
特定小型の利用者は増加傾向にある。一方、交通ルールやマナーを守らない利用者の存在が社会問題化している。一連の試乗を通じて、特定小型や特例特定小型について、より理解を深められた。筆者のように、車両の特徴やリスクを街中を走る前に体験しておけば、マナーを守るユーザーが増えると同時に、クルマなどの運転時にも街中を走る電動モビリティの動きにこれまで以上に気を付けるはずだ。
(舩山 知彦)
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