■MT車でも「ぶつからないクルマ」を実現!
スバルは、MT車(マニュアルトランスミッション)向けの運転支援システムとして新たな「アイサイト」(以下、MTアイサイト)を開発し、2023年9月22日に発表された「BRZ」の改良モデル(C型)に搭載することを発表しました。
現在、ほとんどのスバル車(OEM除く)にアイサイトが搭載されているものの、唯一非搭載となっていたのがFRスポーツカーのBRZです。
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正確には、BRZのAT車には2021年の全面刷新時にアイサイトが搭載されたのですが、MT車は非搭載となっており、それが今回の改良において全車へ搭載されることになりました。
アイサイトのプリクラッシュブレーキは、カラーのステレオカメラが対象物を立体的に捉え、先行車両のブレーキランプや歩行者、自転車を認識。システムが衝突する恐れありと判断するとドライバーに対して警告を発し、必要に応じてブレーキ制御をおこなうというものです。
MTアイサイトはBRZのAT車向けのアイサイト(Ver3.)をベースに、プリクラッシュブレーキや追従機能付きクルーズコントロール(ACC)、車線逸脱・ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、後方ソナー警報機能のクリアランスソナーを装備。そのうえで、MT車の運転特性を考慮した制御が加えられました。
現行BRZ(MT車)のオーナーであるくるまのニュース編集部Kがプリクラッシュブレーキ機能を体験。新開発のMTアイサイトの性能はどうだったのでしょうか。
今回は、販売店で実施されるプリクラッシュブレーキ体験とは異なる“特別プログラム”として、約20km/hからの停止を体験することができました。販売店では約10km/hからの停止を試すことができるそうです。
ギアを1速に入れて発進し、すぐに2速へとシフトチェンジすると、車両がグンと加速。前走車を模したパネルへどんどん近づいてきます。
普通だったら衝突を回避するためにブレーキを踏む人が多いかと思いますが、あえてノーブレーキで進んでいくと、「ピピピピ!」という警報音が鳴り響き、パネルの直前で見事に停止しました。
このとき車両はエンスト状態となり、エンストさせてまで確実に車両が停止することが確認できました。なお、ドライバーがブレーキを踏むまで停止が継続され、再発進をするときはエンジンをかけ直す必要があります。
MT車向けのプリクラッシュブレーキ機能は、衝突回避軽減機能としてはAT車と同じですが、クラッチの状態やシフトポジションにかかわらず作動し、車両が停止するまでブレーキ制御が継続するのが特徴とのことです。
※ ※ ※
MT車を好む人は、自らの操作で運転を楽しみたいと思う傾向があり、運転支援システムは不要と考える人も少なくないでしょう。MT車オーナーの筆者も“不要派”だったのですが、実際に体験してみると「万が一のことを考えるとあったほうが良い」と思うようになりました。
なお、サーキット走行などをおこなう機会が多いスポーツカーということで、不要となるシーンではアイサイトの機能を一時的にオフにすることも可能です。
■長時間の運転に負担があるMTこそ運転支援システムが必要
今回はもうひとつのメイン機能であるACCは体験していませんが、機能としてはシフトが2速から6速のいずれかで、かつ車速が30km/h以上のときにセットすることができ、ACC作動中はクラッチやシフトは自由に操作することができます。
また、25km/h以下になると追従機能がキャンセルされ、ドライバー自らが操作をおこなうことになります。
従来のBRZのMT車には、追従機能がない「クルーズコントロール」は搭載されていたのですが、これは設定したスピードで定速走行するものであり、前走車との車間を維持する制御はありませんでした。
それが追従機能付きとなったことで車速の調整までしてくれて、ロングドライブでの安全性能と快適性能が格段に向上することは間違いないでしょう。
MTアイサイトの開発者は次のようにいいます。
「他社のMT車で衝突被害軽減ブレーキが装着されているなか、スバルでも早期の実現を目指していたところ、C型から装着することができました。
25km/h以下ではACCの制御が切れてしまい、MT車で一番大変ともいえるノロノロの渋滞時は使えないのですが、あくまでMT車を運転する楽しみと利便性を両立すると、この形が良いのかなというところです」
※ ※ ※
ユーザーからはMT車へのアイサイト搭載を望む声が多く寄せられており、それが今回実現したことによって先行受注も好調のようです。
スバルは、2030年に死亡交通をゼロにするという目標を掲げるとともに、長時間の運転に負担があるMTだからこそ、運転支援システムの必要性が高いといいます。
また、2025年12月以降は継続生産車(国産車)も衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化されることもあり、BRZのMT車の販売を続けるうえで、MTアイサイトの開発が急務だったこともうかがえます。
なお、BRZの兄弟車であるトヨタ「GR86」のMT車にもアイサイトが搭載されることになりました。
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