テクノロジーと人間の関係を最新アートを通じて探求する『マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート』展が森美術館で開催中だ。アーティストたちは、どのように最新技術と対峙しているのか? 本展のアドバイザーを務めた畠中実が解説する。
最初に出迎えるのは、デジタル世界の中で生きるデジタルな存在
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ゲームのシステムを援用した作品やAIを駆使したアートなど、メディアアートの最先鋭の表現を通して、人間とテクノロジーの関係に言及する展覧会が森美術館にて開催中だ。
会場に入り、最初に出迎えてくれる作品は、ビープル《ヒューマン・ワン》。デジタル作品を毎日制作してインターネットにアップロードする「エブリデイズ」というプロジェクトを2007年に開始し、2021年に発表したNFT作品《エブリデイズ:最初の5000日》が記録的な高値で落札されたことで話題を呼んだ。この作品について、展覧会のアドバイザーを務めたキュレーターの畠中実は、次のように解説する。
「デジタル作品で話題となった作家が等身大の映像として初めてプレゼンテーションしたそうなのですが、『ヒューマン・ワン』は回転する箱状のディスプレイの中を歩き続け、背景や自分自身の姿が移り変わり、デジタル世界の中でデジタルな存在が生きていることが表現された作品です。ある角度に立って作品を見ると、遠近法によって奥まで抜けて背景のパースが綺麗に見えるところがあります。リアルな世界とメタバースがパラレルに重なり合っている印象を受けて、ヴィジュアルとしてもインスタレーションとしても秀逸な作品だという印象を受けました」
デジタルアートの展覧会というと、最先端のテクノロジーに裏打ちされた音やヴィジュアルの体感を想像するかもしれない。しかし、このビープルの作品から、そこに留まらない展覧会であることに期待できる。
立体から映像まで、表現方法はさまざま副題にある通り、AIによる自動生成がどのように行われているのか、あるいは、インターネット以後の「ゲーム的リアリティ」といったものとアーティストがどう対峙しているのか、そうしたことに言及した構成となっている。
「シュウ・ジャウェイの作品では、CGの世界の揺れを表現するインターフェースとしてVRのヘッドマウントディスプレイを秀逸に活用していますし、アドリアン・ビシャル・ロハスやヤコブ・クスク・ステンセンのように、デジタルファブリケーションの造形を用いた作家もいる。デジタルデータで完結せず、立体やテキスト、映像などの形式に関係なくどうアウトプットされるのかという点が、展示全体の重要なアクセントになっています」
AIについても、作家ごとに多様な方法で制作に用いていることが感じられる。「AIが出始めた頃は、映像をトリガーにして学習した画像を描画する」ような作品が多かったが、本展の作品では会話の自動生成や鑑賞者とのインタラクションもAIによって行われている。
アートを介してAIの可能性についてを探究「AIを駆使したアートというと、AIを使っていることを感じさせないような作品と、AIについて論じるためにAIで制作したことを明確に見せる作品という2パターンに分かれます。例えばベルリン出身のディムートは、大規模言語モデル(LLM)を習得したAIキャラクターが受け答えする作品を展示しています。AIだという前提で作品を見ながら、AIなのかそれを超越しているのかわからなくなるような感覚に陥らせる。最近では、いかにAIを騙すかという作品も出てきていますから、アートを介してAIの可能性について探究するパターンが多様化していると感じます」
畠中が過去にキュレーションした展示において協働した、佐藤暸太郎と藤倉麻子という2名の作家の作品もインパクトを放っている。佐藤は、インターネットから収集した写真に映る人や物をアセットデータに置換した写真シリーズ「ダミー・ライフ」を手がけた。また、デジタル映像作品《アウトレット》は、アセットが生きる仮想空間における「物質量」を感じさせ、鑑賞者に迫ってくる強さを持つ。
そして、藤倉麻子が青森県下北半島でのリサーチをもとに手がけた作品が、《インパクト・トラッカー》。原野が点在する土地に再生可能エネルギーの施設と巨大な物流倉庫の建設が進む現実に着想し、資本による採取主義とグローバル・サプライチェーンの影響を受ける大地の姿を映像で表現する。
「たとえばAIのような新しいテクノロジーが出てくると人間不要恐怖症のようなものが立ち上がって、それに対していかに人間性を回復するかという動きが出てくるように、以前から人間はテクノロジーへの対処を繰り返してきました。新たなテクノロジーに私たちは魅了され、そこに耽溺してしまう。でも本来は、テクノロジーは(20世紀の英文学者でメディア研究の先駆者の)マーシャル・マクルーハンに言わせれば、自分の身体の拡張です。それと恋に落ちてしまうということは、自分の身体の拡張としてのテクノロジーに麻痺してしまうことになります。それを、テクノロジーと対面することで突きつけてくれるのが、メディアアートやAIアートと呼ばれるジャンルではないかと考えています」
人類とテクノロジーの関係を辿る文明史にも言及する『マシン・ラブ』展。ゲームやAIなどのキーワードから直感的にアートを楽しみ、それぞれの作品の関係性や類似点などが見えてきたとき、私たち自身がどのようにテクノロジーと関わっていくかを考えさせる刺激的な企画展だ。
『マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート』会場:森美術館
会期:~6月8日
開館時間:10:00~22:00(火曜は17:00まで)
休館日:なし
観覧料:(平日)一般 ¥2,000、高校・大学生 ¥1,400、シニア ¥1,700、中学生以下 無料
※土日・休日は一般 ¥2,200、高校・大学生 ¥1,500、シニア ¥1,900、中学生以下 無料
※オンラインサイトより購入の場合は料金が異なる。
https://www.mori.art.museum/jp/
畠中実/MINORU HATANAKA1968年生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員。1996年の開館準備よりICCに携わる。近年の展覧会には、『多層世界とリアリティのよりどころ』(2022)、『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』(2023)、『ICCアニュアル2024 とても近い遠さ』(2024)、『evala 現われる場 消滅する像』(2024)。美術および音楽批評。
文・中島良平 編集・橋田真木(GQ)
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