F1第22戦ラスベガスGPで、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の2024年ドライバーズタイトル獲得が決まった。シーズン中盤以降の失速は顕著だったが、それでも着実にポイントを積み重ねていった結果、2戦を残してタイトル決定。フェルスタッペンにとっては選手権4連覇となった。
フェルスタッペンが失速した要因については、レッドブルのマシンの戦闘力が相対的に下がったことであることは間違いないだろう。
■F1分析|速いチームがコロコロ変わる。実に難解だったラスベガスGP。鍵はもちろん”タイヤの使い方”だけど……
レッドブルは開幕4戦で3度のワンツーフィニッシュを記録。フェルスタッペン、セルジオ・ペレス共々高いパフォーマンスを発揮し、ダブルタイトル獲得は間違いないものと思われた。しかしながら中盤戦あたりからマクラーレンの速さが顕著となり、そこにフェラーリも追随。レースによってはメルセデスがフィールドを支配することもあり、群雄割拠の様相となった。
そういった勢力図の変化によって、レッドブルは明らかに“最速マシン”ではなくなった。第11戦オーストリアGP以降の12レースで、フェルスタッペンが勝ったのは雨のサンパウロGPのみで(スプリントでは2度ほど勝利しているが)、半数以上で表彰台を逃している。ペレスに至っては予選Q1敗退も珍しくない状態となってしまい、5位以上でフィニッシュできたレースは1度もなかった。
こういった状況を鑑みると、現状のレッドブルは総合的に見て、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスに次ぐ4番手チームにまで成り下がっているようにも見える。そんな中で、序盤戦の貯金があったにせよ、苦しい時期でも4位、5位、6位と着実に加点してドライバーズタイトル争いでのリードを守り切ったフェルスタッペンの働きぶりは、レッドブル首脳陣も手放しで賞賛している。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコは、フェルスタッペンがライバル勢に歯が立たず6位に終わったイタリアGPではタイトル獲得が厳しいかもしれないと感じたというが、無事タイトルを獲得できたことにホッとしているとして、こう語った。
「モンツァではマシンがどうにもならない状態だった。我々はそこから立ち直り、マックスも冷静に素晴らしい仕事をこなしてくれた」
「マシンは最速ではなかったが、彼は常にそこから最大限のものを引き出していた。今回だって、彼は表彰台を目指さないと決めて、しっかりとマシンを持ち帰ってきてくれた」
「繰り返しにはなるが、マックスはマシンが3番手か4番手の速さしかない時でも、最大限の仕事をして60点差、70点差というところをキープしていた。それによって、他のドライバーに『自分たちにもチャンスがある』といった希望やモチベーションを与えなかったのだ」
過去2シーズンはレッドブルの戦闘力が抜きん出ていたこともあり、2022年は15勝、2023年は驚異の19勝を挙げてチャンピオンに輝いたフェルスタッペン。今季のタイトルはフェルスタッペン個人の力に依るところが大きいかと問われたマルコは「ああ、間違いない」と答え、17番手スタートから劇的な優勝を飾ったサンパウロGPを引き合いに出して次のように語った。
「ブラジルに行くまでの間には叩かれたりもしていたが、(ブラジルで)彼は誰がゲームの支配者なのかを見せつけた」
「それまでの間にも、マシンの競争力がない中で可能な限りの力を引き出していた。その内の4勝ほどはマックスの力だけで勝った。クルマとして勝てる力がなかったのに、勝利を掴んだのだ」
これでフェルスタッペンは4度のF1ワールドチャンピオンとなり、ミハエル・シューマッハー、ルイス・ハミルトン、ファン・マヌエル・ファンジオ、アラン・プロスト、セバスチャン・ベッテルと、過去5人しか達成していない領域に足を踏み入れた。ここ数年でのフェルスタッペンの進化について、マルコはこう語る。
「いくつかある。まず第一に、非常に成熟したということだ。彼は必要な時にうまく頭を使う」
「タイヤの使い方も驚くほど上手い。タイヤの状態を読み解くことができるんだ。そしてレースも読み解くことができる」
「そういったことをひっくるめて、彼は既に歴代最高のドライバーのひとりになっていると言える」
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