2022年11月1日からバイクに「平成32年(令和2年)排ガス規制」が全面適用される。50ccを除き、規制に対応していないバイクは、この期日までに規制をクリアしないと日本で販売できなくなる。
生産終了に追い込まれるモデルは、現行ラインナップの約1割と少なくない。これを全四回にわたって紹介していく。
【生産終了バイクまとめ】どうしたスズキ! 旗艦GSX-R1000Rに売れ筋のVストローム250までラストへ!?
第二回は、スーパースポーツクラスとスズキに関する話題。スーパースポーツは600ccクラスがほぼ絶滅に追い込まれたが、この流れが最高峰の1000ccクラスにも波及しそう。なんとスズキGSX-R1000Rがラストになるとの噂だ。さらにスズキの人気車であるVストローム250やGSX250Rも生産終了になるという。
文/ベストカー編集部、写真/SUZUKI、YAMAHA、HONDA
600ccスーパースポーツは風前の灯火、そして1000ccも?
レースを視野に入れ、究極の「走る、曲がる、止まる」を追求した1000cc級スーパースポーツ(SS)は、各メーカーの最新技術を結集したサラブレッドだ。
その弟分として600ccSSが存在する。1000cc級より軽量コンパクトでスペックも手頃(それでも十分すぎるが)とあって、2000年代に欧州で大人気を博した。
600ccは、WSS(スーパースポーツ世界選手権)などのレースレギュレーションを考慮した排気量帯。国内4メーカーから漏れなくリリースされ、トライアンフら海外メーカーも続いた。
ところが、2010年代に人気が衰退。2016年から欧州排ガス規制のユーロ4および国内の平成28年排ガス規制が適用された影響もあり、CBR600RR(ホンダ)、GSX-R600(スズキ)、Ninja ZX-6R(カワサキ)、デイトナ675(トライアンフ)らが日欧で生産終了してしまう。
その後、ヤマハのYZF-R6が2017年型で規制に対応し、ZX-6R、CBR600RRがモデルチェンジを伴って復活したが、YZF-R6は2020年型でディスコンに。 ZX-6Rは欧州仕様が既に生産終了しており、CBRも現行の2022年型でラストという噂だ。
600SSが衰退した理由は、過激なライディングポジションと走りに中年ライダーがついていけなくなったから、と言われている。反対に人気が出てきたのが、ライポジがラクなアドベンチャーやネオクラシック系のバイクだ。
そして、600SS生産終了の流れが1000ccSSにも波及しそう。なんとスズキのGSX-R1000Rが2022年型でラストになるとの噂があるのだ……。
ヤマハのYZF-R6は2020年型で生産終了。欧州では公道走行不可のレース仕様が存在する。日本でもサーキット走行好きに需要は高く、中古車相場が上昇している
GSX-R1000R終了に合わせ、モトGPと世界耐久からも撤退?
GSX-R1000Rは、2017年のデビュー以来、メカ的に大幅なモデルチェンジはなく、日欧ともユーロ4(平成28年排ガス規制)のまま販売が続けられている。
欧州では、2021年1月からユーロ5が全面適用された。日本の令和2年排ガス規制と内容はほぼ同じで、日本は遅れて2022年11月以降生産される新車に全面適用される。
ユーロ5規制に適合していないGSX-R1000Rは本来、欧州で発売できないのだが、メーカーやモデルごとに販売台数実績に応じた「特例措置」が設けられる。そのため、欧州でもまだラインナップに残っているのだ。
ユーロ5および令和2年規制への対応が待たれるところだが、情報筋によると「このままユーロ5に対応せず、現行型で終了する」という。1000ccクラスは各メーカーを代表するスポーツ系のフラッグシップだけに、威信に賭けて存続させる「聖域」のイメージが強かったが、ついにその一角が崩れることになりそうだ。
この生産終了に合わせるように、スズキは7月13日、最高峰レースのモトGPと、鈴鹿8耐を含む世界耐久選手権(EWC)からのワークス参戦撤退を発表した。
スズキの鈴木俊宏社長は、「経営資源の再配分に取り組まねばならない」ため、参戦終了を決断。「レース活動を通じて培ってきた技術力・人材を、サステナブルな社会の実現へ振り向け、新たな二輪事業の創生に挑戦していく」とコメントした。レース参戦のための資金を電気自動車(EV)開発などに振り分けるという話もある。
この流れとGSX-R1000/Rが生産終了する流れは決して無関係ではないだろう。GSX-R1000Rは、モトGPマシンであるGSX-RRの技術をフィードバックした直系であり、同社レースモデルのイメージリーダー。さらに、市販車で争う世界耐久のベース車でもあるからだ。
しかし将来的に復活する可能性はゼロではない。現にスズキのハヤブサは、前規制のユーロ4に対応せず、国内仕様は2017年型で終了。そのまま空白期間が続いたが、2021年型で現行のユーロ5に対応し、復活を遂げている。
GSX-R1000Rもハヤブサと同様、一時の生産終了を経て、次期規制のユーロ6で復活するかもしれない。ユーロ6の内容や施行時期は未定で、早くとも2024年以降に導入される予定だ。
2017年に登場した現行GSX-R1000/R。国内仕様は197psを発生し、電子制御や足まわりが充実した「R」仕様のみ発売されている。ライバルより扱いやすい特性が特徴だ
GSX250R、Vストローム250、ジクサー……250も大量に生産終了?
さらにスズキでは、GSX250Rが令和2年排ガス規制に対応せず、国内販売を終了するとの噂が。このエンジンをベースにアドベンチャーモデルに仕上げたVストローム250も同様にラストと噂されている。
2モデルはともに人気で、GSX250Rは126~250ccクラスで2021年の販売ランキング9位(2784台)。Vストローム250は11位(2436台)を記録している(販売台数は『二輪車新聞』より)。
また250クラスで販売ランキング7位に食い込み、同クラスのスズキ車では最も売れているジクサー250/SFも生産終了となる模様だ。
ただしジクサーはインド生産で、ユーロ5に相当するインドの排ガス規制BS6をクリアしている。エンジンの設計年が2019年と新しく、グローバルモデルであることから、空白期間があったとしても早期に復活する可能性がある。
なお当サイトで既報のとおり、現行モデル最後のナナハン直4であるGSX-S750の生産終了が正式に告知されている。
GSX250Rと同系のエンジン+骨格を用いたVストローム250は、同クラスでレアなアドベンチャー。ロングストロークの粘り強い走りが好評で、ツーリング好きライダーから評価が高い
二輪の業績は好調、四輪が再建すれば生産終了モデルも復活するハズ
スズキの2022年3月期(2021年4月~2022年3月)連結決算によると、売上高は前期比12.3%増の3兆5684億円。しかし営業利益は同1.5%減の1915億円で4期連続の営業減益となった。
四輪事業は、営業利益が11.2%減の1528億円と減益。その一方で、二輪事業の営業利益は321.6%増の109億円と増益した。
スズキの二輪事業は決して不調なわけではない。屋台骨である四輪事業が上向きになれば、終売バイクの復活にも期待できるはずだ。
そして近い未来、新型GSX-R1000Rの登場と同時に、ぜひモトGPと世界耐久への復帰もお願いしたい。スズキは2012~2014年シーズンのモトGP参戦休止を経て、2015年に再開。翌々年に新型GSX-R1000もデビューしている。同様の流れを待ちたいところだ。
2020年のモトGPではジョアン・ミルが20年ぶりにスズキへライダーズタイトルをもたらした(写真)。世界耐久でもスズキとして計20回の年間王者に輝き、2021年のタイトルも獲得している
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