かつてレッドブルF1のマシンをドライブし、セバスチャン・ベッテルらと組んで活躍したマーク・ウェーバー。F1から退いた後はポルシェのWECドライバーとなり、2016年限りでレーシングドライバーを引退。以後はF1でインタビュアーを務めつつ、マネジメント会社を運営している。
その会社でマネジメントを担当しているのが、同郷オーストラリア出身のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)である。
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ピアストリはアルピーヌF1の育成ドライバーとしてジュニアカテゴリーでのキャリアを歩み、2020年にFIA F3、2021年にFIA F2のチャンピオンを獲得。しかし2022年はF1のシートを手にすることができず、アルピーヌのリザーブドライバーとして過ごした。
その後アルピーヌは、2023年にピアストリをレギュラードライバーとして起用することを発表するも、ピアストリはこれを拒否してマクラーレンと契約。ランド・ノリスとコンビを組むことになった。
開幕直後はマシンの戦闘力が優れず、下位に低迷することも多かったが、アップデートが成功してマシンパフォーマンスが向上すると、一気にポジションを上げ、決勝レースでは2度の表彰台を獲得。F1スプリントでは1勝を挙げた。
ルーキーながらもノリスと遜色ない活躍を見せたことで、その評価もうなぎ上りである。
そのピアストリのマクラーレン入りをサポートしたのがウェーバーである。ウェーバーはF1での1年目を戦い終えたピアストリについて、次のように評価した。
「もちろん、全体的に私はとてもとても誇りに思っているし、とても満足している」
そうウェーバーは語った。
「こんなシーズンから始まるとは、夢にも思わなかった。しかし世界最高のドライバーたちと渡り合ってきた彼は、やるべきことがあると分かっている」
「15ヵ月もの間レースに出られないということは、レーシングドライバーにとって決して良いことではない。少しテストはしたけど、レースに代えられるようなモノではない」
「間違いなく最初の6ヵ月、彼は窮地に追い込まれていた。しかし彼はそのことを言い訳にはしたくないと思っていたと思う。実際、オスカーは言い訳をしなかったからね」
「彼はこのことを素直に受け止めていた。そして、マクラーレンもシーズン序盤に苦戦していた。そして第3戦に母国レースを迎えた。早すぎる段階で母国レースに挑むというのは、心理的にも考慮すべきことがたくさんあったはずだ。しかし彼はそれに非常にうまく対処した」
マクラーレンは、アップデートパーツが出来上がると、ノリスのマシンに優先的に投入していった。つまり、ピアストリとしては待たなければいけない状況が生じたわけだ。そういう状況では苛立ってしまうのは無理もない。しかしピアストリは、もっと広い視野を持っていた。
「いくつかのアップデートで、ある程度の差が生じた。チームは正しい軌道に戻ろうと懸命に努力していたんだ」
そうウェーバーは明かす。
「優先順位という点では、確かに差があった。でも、彼はそれにうまく対処した。知っての通りスプリントレースは、ちょっと歪められたモノだ。そしてとてもチャレンジングで、非常に難しい」
「F1は、タイヤが非常に重要なチャンピオンシップだ。1セットのタイヤを、1回のセッションで無駄にしてしまえば、ライバルたちと太刀打ちするのが難しい状況になる。週末をまとめるためにはたくさんの要素があるんだ。今のF1は、非常にテクニカルなんだよ」
前述のとおり、ピアストリはF1スプリントで1勝。これはカタールGPで記録したものだった。このレースではレッドブルのマックス・フェルスタッペンから厳しいプレッシャーを受けたが、ピアストリはこれに動じることなく、チェッカーまで駆け抜けた。
「無線を聴いていると、とても面白かったね」
そうウェーバーはいう。
「彼は『マックスがジョージ(ラッセル/メルセデス)を抜いたら知らせてね』と言っていて、実際にそうなった。その後オスカーは、マックスが追いついてきた場合に備えて、全ての準備を整え始めた。マクラーレンの人たちはそれを見て『OK! しかしすごいな。君は3年目だっけ? 4年目だっけ?」と言ったんだ」
「それこそが、我々がオスカーについて気に入っている部分だ。まだ埋められる部分があるし、そうじゃなきゃいけないのは明らかだ。でも最終的には、今後2~3年をかけて、ゆっくりとその隙間を埋めていけばいい」
ウェーバーは、ピアストリがチームメイトのノリスから多くのことを学んだと認めるが、それは別の部分でも役に立ったのではないかとも考えている。
「彼らは、チームの中で自分自身のことをアップグレードしていった」
ウェーバーはマクラーレンのコンビについてそう語った。
「オスカーは、ランドにいくつかの新しいモノを見せた。そしてランドは明らかに、オスカーに多くのモノを見せた。ランドは非常に経験豊富なドライバーと組んできたから、今回のことは大きな変化だったと思う。でもそれは、メカニックやチーム全員……両方のマシンに関わる全員にとってポジティブな変化だったんだ。ランドにとっても、多くの点でプラスだったはずだ」
ピアストリは、昨シーズン前半はそれぞれの週末で徐々にペースを上げていくというアプローチを取った。本格的に攻め始めたのは、予選になってからだったと言っても過言ではない。しかしシーズン後半には金曜日の段階から限界に近いところで走るようになった。
このことを考えれば、2024年には初日から限界に近づく走りを見せるのは、間違いないだろう。
「彼はいくつかのセッションでトップに立つだろう」
そうウェーバーは言う。
「最近のマシンはとても複雑になっていて、そして要求したことに非常に忠実だ。しかもオスカーは、このチームのエンジニアたちと初めて仕事をしたんだ」
「マックスは8年、ランドは5年の経験を持っている。絆を培ったり、分かり合ったりするためには、時間がかかる。オスカーとはいえ、その段階を早送りすることはできない。我々にできるのは、彼をサポートし続けることだ」
「マクラーレンというのが非常に良かった。1年目にアンドレア(ステラ/チーム代表)を迎えることになったのは、とても幸運だった。彼はオスカーに対してとてもよくしてくれたし、彼がオスカーのことを気に入っているのが分かるんだ」
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