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スバルBRZ GT300 15位に沈む ピックアップというレーシングアクシデントとは何か

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スバルBRZ GT300 15位に沈む ピックアップというレーシングアクシデントとは何か

2018レースカーから探るSTIの先端技術 Vol.21

スーパーGT 第7戦 オートポリス

アイシン、ドライバーとの対話型自動運転車開発

2018年10月20日(土)、21日(日)、大分県のオートポリスでスーパーGT第7戦が行なわれた。残すところ2レースとなったが、結果は予選4位、決勝15位だった。また土曜日の午前中に予定されていた練習走行も走れず、運のないレースとなってしまった。


第6戦のSUGOではSUBARU BRZ GT300本来の速さと強さを見せつけ、完璧なレースが展開され完全優勝をしたが、その勢いを持ち込むことはできなかった。

最初のトラブルはエンジンに出た。オートポリスでの公式テストは8月に行なわれており、気温、路面温度ともに、10月開催の今回とは全く異なる状況でのテストだ。そのため土曜日の午前に予定されている練習走行ではまず、低い気温、路面温度に対応するタイヤ選定をしなければならない。だが・・・・・・。

チーム作戦では、最初はハードタイプを選択し、全体の中でどのポジションになるのか探り、他チームのタイヤ選択を見ながらベストなものを探していく予定だった。だが、エンジンが不調なのだ。アイドリングや空ぶかしをしても綺麗にエンジンが回らない。懸命になって原因究明したが問題の箇所がみつからない。

排気系トラブル

考えられるのは、エンジン内部のトラブル、電装系ハーネスの問題、そして制御系ソフトの問題が考えられる。もちろん、レース前にSTIにあるエンジンベンチテストで慣らし運転は済ませ、R&Dスポーツでエンジン搭載後に始動性と吹け上がりを確認しているが、その時は、何も問題は生じていない。ところが、現地入りしてエンジンをかけてみると不調なのだ。

懸命の調査は、走行時間のすべてを使っても特定に至らなかった。そのため、渋谷総監督はスペアエンジンへの載せ替えを決断する。午後2時から始まる予選までに載せ替えを済ませないといけないという緊急事態だ。作業時間は3時間とちょっとしかなく、ギリギリの選択を迫られたわけだ。


決断した以上作業は急ピッチで進められたが、不調の原因が特定できていないため、作業自体も原因追及を兼ねた作業になる。ひとつひとつのパーツを脱着するたびに不良個所がないかチェックを行ない確認する。すると、排気系のパーツに問題があることが見つかったのだ。

それは製造工程における製品公差も含め、工業製品には付きまとう問題ではあるが、ハードに問題があるということが特定できた。そのため、部品をスペアに交換し、予選に間に合わせる作業へと変わった。問題の箇所が判明した時、渋谷総監督は「これで99.9%問題がなくなる」と自信たっぷりに説明をしてくれた。それほど、マシンはベストな状態のはずだったことが伺える。


午後の予選は、約1ヶ月半前のテストとは路温等条件は大きく異なる状況のぶっつけ本番で、山内英輝選手がタイムアタックをし、全体で2位の好ポジションでQ1を通過した。続く井口卓人選手はオートポリスを得意としているだけに、ポールポジションを期待したが、他チームは別なタイプのタイヤに交換したチームが多く、タイムを伸ばしてきた。

SUBARU BRZ GT300は山内、井口ともに同じハードタイプのタイヤでタイムアタックを行ない、4位という結果になった。午前の走行で、データがある程度つかめれば、井口選手のタイミングで、別のタイヤでトライすることも可能だったと思う。

ピックアップとは何か

今回のレースは、「ピックアップ」と呼ばれる現象が原因で順位を落とす結果になった。レースファンの間では、知られているものの一般的には聞きなれない言葉だ。


これは、タイヤのラバー片を拾ってしまい、グリップが落ちたりする現象で、スリックタイヤで走るスーパーGTのマシンはこのリスクを常に持っている。

スリックタイヤは路面と接しているとき、ゴムを溶かしながら走行している。溶けたゴムが路面と密着することで強烈なグリップ力を発揮しているわけだが、溶けたゴムは削りカスとなって路面に残る。ちょうど、消しゴムを使った時に、消しゴムのカスをイメージするとわかりやすい。


その削られたカスを後続のマシンが踏みつけると、自分のタイヤにくっついてしまう。溶けたゴム片だけにタイヤにつきやすいわけだ。その時の自分のタイヤには、チューンガムを伸ばして張り付けたような状況だ。

ピックアップの起こる状況としては、やはり接近戦となった時だ。通常、削り取られたタイヤ片は路面に落とされ、急速に冷えてタイヤゴミとなるが、前走車から削られたゴムをすぐ後続のマシンが踏みつけてしまうと、くっついてしまうことになる。


スリックタイヤのフラット面が凸凹になり、また、拾ったタイヤ片自体は捨てられたゴムだから、グリップ力はない。そのゴムが付着した状態で走行するので、マシンの安定性は極端に悪くなる。出てくる症状はさまざまあり、例えば、振動が出たり、ふらふらしたりする。

避けられないものではあるが、タイヤ片を拾ってもすぐに剥がれてしまえば、問題にならないことが多いが、剥がれにくいタイヤ、はがれやすいタイヤというのも状況次第ではあるようだ。そこは、その時使用しているタイヤのコンパウンドも影響するようで、秘密の多いレースタイヤだけに詳細は分からない。

しなるホイール

じつはこのピックアップについて取材をしていると、SUBARU BRZ GT300 のホイールにも秘密があることが分かってきた。使用するホイールはBBSで、このホイールには多くのノウハウが投入されていた。ピックアップとどれほど関係するかについては、別の機会にお伝えするが、BRZは他車より車重が軽いこともあり、当然のように専用開発されたホイールを装着している。


それは、デザインや構造、製造方法のノウハウを使い、ホイールがしなるような設計にしているというのだ。その「しなり」によって、タイヤの性能を100%引き出す設計にしているという。つまり、タイヤが温まりやすい、温まりにくい、グリップがある、薄いなどの性能に関し、ホイールも関与してくるということなのだ。

この「しなる」ホイールに関しては、別の機会にレポートしたい。今回のピックアップの影響によるレース結果だが、オートポリスはたとえ2秒先行車より速いタイムが出せても抜けない、と言われるほど抜き去ることが難しいサーキットである。そのため、通常より接近戦が長引いてしまう。そうなるとピックアップの危険性が高まり、今回のように、タイヤ片に悩まされ、結果的には、まともに走れないことになってしまったわけだ。

ピックアップはレーシングアクシデントの一種なので、ある意味避けられないことだが、SUBARU BRZ GT300にとっては不運としか言いようのないレースとなってしまった。

 
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*取材協力:SUBARU TECNICA INTERNATIONAL

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