クルマに装備されている「アンテナ」は、当初はカーラジオを聞くためだけのものでしたが、現在では、ラジオやTV、コネクティッド技術のためなど、役割が増え、その重要度を増しています。見た目も、当初は金属棒を手で伸ばすタイプでしたが、最近はコンパクトポールやシャークフィンと呼ばれるタイプのアンテナが主流となり、(知らなければ)これがアンテナだとは気づかない形状に変化してきています。
今後、自動運転技術の発展においても、重要な役割をもつ、アンテナ。カーラジオ専用で始まったアンテナが、現在の多機能アンテナに至るまでの、機能と形状の進化についてご紹介します。
最近は見かけなくなったクルマのアンテナ、いまどうなったのか?
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、写真AC、エムスリープロダクション
日本で初めてカーラジオが搭載されたのは、初代「トヨペットクラウン」
世界初のカーラジオは、今から100年近く前の1930年のモトローラ製でした。その後1936年にGMの子会社が、ダッシュボード埋め込み型カーラジオを開発して、米国でカーラジオの普及が始まりました。
日本では、クラリオンの前身である帝国電波が、1948年にカーラジオ第1号を開発。日本で初めてラジオがクルマに搭載されたのは、1955年の初代「トヨペットクラウン」で、神戸工業(現在の富士通テン)製のオプション設定でした。当時のカーラジオは、高級車のみに搭載できる高級装備品で、アンテナは助手席側のAピラー根本付近のフェンダーに装備されていました。
1960年代後半には、FMも受信できるようになり、1967年に登場した「トヨタ2000GT」には、FM付ラジオが標準装備され、アンテナは運転席側のリアフェンダーに装備されました。その後も、カーラジオ/カーステレオはクルマの必需品として、アンテナはラジオが機能するために不可欠な機能部品として、形を変えながら進化してきました。以下に、アンテナの変遷と種類を簡単に紹介します。
1955年にデビューした初代クラウン「トヨペットクラウン」。オプションで初めてカーラジオを装備
1950年代~:伸縮可能なロッドタイプで登場
最初に登場したアンテナは、ラジオを聞きたいときに1メートル弱の細い棒状の金属製アンテナを、釣り竿のように伸ばして使う「ロッドアンテナ」でした。フロントやリアのフェンダー、ルーフに装備されましたが、最も一般的だったのは運転席に座ったまま伸縮できるようにAピラーに格納できるタイプでした。
カーラジオ初期のアンテナに使われていたのが、ロッドアンテナ。1メートル弱の細い棒状の金属製アンテナを、釣り竿のように伸ばして使っていた(PHOTO:Adobe Stock _FotoHelin)
1970年頃には、高級仕様としてインパネのスイッチやラジオの電源と連動してアンテナが自動で伸縮する、「オート(電動)アンテナ」も登場。「キーン」と電動で伸びるアンテナは、当時は高級車の証でした。
このロッドタイプは、走行風でアンテナがしなってスムーズに伸縮できなくなったり、格納するのを忘れて駐車場などで引っ掻けて折れたりすることがあったようです。ロッドタイプは、アンテナが長いので受信感度が高く、それでいて安価なので、コストが重視される商用バンやトラックでは、現在も採用されています。
現在、乗用車系にはほとんど採用されないロッドタイプのアンテナだが、商用車バン・トラックの一部に採用されています。日産「NV200バネット」は、現在もロッドアンテナを運転席側のAピラーに収納するタイプを装備
1990年代~:フィルムタイプが登場
1990年代には、フロントウィンドウ、もしくはリアウィンドウに貼り付ける「フィルムアンテナ」が登場。フィルムアンテナは、透明のフィルムに針金状の細いアンテナ線を組み込んだものです。クルマのボディに影響を与えない理想的なアンテナですが、高価な割にはラジオの受信感度が低く、普及には至りませんでした。当初はカーラジオ用として誕生したフィルムアンテナですが、現在は主として、地デジTVの電波受信用として活用されています。
フィルムタイプのアンテナ。日産ノートの場合、リアサイドガラスの内側に、アンテナ線が仕込まれている
2000年代~:コンパクトポールタイプが登場
2000年に入って登場したのが、長さ20cm程度の「コンパクトポールアンテナ」です。コイル状のアンテナを樹脂製のカバーで覆ったタイプで、伸縮はできませんが、可倒式で取り外しが可能。アンテナの長さは短いですが、コイルアンテナの進化によって、短くてもロッドタイプと同等の性能が確保されています。
ポールアンテナは、ルーフの前方センターや後方センターに装備されることが多いですが、小型であるため場所を選ばず、どこでも容易に装備でき、比較的安価なので、現在は軽自動車やコンパクトカーでは主流となっています。
軽自動車やコンパクトカーで主流のコンパクトポールタイプのアンテナ。比較的低コストで装着の自由度が高いのが特徴(PHOTO:写真AC_自然体)
2000年代~:ドルフィンタイプが登場
現在最も普及しており、今後も普及が期待されるのが、イルカやサメの背びれのような形状の「ドルフィンアンテナ」や「シャークフィンアンテナ」とよばれるタイプです。2001年に登場した4代目「BMW 7シリーズ」で初めて装備され、日本では2005年の「レクサスIS」を皮切りに、現在はセダン系やSUV系のほとんど、そして軽自動車の一部でも採用が進んでいます。なかには日産のアリアのように、ダブルシャークフィンアンテナを装着するクルマも登場しています(プロパイロット2.0装着車において、準天頂衛星の情報を取得するため)。
実はレクサスISのアンテナは、ラジオ専用ではなく、当時レクサスが提供していたテレマティクスサービス「G-Link」用の通信アンテナでした。テレマティクスだけでなく、ナビゲーションのGPS、リモンコンキーなどの様々な無線の送受信を行う、多機能インテリジェント・アンテナの先駆的なアンテナだったのです。
ドルフィンアンテナのメリットは、先の多機能性に加えてスタイリッシュなデザイン性です。ただし、ボディ色に合わせた塗装などによってコストが上がり、ポールタイプとフィルムタイプの中間のコストがかかるので、今後はコスト低減と小型化が普及のカギを握っています。
ホンダN-WGNは、軽自動車としては珍しくドルフィンアンテナを採用
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デザイン性や空力性能などを犠牲にせず、多くの機能を小さなスペースに配置しなければいけないアンテナ。最終的には、さらに小型化が進んで、エクステリアから消え去ることが理想かもしれません。
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