EA888型2.0L 4気筒ターボで310ps
textSimon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1999年、クワトロ社の技術者によって生み出された初代S3。標準のA3が上級ハッチバックとして認知を広める中で、S3はホットハッチ以上に高性能なハッチバックとして、新ジャンルを生み出した。
四輪駆動とMTを組み合わせ、最高出力は210ps。パワフルでコンパクトなハッチバックは、グループB時代のスポーツ・クワトロを想起させた。ランチア・デルタ・インテグラーレなど、ラリーマシンに熱くなった記憶を持つドライバーを再燃させた。
初代アウディS3の登場以降、多くの高性能ハッチバックが発表されてきた。しのぎを削るように、動的性能は右肩上がりだ。
2020年の今では、メルセデスAMG A45 Sが搭載するのは、421psの2.0L4気筒ターボ。わずか2000cc足らずの排気量からこれほどの馬力をひねり出すのだから、感心してしまう。
間もなく登場する次期RS3は、間違いなくメルセデスAMGへ容赦ない戦いを挑むはず。それまでは、最新のS3がアウディ製ハッチバック、A3の先鋒を守ることになる。
最新の4代目S3のルックスは従来どおり、標準のA3へ手が加えられたもの。乗員空間は充分に広い。鮮烈なパイソン・イエローのボディが、ひときわ目を引く。少し見慣れた感じもなくはない。
エンジンは、2.0LのEA888型と呼ばれる直列4気筒ターボ。以前のS3だけでなく、フォルクスワーゲンTロックRなどにも積まれる名ユニットだ。最高出力310ps、最大トルク40.7kg-mを発揮する。
ダンパーや四輪駆動システムを統合制御
駆動方式は、電動油圧クラッチをベースとする四輪駆動のクワトロ。トランスミッションは、7速デュアルクラッチATのみ。MTは随分以前に廃止されている。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTIと同様に、S3がベースとするのは改良版のMQBアーキテクチャ。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式が選ばれた。
車高は通常のA3より15mm低い。ダンパーは、標準では固定タイプだが、オプションでアダプティブ・ダンパーも選択できる。試乗車には装備されていた。
スペック的には、3代目でも見慣れた内容に思える。本当に新しいS3と呼んで良いのか、疑問を持たなくもない。
少なくとも、四輪駆動システムのクワトロは、軽い手直しが加えられている。アダプティブ・ダンパーは、3代目で採用していたマグネティック・ライドではなく、通常の油圧システムへ改められた。
スーパーカーのR8にも採用されるマグネティック・ライドだが、ファミリー・ハッチバックのS3にはスポーティ過ぎる、と判断された。日常生活との親和性を高めた、とアウディは主張する。筆者が察するに、コスト削減も前提に合ったはず。
新しいアダプティブ・ダンパーは、四輪駆動システムやブレーキによるトルクベクタリング・システムなどとあわせて、コントロール・ユニットで統合制御される。先代までは、デバイスそれぞれが独自に設定を変化させていた。
スポーティで機敏なハンドリングを獲得した、とアウディは説明する。
走り出した直後から得られる操る自信
アウディS3は以前から、信じられないほど容易に速く運転できるクルマだった。新しい4代目でも、それは当てはまる。
0-100km/h加速に要する時間は4.8秒。瞬発力は、その数字を疑わせないほど力強い。
アクセルペダルの踏み始めでは、わずかなターボラグが生じる。しかし、2500rpmを超える頃には、S3は本領を発揮。蹴飛ばされるような勢いで速度を増していく。
中回転域のエネルギッシュさは特に顕著。レッドラインに当たるまで、たくましさは衰えない。間髪入れず、7速デュアルクラッチATがシフトアップ。また中回転域のパワーを楽しめる。
放たれるサウンドは、さほど興奮を誘うものではない。しかし、筋肉質な音色には聞き入る魅力もある。
高速域へは、あっという間に到達する。S3のシャシーは、高い速度域を保った走りを支えてくれる。ダンパーを最も硬い設定にすれば、縦横方向のボディの動きは抑え込まれる。グリップ力も相応に高い。
ステアリングの反応は、切り始めで期待ほどクイックではないものの、負荷が増えるにつれて適度に重さを増していく。コーナー外側のタイヤがどんな状況にあるのか、鮮明に手のひらへ伝えてくれる。
ホットハッチとして、ワイルドさを感じさせる特長は控えめ。そのかわり、走り出した直後からドライバーへ操る自信を与えてくれる。
新しいRS3への期待も高まる
熱い運転を楽しんだ後は、気持ちを落ち着かせて穏やかに走りたくなる。ダンパーをコンフォートに戻せば、お腹への衝撃は優しくなる。姿勢制御は緩くなるものの、うねりや隆起部分を超えても、柔軟性を感じるようになる。
わだちを通過した限りでは、不満なく対処できているようだった。指摘するような乱れもなく、舗装状態の悪い英国の道でも、納得できる乗り心地が得られるかもしれない。改めて試してみたい。
新しいアウディS3の英国価格は、3万7900ポンド(515万円)から。比較すると、メルセデスAMG A35は3万8360ポンド(521万円)で、BMW M135iは、3万7470ポンド(509万円)。ライバルモデルとの走りの比較も、機会を設定したいところだ。
先代までの強みだったインテリアには、優位性がなくなっている。メルセデスAMGの車内は、視覚的な訴求力が高いし、BMWはソリッドで堅牢な雰囲気がある。どちらも新しいS3には欠けている部分だと思う。少々残念だ。
4代目アウディS3は、磨き込まれたドライビング体験を得られる、素晴らしいハッチバックのまま。一般的にかなり攻め込んだ速度域での走りも、造作なくこなしてしまう。
このあとに続く、新しいRS3がどんなクルマに仕上がるのか、期待も高まる。上質なインテリア素材と、より高いダイナミクス性能は獲得してくるだろう。エンジンは、例の5気筒ターボが載るはずだ。
アウディS3 スポーツバック TFSI(欧州仕様)のスペック
価格:3万7900ポンド(515万円)
全長:4351mm
全幅:1816mm
全高:1438mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:12.5km/L
CO2排出量:183g/km
乾燥重量:1500kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:310ps/5450-6500rpm
最大トルク:40.7kg-m/2000-5450rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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いまだにスバルや三菱に制御で遠く及ばない