最近は聞くことが少なくなったかもしれないが、タイヤに空気の代わりに窒素を入れると、「空気が抜けにくい」「温度による空気圧の変化が少ない」「タイヤの劣化を防ぐ」というメリットがあるとして、一時期クルマ好きの間で流行ったことがある。現在でもワケあって窒素を愛用しているという読者もいると思う。
ただ、窒素を使うことでどのようなメリットがあるのだろうか? そして、1本の充填に500~2000円というコストがかかる窒素充填は、コストに見合ったメリットをユーザーに与えてくれるのだろうか?
空気が抜けにくいと一時期流行ったけど……タイヤの窒素充填は必要があるのか!?
今回は、そんなタイヤの窒素充填は本当に必要なのかについて、本当のところを考察していきたい。
文/斎藤 聡
写真/AdobeStock(トップ画像=methaphum@AdobeStock)
■なぜタイヤに窒素を充填する? 過酷な現場だからこそ導入されるワケ
タイヤに充填するのは窒素がいいという話が時折話題に上がる。窒素充填は本当に必要なのだろうか(geargodz@AdobeStock)
タイヤに充填するのは空気でいいのか、それとも窒素がいいのか。これは時々話題に上がるテーマです。窒素を充填する理由はいろいろ言われていますが、まとめると
1)エアが漏れにくい
2)空気圧が安定している
3)酸化しない
というのが主な理由のようです。
ところで、なぜ乗用車のタイヤのエアに“窒素”を入れるようになったのでしょう。それは航空機のタイヤに入れられていたのが始まりだといわれています。その後レース用に使われるようになり、最近では市販タイヤに窒素充填を行っているタイヤショップを見かけるようになりました。
そもそも、なぜ航空機で窒素ガスが使われるようになったのかというと、これにはいくつか理由があるのですが「難燃性」であることと「ドライエアだから」というのが最も大きな理由のようです。
ちなみにジェット旅客機に使われるタイヤの空気圧は1200~1400kPaくらい、乗用車の空気圧は200~250kPaくらいですから5~7倍くらいのエアが充填されていることになります。たとえばA380だと前脚2本、主脚20本のタイヤで560トンを支えなければなりません。
そして、着陸した瞬間のタイヤ表面温度は250度にもなるのだそうです。また、上空1万m付近での気温はマイナス45度前後になりますから、外気温の差も大きなものになります。
航空機のタイヤには窒素ガスが充填されている。窒素を使うメリットとしては「難燃性」であることと「乾燥している」ことが挙げられる(Senohrabek@AdobeStock)
さらに付け足すと、航空機用タイヤはバイアスタイヤで200回程度の離着陸、ラジアルタイヤで約350離着陸でリトレッドと言ってトレッドゴムを巻き直し再使用します。リトレッドの回数は6回行われるのだそうです。
こうした過酷な状況のなかにあるタイヤですから、トラブルの要素はできるだけ少なくしたいわけです。
万が一タイヤがバーストした場合、1200kPaの圧縮空気が一気に漏れてしまうと、空気には酸素が含まれているので発火、火災の危険が増します。窒素ガスは不燃性なのでより安全性が高いのです。
それから、エアにもし水分が多く含まれていると、気温の激しい上下動で結露を作る可能性があります。水は気体になると体積が約1700倍になるので、水蒸気の膨張によってバーストの危険もあるのです。窒素ガスを使うとメリットは水分を含まないドライエアなのでその点で安全と言えるわけです。
もうひとつ、空気に対して窒素のほうが空気が抜けにくいので、より長い間適正な空気圧を保っていられるというのも、理由のひとつに挙げていいと思います。
そんな具合に極限状態でタイヤを使ったときに窒素ガスは空気よりも優れた点があるわけです。これは同じようにタイヤを極限状態に追い込むレースシーンでも同様のことがいえると思います。
レースシーンでもタイヤの表面温度は80度から100度近くになります。しかもホイールの内側には500度以上になったブレーキがタイヤをホイールごと熱することになります。ですから熱による影響は消して少なくありません。
■シーンによっては一定のメリットがあるが 一般向けとは言えないホントのところ
窒素を充填するにしても普通の空気を充填するにしても、タイヤの空気圧チェックはこまめに行いたい(sum41@AdobeStock)
ただ、窒素が熱膨張しないというのはたぶん何かの間違いで、ボイル・シャルルの法則(一定量の期待の体積は圧力に反比例し、絶対温度に比例する)がほぼそのまま当てはまるので、空気と窒素の間に大きな膨張差はないと考えていいと思います。
だって空気中の約78%が窒素で、約21%が酸素、アルゴンが約1%(ちなみに二酸化炭素は0.03%ほどです)ですから、窒素の性能ではなくドライエアかどうかのほうが大きな影響があるのです。
空気のほうが空気圧が高くなりやすい理由を探すとすれば、空気中に含まれる水分です。実際、最近のレースでは窒素ではなくドライエアを充填する方向に変わってきているようです。
というわけで、乗用車に窒素ガスを入れるメリットですが、[1]エアに含まれる水分量の少なさ、[2]酸化しない、[3]エアの抜けにくさというのが理由に上がりそうです。
空気圧にこだわりたいという方は、窒素ガスの充填をするのがいいのではないかと思います。窒素ガスを充填することのデメリットが特に見当たらないのもポジティブな理由と言えると思います。
ただ、[1]の空気圧の上昇は、限界領域で走るサーキットならともかく、一般道では高速道路を走り続けても空気圧の上昇は1割程度です。
タイヤ交換をした時にタイヤの内部を見るとわかりますが、普通に空気を充填していても、実はかなりカラッとしています。湿っていたりジトジトしていたりというほど水分は含まれていないので、水蒸気が膨張して空気圧が急激に高まるなんてことは起こりません。
タイヤ自体は4年から5年で交換することを考えれば、[2]の酸化による影響は無視していいと思います。ホイールに対する酸化は10年スパンで考えると無視はできないかもしれませんが、クルマの買い替え、タイヤの交換時に手入れをすれば、これもそれほど気にしなくていいものともいえそうです。
[3]エアの漏れについてはどうでしょう。これについてはタイヤメーカーも空気圧チェックを呼び掛けています。
ゴムの気体透過性は天然ゴムを例に挙げると、気温25度で水素を100としたとき酸素が50%ほど、窒素は20%ほどなので、窒素の透過率には差があるのですが、乗用車用タイヤにはエア漏れを少なくするために気体の透過率の悪い(エアが漏れにくい)ブチルゴムを材料にしたインターフィルムが採用されています。
ブチルは水素の透過率を100とした時の酸素の透過率が約3%、窒素に至っては0.5%と、ほとんど漏れがありませんから、エア漏れについても窒素を入れるメリットはあまりありません。
窒素ガス充填と空気の充填でまったく差がないわけではないのです。サーキット走行などを想定しているなら一定のメリットはあると思います。ただストリート用にあえて有料で窒素を入れるほどのメリットはないだろうと思います。
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みんなのコメント
領収書みたら2000円取られてるのに気付いて文句言ってやった
商用の軽自動車に黙って窒素入れるバカ居ないだろw
あれ以来オートバックスに言ってないがまだあんな商売してんのかな?