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内燃エンジンの頂点:V12 フェラーリ812 GTS x 550マラネロ 最大の理解者 後編

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内燃エンジンの頂点:V12 フェラーリ812 GTS x 550マラネロ 最大の理解者 後編

日常的な乗りやすさと秀でたパフォーマンス

フェラーリ599 GTBフィオラノには、エンツォに搭載された140度のV型12気筒ティーポ・ユニットが登用された。最高出力は620psで、0-161km/h加速は7.4秒と、当時のパガーニ・ゾンダSへ渡り合った。

【画像】フェラーリ550マラネロと812 GTS 575Mと最新812コンペティツィオーネも 全60枚

マネッティーノと呼ばれるドライブモードのセレクターは、この時代にステアリングホイールへ追加されている。少々手荒ながらクイックに変速をこなす、パドル付きの6速セミATも。

ハードコアなハンドリングGTEパッケージも登場したが、日常的な乗りやすさと、秀でたパフォーマンス、非の打ち所のないシャシー制御という、見事なバランスは失われていなかった。今でも、グランドツアラーの傑作といえる。

それに続いたのがF12ベルリネッタ。6262ccのV12エンジンは、740psという大パワーを絞り出した。ボディサイズは599よりひと回り小さくなり、車重も70kgほど軽量。成長を続けるボディサイズに対する、アンチテーゼだった。

スタイリングは、フェラーリとしては初めて社内デザイナーが担当。シャシーは612スカリエッティと並行して開発され、エンジンの搭載位置はフロントアクスルより後ろ側。フロントミッドシップとなっている。

見た目の特徴が、エアロブリッジと呼ばれるボンネット両端のえぐれたライン。フロントガラスへ向かう空気を、ボディサイドへ割り振る機能を持つ。フェンダー付近の空気抵抗を減らす目的もあった。

車重は、燃料を満タンにした状態で1715kg。ステアリングホイールは軽く、レシオはクイックで、ボディサイズを感じさせないハンドリングを実現していた。

座るだけでうれしくなる550マラネロ

2017年、現行モデルの812スーパーファストが発売される。基本的には先代の進化版といえ、モデルコードもF152からF152Mと、数字は変わっていない。Mはモディフィケート、改良の略だ。

エンジンは継続採用のF140ユニットながら、排気量を6496ccへ拡大。最高出力800psと最大トルク73.1kg-mという、新次元の数字を実現していた。内部構造は大幅に異なり、新エンジンと呼んでも良さそうではある。

そんな進化を経てきた、V型12気筒のフェラーリ。高性能グランドツアラーに対する考えは、四半世紀で多少変化したかもしれない。それでも、550マラネロのシートに座りエンジンを目覚めさせれば、思わずうっとりしてしまう。

高めに据えられたダッシュボードに、7枚のアナログメーターが美しく並ぶ。アルミ製のオープンゲートから伸びる、球体に削られたシフトノブを握る。

発進させると、コンパクトに感じる。圧倒される雰囲気もない。腕を伸ばすドライビングポジションを除いて、思いのほかクルマとすぐに打ち解けられる。

ミルブルック自動車試験場の南、ハートフォードシャー州のカーブが続く道を、積極的に運転できる。18インチ・ホイールが支える乗り心地はしなやか。シフトレバーを動かすとゲートにカチカチと当たり、顔が緩む。

視界が開けたところで、ストロークの長いアクセルペダルを踏み込む。さっきまで落ち着いて回転していた5.5LのV12エンジンは、勢いよく吹け上がり、漸進的にパワーを放ち出す。

気付くと、驚くほどの速度に到達していた。内装のどこかできしむ音がするが、8万8500kmという走行距離は感じさせない。

ルーフを開きたくなるサウンドトラック

812スーパーファストのスパイダー版、GTSへ乗り換える。車重は550マラネロとほぼ同じ。対して最高出力は485psと800psで、7割も大きい。謙虚に接する必要があるフェラーリだ。

ドライビングポジションはほぼ完璧。フロントガラスの付け根、スカットルが低く、前方が見やすい。操作系の配置も素晴らしい。最高の運転を楽しめそうだという、自信が湧いてくる。

あいにく今日は、812 GTSの能力をすべて確かめられる環境ではない。シャシーの設定は、バンピー・ロードへ柔らかくしてある。

ステアリングホイールには、絶え間なくフロントタイヤの状況が伝わる。舗装や起伏が変化する道路環境では頼もしい。フランス南部までの長距離旅行なら、少し賑やかに感じるかもしれないけれど。

7速デュアルクラッチATは、ひたすら楽しい。スポーツ・モードを選んでいれば、変速は滑らか。ドライバーにも優しい。

アクセルペダルを踏み込むと、速度や選んだギアに関わらず、怒涛の勢いで加速し始める。4速でも、リアタイヤはパワーにグリップが負けて滑り出す。

凍えるような寒さでも、オールドスクールなサウンドトラックが常に一緒。筆者は、812 GTSのフォールディングルーフを開いて運転せずにはいられなかった。

V型12気筒は、内燃エンジンの頂点にある。それは2022年でも間違いないだろう。

番外編:フェラーリはV型12気筒を諦めない

フェラーリにとって、V型12気筒エンジンはブランドのカナメ。そのエンジンを指定して購入するドライバーも多い。環境負荷に対する規制は強まる一方だが、マラネロは可能な限り販売できるよう、対策を施しながら開発を続けている。

英国の場合、フェラーリの1割以上にV12エンジンが載っている。北米では、その割合はさらに高い。

2030年から英国では内燃エンジン車の販売が禁止されるが、それ以降も売れる国は世界中に存在する。その市場のおかげで、V12エンジンの余命は伸ばされるだろう。

ターボやハイブリッドを組み合わせることで、排気量や環境負荷を減らしつつ、パフォーマンスも維持できる。まだ取り組めることは少なくない。

サーキット限定という、フェラーリ・オーナーのコミュニティも世界中にある。2005年にはFXXを、2015年にはFXX Kをマラネロは発売した。V型12気筒エンジンを搭載した、特別なモデルの需要を証明している。

それらのモデルは、サーキットで開催されるイベントのために、フェラーリによって維持されている。公道用モデルに適用される厳しい規制にも、影響されないといえる。

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