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「ガチンコ勝負」開幕! トヨタとスバルが「協調&競争」でカーボンニュートラルに挑む! 両社がモータースポーツでクルマを鍛えるワケとは

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「ガチンコ勝負」開幕! トヨタとスバルが「協調&競争」でカーボンニュートラルに挑む! 両社がモータースポーツでクルマを鍛えるワケとは

■ついにスーパー耐久シリーズ2022が開幕! GR86/SUBARU BRZのガチンコ勝負はどのように始まったのか?

 2022年のスーパー耐久シリーズが開幕。今年から石油製品の精製および販売、電気・水素の供給などをおこなう「エネオス」が冠スポンサーとなり、「ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook」と呼ばれます。
 
 2021年、開発車両の参加が可能なST-Qクラスが新設、このカテゴリーを用いて「カーボンニュートラルの実現には選択肢が必要」と、ルーキーレーシングが水素エンジンを搭載したカローラスポーツで参戦。
 
 当初は孤軍奮闘の戦いでしたが、「意志ある情熱と行動」が多くの仲間たちを呼び、最終戦(岡山)で、スバルとマツダが参戦を表明しました。

【画像】「レースは結果だけじゃない!」 裏側もスゴい! トヨタとスバルのスーパー耐久開幕戦を見る!(50枚)

 2022年のST-Qクラスは水素エンジンカローラに加えて、カーボンニュートラル燃料を用いたGR86/SUBARU BRZが参戦。

 スバルとしては2008年以来となるワークス参戦となりますが、この2台は先行開発車両を公開しながらガチンコで戦う……というのがこれまでの流れでシェイクダウン→トヨタ/スバルの合同テスト→S耐公式テストを経て、ついに鈴鹿で実戦デビューとなりました。

 土曜日の予選前におこなわれた合同記者会見の内容をお伝えしましょう。まずはトヨタの豊田章男社長です。

「昨年の富士で8社だったバックボードのロゴが22社に増えました。『意志ある情熱と行動』に共感をいただいた多くの仲間たちに感謝したいと思います。

 S耐はプロ、ジェントルマン、メカニック、エンジニアが一体となり、市販車に近い状態のマシンで戦うレースです。

 昨年開発ベースの車両が参戦できる『ST-Q』クラスが新設され、水素カローラとGT4スープラをモータースポーツの場で開発することができました。

 さらにS耐が注目されることで、モータースポーツの視野も広がったと思っています。

 今年はカーボンニュートラル燃料を用いるGR86が参戦しますが、昨年チームメイトだった井口選手はSUBARU BRZで参戦します。

 さらにST-4クラスにもGR86が参戦するなど、プロドライバーがさまざまなクラスで参加していることも魅力だと思っています。

 プロ/ジェントルマンに関わらず、全員が『運転大好き』、『クルマ大好き』のメンバー、S耐らしく乗る人も、作る人も、見る人も楽しいレースにしていきたいと思っています」

 2021年同様に、GRが開発したマシンをルーキーレーシングが走らせますが、これにも意味があります。ドライバーの1人であるモリゾウ選手はこのように語ってくれました。

「ルーキーレーシングを立ち上げた理由は単純明快で『私の想い』からです。

 それは何か? 見る人、やる人、参加する人など、モータースポーツに関わる全ての人がブレイクスルーするためのキッカケだと。

 なぜ、それができるのか? それは私が色々な“顔”を兼務しているからです」

 ちなみに「トヨタ自動車・代表取締役社長」、「ルーキーレーシング・オーナー」、「自動車工業会・会長」、「東和不動産・会長」、そして「ドライバー・モリゾウ」に加えて、最近では「FIA評議委員」という肩書も加わっています。

「ルーキーレーシングはプライベーターに軸を置いたチームです。

 トヨタはレースカーのベースとなるクルマを提供し、多くのプライベーターに使っていただきたい……というのが、我々の強い想いです。

 そのときに『プライベーター目線って何?』といったときに、私が『社長』でルーキーレーシングの『オーナー』、そして『ドライバー』である利点を活かすべきだと思いました。

 だから、自らチームを立ち上げました。そしてさまざまな顔を持つ私が『現地現物』で感じて思ったことをいうので、皆が共感して動いてくれると思っています」(豊田氏)

 加えて、GR86のドライバーの1人である大嶋和也選手はこのように語ってくれました。

「昨年までは独自で参戦してきましたが、モータースポーツはライバルと競い合いながら、いかにクルマを速くしていく/効率を上げていくことが醍醐味なので、仲間が増えてくれたのは嬉しいです。

 さらにモータースポーツはファンが見て・応援してくれて成り立っていますので、僕らが真剣に戦っている姿も楽しんでもらいたいです」

■なぜスバルはスーパー耐久に参戦!? 中村社長の想いとは?

 続いて、SUBARUの中村知美社長です。

「スバルは鈴鹿の開幕戦からS耐に参戦します。

 私たちがS耐に挑戦する目的はカーボンニュートラルに向けた選択肢を増やすことと同時に、モータースポーツで求められるアジャイルな開発を通じて、次世代のエンジニアの人材育成をおこなうことです。

 マシンは豊田社長がおっしゃる『意志ある情熱と行動』を持った100名を超える当社の社員が参画して開発・テストを進めてきました。

 参戦表明から今日まで非常に短い期間にそれぞれの社員が日常の業務とレース車両の開発を両立して頑張ってきました。

 参加しているエンジニアは入社3-4年目の若い人が多く、部門の壁を越えてひとつのチームとして連携して試行錯誤しておこなってきました。

 この貴重な経験が、参加するエンジニアだけでなく多くの社員に刺激を与え、それぞれの成長に繋がればと思っています。

 マシンはトヨタさんと燃料の手配/各種安全装備の設計などの『協調領域』と、各サーキットにマッチしたスバル独自の各種セットアップは『競争領域』と棲み分けながら準備をしています。

 昨年の記者会見で『トヨタとはガチンコの勝負』と余計なことをいってしまいましたが、全力でチャレンジすると共にトヨタさん、マツダさんと一緒になってS耐を盛り上げていきたいと思っています」

 ここでのポイントは、今回は「STIではなくスバルがやる」という点です。

 STIはスバルがモータースポーツ活動をおこなうために設立した会社ですが、彼らは「プロフェッショナル」で「勝つ」ことが目的です。

 もちろん、スバルも勝ちにこだわるものの『人材育成』が目的となります。

 スバルの技術トップである藤貫哲郎氏はスバルがS耐に参戦する本質に対して次のように答えてくれました。

「スバルはWRCの参戦で人材が育ちました。活動をやめてから時が経ち、WRCを知るメンバーも少なく、ここでそれが途切れてしまうと……。

 モータースポーツを経験すると、私自身もそうだったのですがクルマ1台を見られるエンジニア/アジャイルに行動ができるエンジニアが育ちます。答えは解りますよね!!」

 加えて、SUBARU BRZのドライバーの1人である井口卓人選手はルーキーレーシングからスバルへと移籍となりますが、このように語っています。

「GR86とSUBARU BRZは、間違いなく比較されると思いますが、我々のマシンに関わっているメンバーは20代前半の若い人ばかりです。

 まだ解らないことがたくさんありますが、レース活動を通じてどんどんいいクルマにしていきたいと思っています。

 今は『ガチンコで勝てる』とはいえませんが、強くなってトヨタに勝てるようにしていきたいです」

■まさかのサプライズ!? スバル中村社長からトヨタ豊田社長にレーシングスーツのプレゼント!

 ちなみに鈴鹿に持ち込まれたGR86/SUBARU BRZには“協調”を象徴するアイテムが装着されています。

 それはリアウィンドウに貼られた「意志ある情熱と行動」のステッカーです。

 これは自動車工業会の豊田章男会長が常日頃から語っている言葉ですが、スバルから「非常にいい言葉なので貼っていいですか?」と豊田会長にお願いをすると、「スバルさん、その思いを大切にしましょう。是非貼ってください」と快諾。

 すると今後はそれを見たGRから「我々のマシンにも貼らせて欲しい」とスバルにお願いがあり提供を受けた……というエピソードが。

 この辺りは「戦いはガチンコだが、カーボンニュートラルへの思いは一緒で共に走る」という意味でしょう。

 さらに記者会見の後にサプライズがありました。

 実は昨年の岡山の記者会見でスバルの参戦発表を受け、モリゾウ選手が「中村社長にはモリゾウをスバルで使ってくださいと提案していますが、相手にしてもらっていない」という笑話に応える形で、モリゾウ選手用のスバル柄のレーシングスーツが送られました。

 これは「スバルは無視していませんよ」という中村社長の反論だったのかもしれません(笑)。

 スーツをいただいたモリゾウ選手はどことなく嬉しそうな表情で、筆者(山本シンヤ)の質問に「いつBRZに乗せてくれますかね? 明日(=決勝日)に着てきましょうか?」とまんざらではない様子でした。

 この辺りからも、トヨタ/スバルの関係性の良さが解っていただけると思います。

 トヨタ/スバルに加えて、マツダも加わった「カーボンニュートラルへの挑戦」と「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」。

 実はS耐の規則書には「環境に配慮しながらモータースポーツ社会の発展」、「培ってきた知識・技術を未来のモータースポーツや自動車産業に繋げる」、「モータースポーツを次の時代に繋げる」というS耐シリーズの理念が掲載されています。

 今シーズンの顔ぶれに、筆者は「この時代がやってきた!!」と感じています。

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みんなのコメント

3件
  • トヨタは供給に頼ってるのに
    自社開発のデザインは最悪ですね。
    しかも相次ぐ不正、、、、、、、
    トヨタグループは反省しないの?社長会見は?
  • 両社が…って言っても親会社はすでにトヨタ。
    スバルは言う事聞くしか無い。
    ヤマハと同じ、程のいい下請け開発会社なんだよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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