■コンセプトモデル「紅旗S9」の生産決定!
日本では、中国の第一汽車の最高級ブランドとなる紅旗の「H9」の日本上陸が話題となっていますが、同じく紅旗からまたもや驚くべきニュースが舞い込んできました。
それは、中国民族系自動車メーカーとして初の1400馬力級ハイパーカー紅旗「S9」の生産が正式に決定したというのです。
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S9とは、2019年9月に開催された「フランクフルト・モーターショー」に紅旗ブランドからコンセプトモデルとして出展されたハイパープレミアムカーです。
中華人民共和国建国70周年を祝うための特別なモデルとしてデザインされ、70周年にちなんで70台の限定生産をおこなうと発表されていました。
4リッターV型8気筒ツインターボエンジンにハイブリッドシステムを合わせたパワートレインの出力はなんと1400馬力超。
今まで見たこともない強烈なインパクトを与えるリアディフューザー、ホイールのデザインも斬新です。
コンセプトモデルの参考価格は1000万元(約1億6300万円)とされており、中国でこれまでに製造されたクルマのなかでは群を抜いて高額です。
静止状態から時速約100キロまではわずか1.9秒。最高時速は約400km/hと世界最速レベルのストリートカーです。
見た目も中身も超ハイスペックなハイパーカーですが、これまで中国VIP御用達の高級セダンやSUVだけをラインナップしてきた紅旗にとってはまったく新しい分野のクルマとなるため、「本当に実現できるのか?」と発表された当初に筆者(加藤久美子)は思っていました。
しかし、その日は突如として訪れました。2021年2月2日、第一汽車は合弁事業の正式な立ち上げを記念して、提携する企業の詳細や設計・生産に関する詳細を公開。
関係各社や各国の政府関係者も参加したオンライン締結式がおこなわれたのです。
合弁事業ではS9を始まりとして、新しいフルエレクトリックおよびハイブリッドラグジュアリーモデルを発売する予定だといいます。
第一汽車はスーパーカー業界へ進出するための重要なパートナーとして、アメリカのEVベンチャー「シルクEV」と、イタリアのエミリア・ロマーニャ州政府を選びました。
第一汽車はそのベンチャーと共同でエミリア・ロマーニャ州のモデナにてこの新しいハイパーカーを開発していくと発表しています。
出資額は合計で100億人民元(約1630億円)となっていますが、出資割合などは現時点で不明です。
第一汽車といえば中華人民共和国で最初に設立された国営自動車メーカーで、紅旗ブランドは中華人民共和国の歴史と深く関わっている伝統のブランドです。
中国建国の父、毛沢東主導の第一次五カ年計画によって1953年に設立され、1958年に毛沢東が軍事パレードを閲兵するための専用車として最初の紅旗を完成させました。
政府高官やVIPに愛されてきた高級車を多数生産してきた紅旗が、今度はアメリカやイタリアの企業と手を組んでこれまでにないハイパーカーを世に送り出すことになります。
このパートナーシップは中国が急速に推し進めている一帯一路構想が背景にあるといいます。
第一汽車のトップを務める徐留平 董事長(CEO)は、次のように語っています。
「ハイエンドなスポーツカーに対するサプライチェーンがイタリアには揃っています。
合弁事業によって開発される『S』シリーズは、第一汽車の紅旗ブランドとなり、2030年までに年間100万台の紅旗車を販売するという目標をサポートします」
アメリカとイタリアを巻き込んだ、第一汽車初の偉大なるプロジェクトへ大いなる期待を寄せているようです。
■紅旗Sシリーズのデザインを担当するのは、あの超有名デザイナー?
市販版のS9をはじめ、今後発表されていく紅旗Sシリーズのデザインを担当するのは、イタリア出身の世界的カーデザイナーとなるワルター・デ・シルヴァ氏です。
日本にも多くのファンを持つデ・シルヴァ氏は1972年からフィアットをはじめ、アルファロメオ、フォルクスワーゲン、アウディなどでデザイン部門のトップを務め、アルファロメオ「156」、アウディ「TT」、フォルクスワーゲン「ゴルフ」、ランボルギーニ「エゴイスト」など数々の名車を世に送り出してきました。
今回の第一汽車・シルクEVのジョイントベンチャー「シルクFAW」においてスタイリングおよびデザイン担当の副社長に任命されており、新エネルギー車となる紅旗「Sシリーズ」の全ラインナップを担当します。
ところで、中国ブランドの電動ハイパーカーといえばNIO「EP9」も話題になっています。
NIO(上海蔚来汽車) は、2014年11月に創業した上海の自動車メーカーで、ドイツ・ミュンヘンにデザイン拠点、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼに開発拠点兼北米本部を置いており、電動車と相性が良い自動運転の試験車両としてカリフォルニア州の認可も受けています。
最高出力1341馬力のEP9は16台が生産され、初期の投資家向けに1台150万ドル(約1億5820万円)で販売されました。
製造コストが高いことでも有名で1台あたり120万ドル(約1億2660万円)もの費用が掛かっているそうです。
NIOはフォーミュラEなどのモータースポーツにも参戦し、輝かしい戦績を残していることから、紅旗のS9は良いライバルになりそうです。
では、日本のスーパーカー専門家は紅旗S9をどう見ているのでしょうか。日本スーパーカー協会代表理事の須山泰宏氏に印象を聞いてみました。
「紅旗S9の市販に向けた生産が発表されたと聞いて、ただただ驚いています。
その独自性の強い先進的なデザインと世界最高レベルのハイブリッドによる出力がもたらすパフォーマンスは、世界のハイパーカーを脅かすには十二分の存在だと思います。
これから電気自動車で世界を席巻しようとしている中国の、ある意味、象徴的なクルマだといえそうです」
※ ※ ※
電気自動車においては、各メーカーが専用モデルを設定するほどの盛り上がりを見せている中国市場ですが、今後は超高級なスーパーカーにおいても新たなムーブメントを巻き起こすかもしれません。
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