先頃発表されたトヨタ 新型クラウンには21インチホイールを標準装着したグレードが設定されている。遠い昔、スポーツカーですら足もとに14インチや15インチが標準だった時代を知るおじさん世代にとっては、「そこまで来たか……」と思わせる事象である。
今回は、トレンドとなったホイールの大径化のメリットやデメリットについてレポートする。
21インチって……自転車かよ! 新型クラウンまで採用した大径ホイールの功罪
文/フォッケウルフ
写真/トヨタ、三菱、ホンダ、日産
■ホイールが生み出す「踏ん張り感のある力強いスタイル」
スタンダードグレードが19インチで、上級グレードには21インチを標準装備となって、18インチがオプションとは……。先ごろ発表された新型クラウンの足もとには、「従来のセダンの常識を打ち破る!」という名目の一端として、大径ホイールが採用された。
ホイールの大径化は、トヨタの狙いにもあるように、「セダンでもSUVでもない、踏ん張り感のある力強いスタイル」の形成に大きく貢献する。
「セダン」ではなく「クロスオーバー」モデルが主軸として発表された新型クラウン
ちなみに大径化に際しては、「ボディ側面近くまで外側に張り出した足まわりと、ボディとタイヤの隙間のバランスも徹底的に吟味した」ということで、足もとだけが浮いて見えるような違和感はない。
先代型に比べて全長20mm、全幅は40mm、全高も95mm拡大されたボディサイズを鑑みれば、新時代のフラッグシップとしては足もとには立派な履物を誂えるのが必然と言えるのかもしれない。
新型クラウンに限らず、今どきのクルマはモデルチェンジのたびにボディサイズが大きくなる傾向にある。ボディサイズが拡大する最たる理由は、厳格な安全基準に適合するために、十分な衝撃吸収性能を備えた大柄なボディが必要となったからだ。
大きくなったボディに従来と同じサイズのホイールでは見栄えもよくないし、大きくなったぶん、車重も増加しているわけだから、足もとを支えるホイールとタイヤのサイズアップは必須となる。
■大径ホイールのエポックメイキング的モデルは?
ホイールの大径化には、組み合わされるタイヤの進化が深く関わっている。クルマの性能が著しく向上し始めた1970年代は、走りを支えるタイヤにも高い能力が求められるようになり、扁平率が70%とか60といった低扁平タイヤが登場した。しかし、当時は低扁平タイヤに対して国内では規制が設けられており、扁平率60%の60タイヤの装着は1983年まで認められていなかった。
エアロパーツなどの車両部品とともに60タイヤが解禁されて以降、1988年には扁平率50%と55%が、1994年からは扁平率45%も認可された。こうしたタイヤの進化が、装着できるホイールの可能性を広げたわけだが、そんななか最初に50タイヤと55タイヤを標準装備した三菱スタリオンGSR-VRは、フロント55タイヤ、リアに50タイヤを履くという前後異サイズとしたことも相まって大きな話題となった。
三菱が80年代に発売したスポーツクーペ、スタリオン。FRの駆動方式にサイバーなデザイン、ターボエンジンなどで人気を誇った
低扁平タイヤが認可されて大径ホイールが履けるようになったことで、インチアップがカスタムの常套手段となって、アフターマーケットでは16、17、18インチといったホイールが主流となり、純正でもそれらのサイズがより高い性能が求められるスポーツカーなどの特別装備として採用されるようになる。
そして2004年、セドリックおよびグロリアの後継車種として登場した日産フーガの350GTスポーツパッケージに245/40R19インチの大径タイヤ&ホイールが設定され、大径ホイールは高性能車の証として広く認知されるようになる。
■クラウンの乗り味に注目が集まる!
近年では、軽自動車でも15インチ、高級車や高性能車でなくても16インチや17インチホイールが当たり前になった。ホイールを大径化すると同時に、組み合わされるタイヤも大きくなって、なおかつ低扁平化される。
そもそもタイヤは荷重を支え、駆動力や制動力を路面に伝達し、方向を変えたり維持したりするほか、路面からの衝撃を緩和するといった役割を持つパーツだが、これがホイールの大径化に伴って低扁平化されることで走りに大きなメリットをもたらす。
大径が当たり前になりすぎて、軽自動車が15インチホイールを履いていてもそれほど気にならなくなってきた
また、ホイールの大径化によって外形が大きいブレーキシステムの搭載も可能となった。ブレーキローターとキャリパーが大きくなればブレーキの熱容量が増大するので、高い制動力を発揮。低扁平化で接地面が拡大して操舵に対するレスポンスがよくなったり、抵抗が増大することでカーブや制動時のグリップが高まることによる相乗効果が、安定性の向上をもたらし大きな安心感を提供するわけだ。
ただし、ホイールの大径化はいいことばかりではない。操舵のレスポンスがよくなる一方で、状況によってシビアに感じることもあるし、なによりバネ下重量の増加とサイドウォールが固くなることで乗り心地が悪化する傾向にある。
実際、同一車種で18インチと17インチがあった場合、後者のほうが乗り心地に優れているというケースはよくある。新型クラウンでは、大径ホイールを装着してもしなやかな動き、目線のぶれないフラット感と振動の少ない質の高い乗り心地を追求しているようなので、その乗り味には大いに期待したいところだ。
インチアップがドレスアップにおける常套手段であることからも、ホイールの大径化がアグレッシブでスポーティなイメージがプラスできるのは、自動車メーカーの車両開発においても至極当然のことになったようだ。
大径ホイールに組み合わされる低扁平タイヤは乗り心地が悪いとか、路面の凹凸に対して敏感だとか、リプレイスする際にもコストがかかるというデメリットがあったが、ある程度は技術の進化でカバーされてきた。
走行パフォーマンスアップを実現し、なおかつカッコいいルックスが得られるなら、アフターパーツのカスタマイズで大径ホイールの装着にこだわるってみるのも、クルマ好きの正しい姿かもしれない。
※編集部注:ドレスアップカーでよく見る過度に扁平率が低いタイヤは、車道と歩道の境にある段差やコンビニなどの縁石に強く当てると、ホイールのリムを破損しやすいなど問題もある(引っ張りタイヤも同様)。アフターパーツを選ぶ際には、注意をしていただきたい。
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みんなのコメント
大径タイヤは金型代さえ回収できれば、材料は少ないのであとは儲かるだけです。
一方デメリットは、タイヤ幅のワイド化によるハンドルの切れ(曲がるときの回転半径)が大きくなること、タイヤのパターンノイズが大きくなること、乗り心地が悪くなること、パンクしやすくなること、とデメリットの方が大きいと思う。タイヤの扁平率も標準仕様では極端に小さくしない方が良いと思います。