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聞き飽きないV型12気筒 フェラーリ250 GTE モータースポーツを支えた2+2 後編

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聞き飽きないV型12気筒 フェラーリ250 GTE モータースポーツを支えた2+2 後編

250 GTEの魂といえる3.0L V型12気筒

フェラーリ250 GTEの正式名称は、250グランツーリズモ・クーペ・ピニンファリーナ2+2。都市部のモーターショーではなく、1960年のル・マン24時間レースでお披露目されている。

【画像】FRで2+2のフェラーリ 250 GTE GTC4ルッソと現行のローマも 全70枚

シャシーはティーポ508型の進化系。1954年の250 ヨーロッパGTから継続登用されていた。また、カロッツェリアのボアーノ社とエレナ社がボディを手掛けた、250 GTクーペへも派生している。

250 GTEでは、2600mmというLWB仕様のホイールベースはそのままに、エンジンの搭載位置を200mm前方へ変更。フロントのバルクヘッドは300mmも移され、リアアクスルの前に充分な広さのリアシートを据える空間が捻出されている。

シャシーには縦方向の補強材が追加されていたが、オーバードライブ・ユニットを搭載する都合上、250 GTEではそれが省かれていた。フレームには、508Eと記されている。

サスペンションは、フロントがウイッシュボーンによる独立懸架式で、リアはトレーリングアームとリーフスプリングを用いたリジットアクスル式。ダンパーが前後に組まれる。

トランスミッションは、オーバードライブを備えたオールシンクロの4速マニュアル。ブレーキは、サーボ付きのダンロップ社製ディスクを採用した。

そして250 GTEの魂といえるのが、3.0LのV型12気筒エンジン。自動車ジャーナリストのデニス・ジェンキンソン氏は、V12でなければフェラーリのブランド像はここまで崇高なものにならなかっただろう、と語っている。

タイトコーナーを滑らかに素早く駆け抜ける

このエンジンの源流となるのは、1945年に技術者のジョアッキーノ・コロンボ氏が設計した1.5Lユニット。2+2の250 GTEでは、ティーポ128Eへと進化しており、トリプル・ウェーバー・キャブレターを載せ238ps/7000rpmを発揮した。

ちなみに、エンジンとシャシーにEが振られていたことが、2+2のクーペがGTEやGT/Eと呼ばれる理由になっている。

スティーブン・ピルキントン氏は、今回のクラブ・ツアーイベントに参加した13台の250 GTEのうち、5台のオーナー。娘のスージ・ピルキントン氏は、真っ赤なボディが眩しいシリーズ2の運転を、筆者に許してくれた。

最近レストアを終えたばかりで、コンディションは最高。ランチタイムの間、英国郊外の一般道を自由に走らせることができた。

イグニッションキーを時計回りに2度傾け、それから押し込むとコロンボ設計のエンジンが目覚める。運転席の座面が低く、フェラーリに包まれた感覚にれなる。

流れの良い道を走らせれば、本来の調子が顕になる。前後の重量配分は、ピニンファリーナ・クーペの250 GTの49:51と比べて55:45とフロント寄り。連続するタイトコーナーを弾くようには処理しないが、滑らかに素早く駆け抜ける。

サーボアシストされるブレーキが、進入時の自信を高めてくれる。ステアリングホイールもペダル類も、重すぎることはない。落ち着いて、ハイスピードで運転できる。この印象を素晴らしいものへ高めているのが、間違いなくフロントのV型12気筒だろう。

素晴らしいサウンドがドライバーを満たす

現代の基準でも鋭いと表現できるほど、直線加速は意欲的。聞き惚れるような素晴らしいサウンドトラックも、常にドライバーを満たしてくれる。

低回転域から美しい和音を奏で、回転上昇とともにハードな音質へ変化していく。大人が嗜む2+2のグランドツアラーというより、モータースポーツが似合うベルリネッタのようなサウンドだ。オーナーの誰もが、聞き飽きないと話すのにも納得できる。

ツアーイベントでは、グレートブリテン島中部のコッツウォルズ地方にある小さな村、ブロードウェイを目がけて北上するという。250 GTEと330 アメリカ、15台のクラシック・フェラーリの行列が迫ってきたら、誰もが振り返るに違いない。

真新しいポルシェ911のドライバーでさえ、目が奪われるはず。このまま同行したいところだが、英国編集部の約束はお昼すぎまで。美しい車列を見送ることになった。

価値の上下動にとらわれず、クラシックカーを運転して楽しむというオーナー像に惹かれてしまう。投資対象に捉えていたら、走行距離を積極的に伸ばそうとは考えないだろう。

330 アメリカのオーナー、ブライアン・ボルジャー氏は、ルーフに2台のマウンテンバイクを載せて普段も旅行を楽しんでいるという。オーナー同士の友情も深いようだ。

近年になって、多くのコレクターが価値を再認識し始めたフェラーリ250 GTE。だが、これまで見過ごされてきたクラシックを、彼らは以前から大切に維持し楽しんできた。その誇りが、表情へ滲み出ているように思えた。

番外編:エンツォも運転した250 GTE

今回のイベントに参加したデビッド・ウィーラー氏は、250 GTEに関して知らないことがないほど、深い知識を有している。実際、専門書の執筆も手掛けた。シャシー番号2713GTのシリーズ1と、素晴らしいフェラーリ・ライフを謳歌している。

「このクルマは、ちょっとしたテストに用いられていました。ニュルブルクリンクのパドックにその写真が残っていますが、エンツォ・フェラーリ氏がF1イタリア・グランプリに乗り付けたクルマでもあるようです」

「確証は取れていません。でも、素晴らしいストーリーだと思いませんか?」。さらに、シリーズ3のスタイリングを決めるうえでのプロトタイプにもなったようだ。

「レーシング・ドライバーのマイク・パークス氏が、フェラーリに加わったのは1963年1月。会社から貸与車両として渡されたのが、このクルマでした。その時点でシリーズ3風に改良を受けています」

「オリジナルのボディはベージュでした。ですが、美しいゴールデン・ブラウン、ノッチョーラに塗装し直されています」

ウィーラーは、ほかにもV型12気筒のフェラーリを多数所有してきた。だが、近年になってアメリカから英国へ引っ越した際、手元に残したのは250 GTEだけだったという。

「美しいクルマです。ボディラインはエレガントで、1960年代のピニンファリーナ社のベストだと考えています。2+2のボディは大きいですが、軽くて扱いやすいクラシック・フェラーリです。運転するのが楽しくて仕方ありません」

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みんなのコメント

3件
  • この250GTEのジャッロモデナ(イエロー)の一台が、ここ日本でも走っていますね。
    猛々しいイメージの現代のフェラーリとはうって変わって、実に楚々とした
    端正なスタイルのクルマです。
    またどこかのイベント等でお見掛けすることがあるかもしれません。
  • V12にしないと走らない車より、EV FCV化したほうが楽だろう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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