グループB伝説を象徴するモンスター
アメリカでは、冬の避寒リゾート地として知られているアリゾナ州スコッツデール。およびその近隣の大都市フェニックスでは、毎年1月下旬に複数のオークションハウスが大規模なオークションを一堂に開催した。その年のクラシックカー/コレクターズ市場を占う、年始の恒例イベントとなっている。なかでも、クラシックカー/コレクターズカーのオークションハウスとしては最大手と目されるRMサザビーズ北米本社がフェニックス市内で開催する「ARIZONA」は、規模・内容ともに、1月のアリゾナのオークション群の中でも最上級のものとして知られる。今回は2024年版の出品車両の中から、伝説のグループBモンスター「アウディ・スポーツクワトロ」をピックアップ。その概要とオークションレビューをお届けしよう。
1億7600万円の最後の後輪駆動マシン世界王者! ランチア「037」はニュルブルクリンクでは宿敵アウディ「クワトロ」より速かった!?
WRCでの勝利のために魔改造されたクワトロとは?
1983年シーズンからWRCの最上級カテゴリーとなったFIA「グループB」規約は、当時の自動車メーカーにとっては大胆な新技術を開発・導入するためのプラットフォームとなった。そして、それまではオフロードカー用の技術だった4輪駆動のコンセプトをラリーのスペシャルステージに適用することで、モータースポーツのありかたを変えてしまうとともに、今では当たり前となったオンロード用高性能車の4輪駆動の先駆けとなったアウディこそが、その改革者というべきだろう。
アウディは、FIAがホモロゲーションのカテゴリーを変更する以前の1981年から、元祖「ビッグクワトロ」を旧「グループ4」にホモロゲートし、ワークス体制でエントリーしていた。そしてアウディが4WDシステムを一気に普及させたことによって、グループBマシンたちは信じられないほどのスピードを獲得。最終的には、制御不能なレベルの危険をもたらすことになってしまうのだが、同時に自動車テクノロジーの推進に貢献したのも、まぎれもない事実である。
グループB初年度の1983年にタイトルを獲得したランチアは、同じ年から並行してデルタS4の開発を開始するなど、ほかのメーカーも4WD化に追随しようとしたが、この時点におけるアウディのアドバンテージは明らか。そののちのラリーシーンを圧倒し、3つのドライバー部門および製造者部門世界タイトルによって証明された。しかしその成功の裏で、クワトロのアキレス腱は重量とその配分であることも顕在化していた。
そこで1984年シーズンの実戦投入を期して開発された「スポーツクワトロ」は、「ビッグクワトロ」のホイールベースを300mmも短縮し、事実上の2シーター化を図ったほか、ホイール/タイヤを拡幅するためにブリスターフェンダーもワイド化。ボディパネルは軽量化のため、ケブラーやカーボンファイバーがふんだんに使用された。
そしてパワーユニットは、オリジナルのビッグクワトロの直列5気筒SOHC10バルブ+ターボから、同じ直列5気筒でもDOHC20バルブ+ターボに進化。市販ロードバージョンでも300psの最高出力をマークし、最高速度248km/h、0-100km/h加速4.5秒というパフォーマンスを獲得していた。
日本で過ごした歴史を持つ、純白のスポーツクワトロ
このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2024」オークションに出品された市販ロードバージョンの白いアウディ・スポーツクワトロは、赤いボディカラーがデフォルトのこのモデルとしては、かなり希少なホワイト。そして日本に新車として輸入された、数少ないスポーツクワトロのひとつと思われる。
オークション前の「プレビュー」段階でこの個体の出品を報じた、さる国内自動車メディアの情報によると、ファーストオーナーとなったのは日本を代表するフェラーリ愛好家のひとりで、往年のフェラーリF1マシンを「チャオ・イタリア」などのサーキットイベントなどでも走らせている大人物とのことである。
いっぽう、北米ラリー選手権でドライバーとして戦っていた経歴もある今回のオークション出品者は、約10年前に当時のオーナーからこのスポーツクワトロを譲り受け、そののち高レベルの手入れを続けてきたという。
現オーナーの手にわたって以来、スポーツクワトロは細心のケアとともに保管・メンテナンスされ、かつては彼のラリーチームのヘッドクォーターとして使用されていた、空調管理された施設周辺限定で、毎月一度のペースで走行されているとのことである。
そして現所有者のもとで600kmあまりのマイレージを重ねたのちに、ミネソタ州チャンハッセンの「アンダーソン・モータースポーツ」社、およびミネソタ州セントポールのアウディ正規ディーラーにて、予備的なメンテナンスサービスを行ったとのことである。
また、純正ツールセット一式にジャッキ、オーナーズマニュアル、サービスマニュアル、無線機のマニュアル、輸入された際の手続き書類コピー、かつての売渡請求書、サービスインボイスなど、40年のヒストリーを物語るドキュメント類も、販売に際しては添付されるという。
クラシック音楽界の「帝王」、指揮者にして生粋のカーマニアとしても知られていたアルベルト・フォン・カラヤンが誰よりも早くオーダーした……、などという逸話も残されているアウディ・スポーツクワトロ。その生産台数はグループB規定に準拠した200台とされていたが、実際には214台(ほかに諸説あり)が製作されたとのことである。
それでもごく少数であることに変わりはなく、ロードバージョン/ラリー用のグループBカーを問わず、あるいはコンディションの善し悪しを問わず、一般のクラシックカーマーケットで販売される機会は、かなり稀なもの。もしも売りに出されたなら、目の肥えたコレクターによって早々に囲い込まれてしまうのが常である。
この純白のスポーツクワトロは、並外れた保存状態の良さにくわえ、日本のみならず世界中のコレクターにとっても魅力的なストーリーを兼ね備えており、この種のモータースポーツ用ホモロゲートスペシャルの中でも、とくに注目に値する伝説的マシンとのこと。そんな謳い文句とともに、RMサザビーズ北米本社と現オーナーは、57万5000ドル~70万ドルというエスティメート(推定落札価格)を設定した。
そして1月25日に行われた競売では、66万5000ドル。日本円に換算すると約9900万円で落札され、近年の国際マーケットにおけるグループBホモロゲートスペシャルの相場が、依然として高値安定であることを裏づける結果となったのだ。
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みんなのコメント
その個体が今こうやって記事に上がっていることが胸熱です。
エンスー熱が高まったバブル期の名残かもしれないが
結局過去にすがるしかないのかという寂しさというか侘びしさもある