電動化が進む今後、V8プラグインハイブリッドのミドシップがフラッグシップとなりうる。そこで8気筒以上のマルチシリンダーモデルを、今のうちに狙っておきたい。2+2のFRモデル、ポルトフィーノMとローマが狙い目だ。シンプルビューティなローマか? 1粒で2度美味しいポルトフィーノか? 新車でV8を買うチャンスはもはや限られている。
新車でV8を買えるチャンスはもはや限られている
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296GTBが発表されたことで、がぜん、V8エンジンの行方に注目が集まっている。296にはその名の通り2.9リッターのV6エンジンが搭載されたものの、プラグインハイブリッドシステムを備えたPHEVとなったことで、現行のV8ミドシップモデルを上回る性能を発揮することになった(フィオラノサーキットのラップタイムランキング参照)。事実上、F8シリーズの後継モデルとなることは間違いない(F1マシンが既にV6であることも思い出して欲しい)。しばらくは併売されるので、マラネッロもまだそうとは認めていないけれど。
フィオラノサーキット 市販スポーツモデルのラップタイムランキング ベスト10※フェラーリではこのランキングがラインナップ(GTモデル以外)のヒエラルキーを端的に表している
1位:SF90ストラダーレ V8 TB PHEV(ツインターボ、プラグインハイブリッド) 1分19秒
2位:ラ・フェラーリ V12 HEV(ハイブリッド) 1分19秒7
3位:812コンペティチオーネ V12 NA(自然吸気) 1分20秒
4位:296GTB V6 TB PHEV 1分21秒
F12 tdf V12 NA(自然吸気) 同秒
6位:812スーパーファスト V12 NA 1分21秒5
488ピスタ V8 TB(ツインターボ) 同秒
8位:F8トリビュート V8 TB 1分22秒5
9位:F12ベルリネッタ V12 NA 1分23秒
488GTB V8 TB 同秒
今現在、マラネロのトップ・オブ・レンジは、フィオラノベスト10を見ても分かるように、SF90シリーズだ。伝統の12気筒FR2シーターより上位のモデルであることはマラネッロも認めているし、何より5340万円~という車両価格もそれをよく物語っている(812スーパーファストの値段は約4200万円~)。ひょっとすると、PHEV化の難しい12気筒FRに代わって、このV8プラグインハイブリッドを積んだミドシップが今後のフラッグシップモデルになるかもしれない。
もしそうなると今後は、スペチアーレのみとなる可能性の高い12気筒はもちろんのこと、8気筒であってもおいそれと買えなくなる。だからF8スパイダーを今のうちに買っておけ、と言いたいところだけれど、これまたきっと残り少ない。(ついでに言っておくと、もしチャンスがあれば12気筒NAの812GTSならもっといい)。
フェラーリのマルチシリンダーモデルは、最低でも8気筒が欲しい。こうなってくると現実的なセンでは勢い、アプルーブドカーなど中古車を探すことになるが、需要は旺盛で、すべてのモデルの相場が高止まり状態だ。それにやっぱり新車で欲しいという人も多いことだろう。
となると狙うは残りのV8モデル、2+2 FRモデルのローマとポルトフィーノM、ということになる。この両モデルも次世代ではおそらくダウンサイジングされるはず。フェラーリの歴史には4気筒モデルだって存在するから、昨今のCO2削減圧力を考えると、何が起きてもおかしくない。最低でもPHEVにしなければいけないとなると、前述したようにフロントミドシップのFRモデルに重いバッテリーを積むことが難しいから、内燃機関に思い切ってメスを入れる必要があると思う。BEV化だって視野には入っているだろう。
いずれにしても新車でV8を買うチャンスはごく限られている。跳ね馬マルチシリンダーファンはローマやポルトフィーノMをゲットしておくにこしたことはない。ちなみにいずれのモデルにも同じパワートレーンが積まれている。
2台のFR V8モデル、ベストバイは?
そこから先、どちらを選ぶかが実に悩ましいのだ。オープンカー好きは黙ってポルトフィーノMである。現時点でローマにオープン仕様がない。けれどもスタイリング的には新しくてシンプルビューティなローマを好むという人が多い。デジタル化の進んだコクピットも好みの分かれるところだが、比べてみれば新しいローマの方が多くの人にウケることだろう(筆者は古いタイプの人間なのでデジタルコクピットを好まないけれど)。
ところがローマのドライブフィールは、そのエレガントなたたずまいとはウラハラになかなか硬派だったりする。前脚の機敏さはフェラーリロードカーの特徴だが、加えて低中速域においては路面の凸凹がステアリングホイールや足元を通じてダイレクトにドライバーへと伝わってくる。60km/hレンジくらいのバイパス道路でちょっと落ち着かない印象があるのだ。だから普段乗りに使いたいくらいシンプルなデザインであるにもかかわらず、毎日乗るには少し辛い。実はこれはマラネッロの狙い通りで、ローマには美しい本格FRスポーツカーという開発テーマがあった。
一方のポルトフィーノMは先代カリフォルニアから続くリトラクタブルハードトップモデル(RHT)であり、クーペとオープンの両方を楽しむことができる。マルチシータースポーツカーにおける世界のトレンドは今、よりエレガントなソフトトップに向かっているから、RHTそのものもラストチャンスになる可能性がある。トップを閉じて走るとその乗り味はローマのそれとよく似ているのだが、心なしかマイルドだ。トップを開けるとさらに変わる。肩の力がすっきり抜けたようで、低中速域での乗り心地ははっきりと良くなった。落ち着いて走っている気になる。洗練されているとも思う。この乗り味をクーペのローマにも欲しかったと叫びたくなる。
もちろん、どちらのモデルもグランドツーリングカーとして、また、ワインディングロードを駆け抜けるスポーツカーとしては一流である。V8ノートを余すところなく楽しめる、という点ではオープンのポルトフィーノMに軍配が上がるけれど、ローマのエンジンノートだって耳に心地よい。加速パフォーマンスは強力で、クラストップレンジにあることは間違いない。
スタイリングではローマ、ドライブフィールではポルトフィーノM。これは本当に悩ましい。ローマのソフトトップモデルさえ登場してくれたなら、こんな悩みは一発で解消されるのだけれど。
文・西川淳 写真・柳田由人 編集・iconic
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みんなのコメント
納車されてから10日目だけど主に高速道路で慣らしながら乗って、もう走行距離は今週中には1000kmに到達するかな。
昨日は天気が良くて、高速のSAでトイレ休憩した時もローマの周りで写メしてる人が居たなぁ笑