2019年9月17日に発表された新型カローラ。出足は好調のようで、予定していた月販目標の2倍以上の受注を獲得したと、10月17日にトヨタが発表した。
とはいえ、それを額面どおりに受け取っていいものなのか? 今まで旧型の乗ってきた人の買い替えや、ディーラーへの試乗車、営業車の買い替えなど、最初だけの受注ではないのか? とも考えられる。
【カローラがまさかの販売首位奪還!!】「昭和の車」 が根強く支持される理由
今回は、この好調さがご祝儀相場によるものなのか、それとも国民車と言われたあのカローラの人気が復活したことによって獲得した数字なのか、販売の現場を取材することで明らかにしたい。
文/遠藤徹
写真/編集部、TOYOTA
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■速報値だけでは判断できない好調さ
12代目の新型カローラが登場したのが、2019年9月17日のことだった。トヨタの発表によると「発売1カ月後の受注台数は2万台を突破し、計画の2倍以上に達した」と好調なスタートぶりを明らかにしている。
手前からカローラスポーツ、カローラ(セダン)、カローラツーリング。トヨタの発表ではこの3モデルを合わせて2万2100台を達成したとのことだ
しかしながら、扱い店のトヨタモビリティ東京や他地域のカローラ店を回り、営業担当者の見解を聞くと、さまざまなコメントを寄せており、現段階では好調かそうでないかを判断するのは難しい状況にあることがわかった。
発表のオフィシャルデータは必ずしも正確ではない。9月17日の発表、発売だが、実際はその1カ月半以上前の8月上旬に価格を決めて、先行予約をスタートさせているのだ。したがって発売1カ月後の受注台数は正確にいうと2カ月半であり、「2万台突破」というのはごく普通のレベルといえなくもない。
また受注台数の中身も代替えを中心とした一般のファミリーユーザーの他法人(一般法人、トヨタ関係会社、取引のある法人、トヨタレンタリース)、試乗車などのデモカーが集中しているためのスタートダッシュの側面もある。
新型発表後も、前モデルのセダン(アクシオ)とステーションワゴン(フィールダー)を1年の期限付きで継続販売しているが、これらは「法人ユーザー向けに価格の安い5ナンバーサイズ車を買い求めるために残した」(首都圏カローラ店営業担当者)という事情がある。
1年間の期限付きだが販売が継続されているカローラフィールダー(左上)とカローラアクシオ(右下)。メーカーのホームページによると、現在注文すると納期は2~3カ月(ハイブリッドは3~4カ月)かかる
■販売サイドが気にする価格増
販売が伸び悩む懸念があったのは、新型カローラが3ナンバーサイズに拡大し、クオリティアップで上級シフトしたことや、ハイブリッドモデルを従来の1.5Lから1.8Lに1本化したことで、この分も大幅値上げにつながっていることなどが挙げられる。
従来モデルの消費税込み車両本体価格は、152万6040~261万3600円だったのに対して、新型車(継続販売車を除く)は216万9200~299万7500円であり、その差は64万3160~38万3900円となっている。消費税を10%に引き上げた分を差し引いても30万円以上も値上げした計算になる。
これに対して、首都圏にあるカローラ店の営業担当者は「カローラという名称を引き継いでいるが、まるで違う上級のクルマというコンセプトでお客さんに売り込むようにしている。ハイブリッドモデルが1.8Lに1本化し、3ナンバーサイズでクオリティを上げている。安全対策も新しいデバイスを標準装備している」とコメントしている。
一本化された1.8Lハイブリッドエンジン。価格は上がったが、販売比率を見るとハイブリッドモデルの人気が高い
大幅値上げをカバーする対策も実施している。そのひとつが残価設定クレジットの奨励である。車両本体の3分の1程度を残価とし、残りの70%を5年間の分割払いにすると、通常ローンよりも毎月の支払額がさらに安くなる。
例えば、新型カローラHVS(FF)を購入するのに約300万円の支払を頭金100万円、割賦元金200万円を48回払いで残価設定クレジットを組むと初回が3万3265円、残りの46回は3万2000円とリーズナブルな計算になる。この場合の実質年利は5.5%と高めだが、5年後の精算では無傷だと、残価を大幅に上回りその分お得になる仕組みにしている。
また販売店によって差があるが、12月末までのキャンペーン期間は10万円程度の車両値引きと、10万円分の用品サービスと、新型車にしては異例の特別セール企画も実施している販社が目につく。高額で売りにくい新型カローラを少しでも買い得に見せたいアピールともいえそうだ。
■気になる納期と売れ筋は?
11月上旬現在の納期は1~2カ月となっている。販社によってばらつきがあるのは、最初の見込み客の集中を見込んで、多めにメーカーに発注をかけているかどうかがあるため。それにしても、ブランドパワーのある新型カローラにしては納期が短めともいえる。
ボディタイプ別の大まかな受注構成比はツーリングが50%、スポーツ30%、セダン20%となっている。ハイブリッドは全シリーズの60~70%と高い。メイングレードは、ツーリングは最上級のW×B、セダンは中間のS、 スポーツは最上級のG"Z" となっている。
トヨタの開発陣は「新型カローラは、若者受けをするデザインを採用して開発した」と発表会の席上で明らかにしている。これに対して、首都圏にあるカローラ店の営業担当者は「現段階では受注台数の年齢層は35歳から80代までの幅広い層が買い求めており、歴代モデルとそれほど大幅に変わっていると印象はない」と受け止めている。
開発者としては若返りを狙った新型カローラ。TRDやモデリスタといったメーカー系チューニングパーツも、スポーティなイメージのものが多い
■販売の現場から見た新型カローラ
●証言:首都圏カローラ店営業担当者
新型カローラは3ナンバーサイズに拡大しクオリティアップし、エンジンもハイブリッドは1.8Lに1本化。安全対策も、最新デバイスを採用するなどして上級シフトし、価格も大幅アップしたので、フルモデルチェンジではないが、まったく新しい小型車が発売になったと受け止めている。
商談にかなり時間がかかっているので、飛ぶように売れるというわけにはいかない。歴代モデルのユーザーだけでなく、プリウス、カムリ、プレミオ、アリオンなどいろいろなオーナーからの代替えが目立っている。当社は、年末までの分を余計にメーカーへ発注しているので、1カ月もすれば納車は可能な状況にある。
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