この記事をまとめると
■2023年5月25~28日に開催されたスーパー耐久第2戦
0分山だけどすり減った市販タイヤとは違う! レース用のタイヤはなぜ「テカテカ」「ツルツル」なのか
■オフィシャルサプライヤーのハンコックの工場火災により急遽ブリヂストンがタイヤを供給
■ST-4とST-5クラスのマシンにはスリックではなく市販ラジアルが装着された
24時間の耐久レースに市販のSタイヤを使用!?
スーパー耐久の第2戦「NAPAC富士SUPERTEC 24時間レース」が5月25日~28日、静岡県の富士スピードウェイを舞台に開催。FIA-GT3車両を使用した最高峰のST-Xクラスでは14号車「中升ROOKIE AMG GT3」が逆転で初優勝を獲得するなど各クラスで激しいバトルが展開されたのだが、筆者が気になっていたのはエンジン排気量が1500cc~2500ccまでの車両を対象にしたST-4クラスならびに1500cc未満の車両を対象にしたST-5クラスだった。
というのも、既報のとおり、オフィシャルタイヤサプライヤーであるハンコックタイヤの工場が火災し、スーパー耐久レース用のスリックタイヤが焼失。このため、2024年より同シリーズのタイヤサプライヤーであるブリヂストンが急遽、第2戦の富士24時間レースよりドライ用のスリックタイヤを供給することになったのだが、おそらく、在庫的にすべてのクラスをカバーすることができなかったのだろう。この小排気量エンジン搭載車を対象にしたST-4クラスならびにST-5クラスにいたっては市販ラジアルタイヤ「ポテンザRE-71RS」が使用されることになったのである。
近年のハイグリップラジアルタイヤはラリー競技やジムカーナ競技などで使用されるほか、サーキットのスポーツ走行やワンメイクレースなどでも豊富な実績を持つが、スーパー耐久シリーズはもちろんのこと、24時間レースで使用されるのは初の試みとなるだけに、我々にとってもっとも身近な市販ラジアルタイヤが過酷なレースシーンでどのようなパフォーマンスを見せるのか、数多くの注目を集めていた。
一部では市販ラジアルに対して不安視する関係者もいたようだが、いざレースが始まるとST-4クラス/ST-5クラスの各マシンは安定した走りを披露。ラップタイムにおいてもハンコックのレース用スリックタイヤに約1秒落ちといったスピードで、ロングランにおいても急激なペースダウンはなく、1時間30分のスティントでもコンスタントにタイムを刻んでいた。
ドライバーは「ポテンザRE-71RS」に好印象
もちろん、ドライバーからの評価も高く、GT86/BRZカップでも活躍するほか、富士24時間レースでは88号車「村上モータースMAZDAロードスター」で参戦した岡本大地選手は「市販ラジアルタイヤは1ラップでピークが来て、すぐにタイムが落ち始める印象があったんですけど、ポテンザRE-71RSはタイムの落ち方がフラットですし、フィーリングもとても良くて扱いやすい。スリックタイヤはピーキーなんですけど、市販ラジアルは発熱もいいし、安定しているので想像以上にパフォーマンスの高いタイヤでした」と分析する。
ちなみに「溝付きタイヤは独特で、サスペンションの柔らかさにもよると思うんですけど、僕たちのクルマでは新品で溝が深いほど表面が動いて発熱しすぎてしまうので、僕たちのクルマはあえて溝の浅い古いタイヤを使用しました」とのことだ。
一方、50号車「LOVEDRIVEロードスター」で参戦したベテランドライバー、大井貴之選手も市販ラジアルタイヤでのレース参戦については前向きで「スーパー耐久の前進となるN1耐久の頃はスリックタイヤではなく、溝付きタイヤでレースをしていたからね。その頃はSタイヤだったけれど、いまのハイグリップラジアルはパフォーマンスが高いから問題はないよ。それに溝があるタイヤはセットアップの違いやドライビングの違いがよく出てくるので面白いと思う。普通に市販されているタイヤだからロードスターやデミオ、フィット、ヤリスなどST-5クラスの参戦車両に乗っているユーザーにも車高やアライメントの参考になると思う。ハンコックのスリックもロングライフだったけれど、RE-71RSもロングライフだからまったく問題ないよ」と語る。
さらにスーパー耐久で活躍するほか、ジムカーナでハイグリップラジアルを使用し続けてきた山野哲也選手も72号車「OHLINS Roadster NATS」で参戦していたのだが、ポテンザRE-71RSについては「かつてN1耐久もSタイヤでレースをしていたから懐かしいよね。でも、RE-71RSはよりストリート向けのタイヤだし、量販店でも購入できるので身近な存在だと思う」と前置きしたうえで、次のように語っている。
「耐久レースで使用するのは初めてだと思うけれど、RE-71RSはびっくりするほど長持ちするし、タイムも急激に落ちることはない。たしかにピークのグリップはハンコックのスリックタイヤよりは落ちるし、タイムも少し落ちるけれどゴムのレベルとしては高温向けのハンコックのスリックタイヤに対して、RE-71RSは低音向けで温度依存が低いので、路面温度が低くても高くてもちゃんと走れるから走りやすい。セッティングもハンコックのスリックタイヤと大きく変わらなかったよ」と好感触だ。
まさにハイグリップラジアルタイヤに対するドライバーの評価は高く、コースサイドから見ていても、スリックタイヤと遜色のないコーナリングを披露。しかも、リーズナブルとなっていることから、このまま市販ラジアルタイヤでもいいのでは……と思ってしまうが、ブリヂストンでは供給が可能となり次第、スリックタイヤに切り替える予定となっているだけに、2023年の富士24時間レースは市販ラジアルタイヤが使用されたレアな一戦であり、ブリヂストンのハイグリップラジアルタイヤの性能をアピールする一戦となったに違いない。
なお、ST-4クラスでは60号車「全薬工業 G/MOTION’GR86」が優勝。ST-5クラスでは17号車「DIXCELアラゴスタNOPROデミオ」が勝利を飾っている。
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「隠しておきたかったことが明らかになる」って意味だから、(露見、ほど悪い意味ではないけど)あまり良い意味では使わないんじゃないかなぁ。