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マツダCX-3試乗レポート 2.0Lガソリンエンジン搭載モデル追加 躍度、加速度の変化率をコントロールするって何だ?

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マツダCX-3試乗レポート 2.0Lガソリンエンジン搭載モデル追加 躍度、加速度の変化率をコントロールするって何だ?

マツダは、コンパクトクロスオーバーSUVのCX-3が一部改良を行ない、2017年6月28日から発売している。一部改良のポイントは大きく分けて3つになると思う。2.0Lガソリンエンジン搭載とWLTCのテストモードによる燃費測定、そしてセーフティ・サポートカーS(サポカーS)の認定という3つだ。従来1.5Lディーゼルターボだけの選択肢だったが、これで価格も含めチョイスの幅が広がったことになる。そのCX-3に試乗の機会があったので、お伝えしよう。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

われわれユーザーにとってガソリンエンジン搭載は、選択肢の幅が広がり、モデル選びの楽しみが増えた。おそらく販売会社にとっても、待望のモデル投入だっただろう。また、価格の点でもディーゼルは240万円台からトップグレードは306万円というBセグメントとしては高価格帯だったが、ガソリンモデルは210万円台から280万円弱という価格帯のラインアップで、予算面での選択肢も広がったのも事実だ。

ただ、設定価格だけを見ると廉価版投入をイメージするかもしれないが、マツダのクルマづくりのポイントはそこにはない。あくまでも人の感性に寄り添ったクルマづくりであり、人生を豊かにすることを真剣に考えているメーカーでもある。したがって自分のライフスタイルや感性に合ったクルマ選び、というのがポイントになり、パワートレーンによるヒエラルキーは存在していない。

グレード展開をみると、ガソリンモデルは従来のディーゼルと同様で、標準車(20S)、プロアクティブ、Lパッケージ、という設定で、装備面での差異はない。そうなると、まさに自分の好みでガソリンとディーゼルどっち選ぶか選択できる。プラスお財布具合、というわけだ。

■走りの感性
マツダは人の感覚に合わせたクルマづくりを目指している、と書いたが具体的には何か?もちろん、クルマの生産においてすべての分野に関わるテーマではあるが、今回のガソリンエンジン追加ということに対して、スカイアクティブG、Dの特性をより有効活用するということなのだ。

試乗の時のプレゼンテーションで、加速度の変化率を制御する話があった。加速度の変化率、ちょっと考えると意味はわかるが、これを日本語では躍度(やくど)というそうだ。GVC(Gベクタリングコントロール)を開発したときに説明で使われていた、加加速度=ジャーク(jerk)のことで、単位時間あたりの加速度の変化率を意味する物理用語だ。

平たく言えば加速における、微分カーブを人間の感性に合わせていく制御ということで、アクセルを踏んだ時のフィーリングが「思った通り」に加速する、というある意味当たり前の性能追及をしているということなのだ。言い換えれば、思った通りに走らないクルマもある、ということで、そうしたドライバーの感覚にマッチしたクルマづくりをしているということになる。

少し本題から外れるが、このクルマづくりの姿勢は重要なポイントになる。人の感性に合う、という感覚を工業製品、あるいは工芸品という機械で感性に合うものを創るとはどういう意味か。ドライバーが意図している加速をクルマが理解する必要があるということ。それには、ドイラバーの行動、アクセルの開度、踏み込む速度などを理解し、それに見合った加速をすることだ。余談だが、今回はアクセルペダルだけだが、ステアリング操舵だって、その要素に取り込むことができる。

そのために、GVCでも、また先ごろ発表したSKYACTIV Xでも利用されたモデルベース開発(MBD)の活用がある。こうした開発ツールを使い、人の感性に合う微分カーブを創り、最終的に人の感覚にマッチしたか?という開発プロセスになる。「勘」を必要とした開発から、データの世界での作り込みになり、最終的に「感」に戻るという開発だ。

もうひとつポイントは高応答型エンジンであるSKYACTIVエンジンであることも見逃せない。ミリ秒の出力制御ができなければ、人の感性に合いにくいからだ。GVCでもそうだったが、ここでもエンジンをアクチュエーターとして有効活用していることが分かる。

この先、EV開発を進めるうえで、このMBDを使った感性への寄り添い、という開発は重要で、マツダらしいEVを作る、上でも欠くことのできない技術になる。

■感性に寄り添ったのか?
さて、本題に戻ると、実際の一般道での走りはいかがか?理屈では理解しても、実際に自分の感性に合うのか?高速道路と一般道を使って走ってきた。

直列4気筒直噴の2.0L自然吸気エンジンで横置きFF、あるいはオンデマンドの4WDがあり、エンジンスペックは、148ps/6000rpm、192Nm/2800rpm。

0km/hからの発進加速は、ゆっくりでも、急加速でも思ったように走ると感じる。右折しようと交差点の中央で停車し、対向車が遠くに1台。そんなときアクセルのレスポンスは思った通りに加速してくれた。こうした反応はクルマに対する不安がなく、いつでも思った通りに動くという安心感が生まれてくる。

周りのクルマの流れに乗り巡航し、そこからの緩加速も同様にいい感じで加速する。しかしそこからの急加速を試みると、エンジンの回転は上がるもののトルクが出てこない。キックダウンするほどまでは踏み込まず、速度維持状態からプラス20%程度の量を素早く踏み込む。すると少し遅れて、つまりエンジン回転がトルクバンドに飛び込むまでのほんの少し、タイムラグが生じる。これは制御というよりエンジン特性だと思う。こうした場合、多段化したATが良いと思うが、高効率化した内燃機関(ICE)になればなるほど、ギヤ段は少なくて済むはずなので、多段化を望むよりトルクの立ち上がりに期待したい。

だが、ある速度域以外からの強めの加速、そう、先ほどと同様なキックダウンをさせない程度の踏み込み速度でも、リニアにきっちり加速するので、エンジン特性とミッションのギヤ比の関係において、少しだけ苦手なところが存在しているのかもしれない。もちろんすべての速度域での緩加速は申し分なく、リニア感のある人の感性に合った加速になっていると思う。

また、言うまでもないがキックダウンさせての加速には不満はない。が、ある速度域では少しの踏み込み量でもキックダウンしてしまうところがある。正確には分からないが、先ほどの35km/hから45km/h付近での加速だと思う。これもトルク特性とギヤ比の関係で、トルクで粘れないところがあるのかもしれない。

もうひとつ気になったのは、エンジン回転の下がり方が遅いと感じる場面があったことだ。シフトアップしているときの回転落ちは問題ないが、アクセルを抜いたときの回転落ちが悪い。これは加速性能には影響しないが、減速の躍度について、感覚的にしっくりこない現象に感じてしまう。人の感性に寄り添っていないと言っていいかもしれない。

一方、60km/h巡航で1500rpm付近を指し、100km/hでは2100rpm。トランスミッションは6速AT仕様。ちなみに、ディーゼルには用意された6速MTはガソリン車には設定されていない。こうした巡航速度では静粛性がよく、ディーゼルモデルとの差がある。どうしてもザラツキを感じるディーゼルよりは、今回のガソリン車のほうが滑らかな走行だと感じる。

全体の印象として、加速度の変化率を少なく、小さくしていくと、高級な滑らかな加速へと変化する。新幹線を例に説明があったが、動き出しが分からないほど滑らかに走りだしている。気づけば250km/hの速度も出ているのに、加速感を感じない。つまり躍度=加加速度=Jerkが小さいのだが、こうしたフィールを創るのが躍度の制御だ。

そうすると、なめらかで高級志向な印象の乗り味になり、ダイレクト感との相殺にもなる部分も出てくる。気のせいかもしれないが、全速ロックアップ制御するスカイアクティブ・トランスミッションの6速ATだが、ダイレクト感が薄れAT的な印象にも感じた。これはマイナスイメージではないが、かつての印象との違いとして感じたことだ。

■WLTCの燃費測定
CX-3ガソリンモデルは、2018年から採用予定の燃費測定モードWLTCでの計測が行なわれており、細かな数値が表示されるので、購入の際、実際の利用環境と照らし合わせて選択するのに役立つと思う。大まかに説明すれば、これまでのJC08モード測定よりも、さらに実用領域を想定した測定モードになるということで、項目として市街地モード、郊外モード、高速道路という各場面での燃費が表示される。

標準車の20SのJC08モードでは17.0km/Lという表示になるが、このWLTCモードでは市街地モードでは12.2km/Lという数値になる。同様に郊外モードでは16.8km/Lで、高速道路では18.0km/Lという燃費だ。

ちなみにWLTCはWorldwide harmonized Light duty Test Cycleの略。またWLTPと表記している企業もある。

■サポカーS認定
セーフティ・サポートカーSという安全装備に関する、国の認定制度で、略してサポカーSと呼んでいる。これは、国土交通省が相次ぐ高齢運転者による交通事故を受けて、国内乗用車メーカー8社に対し「高齢運転者事故防止対策プログラム」の策定を要請したものだ。

これを受けてメーカー各社は2018年2月末までにプログラムを策定し、それに基づき自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などの先進安全技術について、研究開発の促進、機能向上と搭載拡大、ディーラー等における普及啓発等に取り組むことを決定している。また自動車メーカーは、これらの予防安全装置に加え、オートライトの普及も行なうことを決定している。

この結果、自動ブレーキ、ペダル踏み間違い時加速抑制装置については2020年までに、ほぼすべての車種(新車乗用車)に標準装備、またはオプション設定され、このうち自動ブレーキについてはそのほとんどが歩行者を検知可能となる見通しとなっているものだ。

こうして政府は2017年4月に、事故防止につながる先進技術を備えた「安全運転サポート車」を「セーフティ・サポートカーS」という愛称とすると発表している。

具体的に装備されているCX-3の安全装備では、緊急停止ブレーキではアドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ・サポートSCBS、AT誤発進抑制制御、同様に後退時にも装備されている。車線逸脱警報システムLDWS、ヒル・ローンチ・アシストHLA、ハイビーム・コントロールシステム(一部グレード)、ブラインド・スポット・モニタリング、レーダー・クルーズ・コントロール(一部グレード)などを装備している。


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