大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、ウイリアムズのチーム代表ジェームズ・ボウルズに焦点を当てた。
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ベルギーGPは以前はシーズン後半戦最初のレースで、前半戦の締めくくりはハンガリーGPが務めていた。その当時は、チームはサマーブレイク前に、ハンガリーでスタッフをねぎらうためのイベントを実施するのが恒例で、ハンガロリンク近郊は活気がある都市であると同時に、物価がそれほど高くなかったため、娯楽イベントを行うのにとても良い場所だった。
しかし、現在のカレンダーではサマーブレイク前最後のグランプリはスパ・フランコルシャンで行われる。ここではスタッフ用イベントを行う場所を選ぶのが難しい。選択肢はアルデンヌ一帯に点在し、近隣の村や町からリエージュ市、さらには国境を越えたドイツの主要拠点にもおよぶ。結局、チームが社交的な雰囲気を作るために一番いいのは、自分たちのモーターホームで開催することだ。
ウイリアムズはこれまで、ベルギーを含むさまざまな会場で、パブ・クイズ(注:パブ等で行うクイズ大会)を行ってきた。オーナーシップやリーダーシップに変化があっても、この伝統行事は変わらず、今年はクイズマスターをチームの重要人物が務めた。
ウイリアムズに新しい文化を植え付けようとしているチーム代表ジェームズ・ボウルズは、今年、多くのメディア関係者が出席するパブ・クイズのホストを進んで務め、場を盛り上げることに力を尽くした。罰ゲームはショットを飲むことで、ボウルズ自身、答えをうっかり漏らしたことで罰を受け、ジャーナリストやウイリアムズのコミュニケーションチームのメンバーたちを大いに沸かせた。
このイベントを通して、ボウルズについて新たな面を見ることができた。彼に関するコーナーも作られていて、ボウルズがオートバイに乗ることやドラムを演奏するのが好きだということ、最初の車はルノー・クリオ・ウイリアムズだったことなど、面白い情報が得られた。おそらく一番の収穫は、ボウルズは若いころに一時期マレットヘアにしていたということかもしれない。
そういうコーナーを設けたことを自己満足だと言うのは公平ではない。この時間のなかで、ボウルズの持つ正直さを強く感じることができた。彼は、好きなこと、嫌いなこと、かつての自分の姿、将来の目標について、率直に語ることをいとわない人間なのだ。
そしてその率直さは、カルロス・サインツ獲得に役立った。この数カ月間、ボウルズとオープンな議論を交わした後に、サインツは2025年にウイリアムズに加入することを決めた。
ハンガリーGPとベルギーGPの両週末を通して、ほぼ毎日、話し合いを行い、必要があればサインツが宿泊するホテルを訪ねて話をすることもあった。ボウルズは、あまりにもサインツと話す時間が多いことから、自分のパートナーがふたりの関係を疑ったとジョークを言っている。
サインツとの交渉に、ボウルズの正直さ、率直さがプラスに働いたことは間違いなさそうだ。ベルギーに到着した時点で、ボウルズはその週末にサインツと契約できるとは考えていなかった。翌日に可能性が高まったが、金曜日に再び不確かな状況に陥った。そういう時にもボウルズは、無理に事を進めようとはせずに、必要なだけ待ち続ける姿勢を取った。
ベルギーGP決勝翌日、ほとんどのチームメンバーがすぐさまサマーブレイクに入ろうとしているなかで、ボウルズはサインツとの契約を公表した。
ウイリアムズにとって、サインツほどの優秀なドライバーと契約することは大きな利益になる。一方、この契約は、サインツからの信頼をつかんだことを意味する。ボウルズと彼がウイリアムズに対して抱くビジョンを、サインツは信じることに決めたのだ。
サインツの加入によってウイリアムズの勢いが増すことは大いにあり得る。ボウルズは将来のビジョンにおける重要な最後のピースを手に入れたという満足感に浸りながら、サマーブレイクを存分にエンジョイすることができるだろう。
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