SLやGTと同じセミアクティブ・サス
メルセデスAMG G 63が、2024年仕様としてアップデートを受ける。バッテリーEV版のEQGとともに、来年の半ばから欧州ではディーラーへ並ぶ予定だ。
【画像】アップデートを受ける屈強なオフローダー メルセデスAMG G 63 競合モデルも 全111枚
今回、助手席への同乗が許されたGクラスは、そのプロトタイプ。多くの技術的な改良が施されるようだが、その目玉となるのが、新しいメルセデスAMG SLやGTなどにも採用されている、セミアクティブ・サスペンションとなる。
V8ツインターボエンジンを搭載するG 63のオプションとして設定され、従来的なアンチロールバーは不要になる。電気油圧式フローバルブを備えるダンパーが左右で相互接続され、連続的に収縮・伸長それぞれの減衰力を変化させることが可能になる。
走行速度やステアリングホイールの切れ角、ボディの傾き、走行モードなど様々な条件に応じてシステムが反応。前後左右のダンパーが個別に制御される。
例えば、片側のタイヤへ上向きの力が加わると、ダンパー内のピストンが上方へ移動。フルードが反対側のダンパーへ流れ、最適な減衰力へ調整されるという。
メルセデスAMGによれば、このシステムで姿勢制御や乗り心地、悪路性能が高まるとしている。今後、他のモデルにも同様の技術を展開していく計画らしい。
611psと86.5kg-mのマイルド・ハイブリッドも
左右の平均的なダンパーの硬さは、前後に1基づつ搭載されるアキュムレーター(蓄圧器)の制御で調整される。これは窒素ガスが充填された金属の球体で、内部に設けられた柔らかい膜によって、ダンパー内のフルード量やシステム内の圧力が調整される。
収縮時と伸長時、それぞれ独立して制御できる点が強み。従来以上に幅広い減衰力特性に加えて、余裕のあるサスペンション・ストロークも得られるという。従来のアンチロールバーとダンパーを置き換えることで、軽量化にも繋がるそうだ。
また2024年仕様のGクラスには、新しいマイルド・ハイブリッドも導入される。既にGLE 63へ搭載されているシステムと同一といえ、4.0L V8ツインターボ・ガソリンエンジンに、電圧48Vで稼働するスターター・ジェネレーター(ISG)が組み合わされる。
ISGの性能は、21psと25.3kg-m。システム総合で611psと86.5kg-mになる。
そんな新しいG 63のプロトタイプの助手席へ同乗したのは、ドイツ・ライプツィヒ郊外の一般道とオフロード。同社のサスペンション開発で指揮を取る、ラルフ・ハウグ氏へお話を伺いながら。
彼は、「サスペンション開発での大きな飛躍です」。と自信を隠さない。Gクラスへセミアクティブ・サスペンションの採用が決まったのは、新しいSLとGTの開発を終えた後だったという。
オンロードでもオフロードでも能力を拡大
「スポーツカーで得られるアドバンテージを知り、オフロードモデルでは何が得られるのか、すぐに検討が始まりました」。とハウグは話す。
まだGクラスのシステムとしては開発初期の内容だそうだが、助手席での印象の限り、既に高い完成度にある様子。自ら運転するのと異なり、明確なことはお伝えできないものの、従来より操縦性が向上し、乗り心地もマイルドになっているようだった。
特に驚かされたのが、ボディロールの小ささ。高度に制御されるダンパーによって、極めて限定的で斬新的にボディが傾いていく。オフローダーとして、サスペンション・ストロークの大きさを考えると、コーナーでのボディの動きは見事に抑制されている。
乗り心地も、ドライブモードを問わず、しなやかさを増しているように感じた。それにより、オンロードでの動的能力も引き上げられている。AMGの技術者が主張するとおり、ドライビング体験の幅が拡大しているようだった。
トラクションも向上すると、ハウグは説明する。これは、オフロードで大きな効果を発揮するという。確かにG 63は、トリッキーな表面の傾斜地を、確実な足取りで登っていた。匹敵するライバルが見当たらなそうな、揺るぎない落ち着きで。
ステアリングホイールを実際に握れる機会が来たら、その実力を改めてお伝えしたい。
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