モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、2004年の全日本GT選手権GT300クラスを戦った『M-TEC NSX』です。
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2024年、SUPER GT GT500クラスにおけるホンダ陣営の車両が『ホンダNSX-GT』から『ホンダ・シビック タイプR-GT』に変更となったことで、SUPER GTを戦う『NSX』はGT300クラスのGT3マシンのみとなった。
GT300クラスの『NSX』というと、近年では2018年から参戦しているNC1型の『NSX GT3』のイメージが強いだろうが、2000年代初頭にも『NSX』はGT300クラスへと挑んでいた。
そのなかでもデビューから鮮烈な速さを見せ、ファンに大きなインパクトを与えたであろう1台が、この2004年に全日本GT選手権(JGTC)でチャンピオンを獲得した『M-TEC NSX』だ。
『NSX』は、そもそもベルノ東海の運営するドリーム28チームの手で、2001年のシーズン途中からGT300を戦い始めている(1998年にもスポット参戦歴あり)。そのドリーム28の車両は過去にGT500を戦っていたとされる『NSX』で、それをGT300用にモディファイしていたこともあり、時折速さを見せる場面もあったが、勝利には手が届かずにいた。
そんな最中、2004年に“ワークス”であるM-TEC(無限)が前年にGT500クラスを戦っていた自チームのマシンをモディファイして、GT300クラスへと殴り込みをかけた。
このM-TECが走らせた車両は前述の通り、GT500クラスを戦っていた2003年型の『NSX』で、ロールケージやサスペンションなどシャシー系は多くの部分がGT500“そのまま”だった。
その一方で、このM-TECが作った『GT300 NSX』は、プライベーターへの販売もこの当時は検討していたため、エンジンについては動弁系やピストンなど、内部部品をより安価な素材へと置き換えて、コストを抑える見直しが行われた。
また、『GT500 NSX』の特徴のひとつとも言えた“ちょんまげ”と呼ばれるエンジンのエアインテークが廃止されたほか、ドアミラーも視界確保を優先して市販車のミラーが採用されていた(2004年の最終戦鈴鹿サーキットではちょんまげが装着され、ミラー形状も変更された)。
このようにランニングコストを削るために一部をモディファイし、そして2004年に山野哲也とコンビを組み、M-TEC NSXをドライブした八木宏之という当時のルーキーを育てる意味合いを込め、基本常にハイダウンフォース仕様にセッティングされていたという違いこそあったものの、ほぼGT500というスペックでGT300を戦い始めた『M-TEC NSX』は、TIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)で開催された2004年の開幕戦からそのポテンシャルを如何なく発揮する。
『M-TEC NSX』は、開幕戦の予選でいきなりポールポジションを獲得すると、決勝でも3位表彰台に登壇。続く第2戦スポーツランドSUGOでは少々苦戦するも、第3戦のマレーシア・セパンサーキットラウンドから、第5戦ツインリンクもてぎ(現・モビリティリゾートもてぎ)まで3戦連続で2位でフィニッシュする安定感と強さを披露した。
そして、最終戦鈴鹿サーキットではシーズン初優勝を記録。それとともにランキング2位と1点差という僅差ではあったが、見事参戦初年度ながらシリーズチャンピオンを獲得したのだった。
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